【真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 7】  ざっぽん/やすも 角川スニーカー文庫

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 人類が魔王軍と激戦を繰り広げている最中、最前線から遠く離れた辺境の地に緊張が走る。
大国ヴェロニア王国からの宣戦布告、そして開戦。
かつて一度は戦場から離れることを選んだレッドであったが、最大の危機を迎えたゾルタンと愛する人々を守るため再び剣を取り戦場を駆ける!
――そして、流れ着いた一騎当千の英雄達が暗雲立ち込めるその先に見たものとは!?

「ふふっ幸せだなぁ、私って本当に幸せなの。こうしてレッドと一緒に雨の中を歩いて、綺麗な景色を見れるなんて」

 雨はやみレッドとリットの日常に再び穏やかな陽射しが降り注ぐ――。
超大幅加筆で贈る大人気スローライフ・ファンタジー、第7弾!

一連の事件の黒幕だった王妃レオノール。その彼女を評した「穢れなき悪女」というフレーズは特に印象的でした。
神から与えられた加護によって生き方を縛られ、強制され、場合によっては精神さえも塗り替えられてしまうこの世界で、レッドたちは与えられた役割から背を向け、ルーティーもまた勇者という束縛から脱し、このゾルタンの地で自由に生きる事を選びました。
ミストーム師もまた、そんな本来あるべき立場から逃れてきた人であり、ヴェロニアから現れた追手はそんな置き去りにした過去を突きつけてくるものでした。
でも、面白いことにミストームを追い求めてきたヴェロニア艦隊のサリウス王子もまた自分にはめ込まれた枠組みに疑問を持ち続けていた人であった事なんですよね。
そして極めつけが、ヴェロニア王国動乱の原因であり、ミストーム師が故国から逃げる原因となった黒幕レオノール王妃こそがあらゆる縛り、強いられた役割、加護といったものから自由足らんとしたものであったのです。
純粋に、ひたむきに、己の欲望と向き合ったもの。己の邪さに忠実だったもの。誰よりも自由に生きた者。それがレオノールという女性でした。稀代の悪女だったのです。
加護に縛られず自分たちの望んだように、自由に生きる。
それはレッドたちが願い、この辺境ゾルタンの地で叶えようとしている事と同じはずなのに、こんなにも異なる形で現れてしまっている。対比というにも、まるで異なる有り様に。
こうしてみると、加護の縛りの有無ばかりが悪しきの原因じゃないんだというのがわかる。ダナンみたいに、自分の加護とこれ以上なくうまく付き合っている人も居るわけだし。
果たして、レオノールの生き方はレッドたちの望む自由とは遠くかけ離れたもので、レッドたちには見習うべき所はなかったのでしょうね。彼女は自分を愛し、孤独を愛した。自分の内側に入れる他者を必要とせず、たった独りで完結していたし、それに満足していた。それをこそ望んでいた。
そこが、同じ自由を望みながら自分以外の人を愛するレッドたちとは一番違う所だったのでしょう。思えば、このゾルタンの地は、最初からそうした他者を受け入れる土地として語られてきたんですよね。それどころか、今回ミストーム師の身柄の引き渡しを求められて大いに反発し、彼女を守るためにゾルタンの民みんなが立ち上がったのは、この地この国が何よりも自由を愛する地でありだからこそ集まった人達の国だったからなんでしょうね。
課せられた立場でも役割でもなく、自分たちで選んだ自由を守るための戦い。それがこのゾルタン初の戦争だったわけだ。他人事じゃなく、自分たちの戦い。そりゃあ、レッド達がルーティーがリットが率先して戦うのも当然で必然だわなあ。
同じ自由を求める者たち同士の戦い。己の自由のみを愛した者と、他者を含めたみなの自由を守ろうとした者たちとの戦争。そんな風に捉えたらいいんでしょうかね。
レオノールと組んでいたアスラデーモンたちも、まさに自分たちの自由を謳歌していた者たちでお互い利益以外でつながっていたわけじゃないですし。
アスラデーモン達もなあ。加護に縛られていないという意味で感性はまっとうなはずなのに、価値観がどうにもマトモな人間と異なっているものだから、やっぱりどこかおかしくて理解できない部分が多くを占めていてモヤモヤする存在ですなあ。
さて、エピローグでは体制側の逆襲というべきか、新たな勇者の擁立によってまたぞろ不穏な空気が。最強の勇者ルーティーが、あの手の勇者に遅れをとるとは思えないのだけれど、その勇者の加護を封じてしまっているにも確かなわけで。現状のルーティーって具体的な能力的にどうなっているのかまだ詳しくは語られていないだけに、さてどうなるのか。

しかし、リットのあの作戦は完璧なのに、いざ実行するとなんでか上手く行かない属性ってなんか不運属性でもあるんですかね!?