【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 4(上)~ヘンダーソン氏の福音を~】  Schuld/ランサネ オーバーラップ文庫

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ちょっとしたお遣いのはずが不死者ひしめく迷宮に挑む羽目になり、なんとか攻略したデータマンチ転生者エーリヒ。
彼は共に命を懸けた友であるミカと療養後、ヤバすぎる戦利品やお遣いの品を手に帝都へと帰還を果たす。
そして魔導師(マギア)アグリッピナから破格の報酬を得るのだが、そのアグリッピナが出掛けたまま行方知らずに!
エーリヒは彼女を心配して捜索を――なんて気は全く無く、兵演棋(ボードゲーム)の駒を売る小遣い稼ぎに精を出すのだった。
そこで知り合った僧の少女とささやかな友情を育むが、その縁から今回もトラブルに……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、第4幕が開演!


ウェブ版既読……のはずだったんですが、一度読んだはずだったのですが……。
なんか全然別物なんですけど!?
あれぇ、なんかこの辺ってこんな展開だったっけ? このキャラここに登場してたっけ? なんか初めて読んだ話みたいだなあ!? というのが、冒頭から巻末までずーーーっと続くんですよ。
延々とあれぇ?と首かしげてたら終わっちゃったよ!!
これ実質全面改稿じゃないですかー!! わはーー!!

いやそりゃ、こんだけ丁寧に丁寧に上塗りしてたら嵩も増えますよ。上下巻構成になって、さらにページ数やばいことになりますよ。めっちゃ厚い割にサクサクと読めてしまうあたり、ほんと自分的に好みのどストライク入っているのがよくわかるのですが。
キャラの掘り下げもさらに進んでいて、特にミカのキャラクターなんか非常に深く掘り下げてるんですよね。ミカが女性体になった時の美少女っぷりってそんなねっとり丹念に描いてなかったと思うんですけど!? それだけエーリヒが意識してしまうほど、ミカの超絶美少女っぷりが浮き彫りになってるんですよね。同時に、時期によって性別が変わってしまうミカの、そのメンタリティの変化についても非常に丹念に描いているので、彼の…彼女の? ミカの女性体の時のあざとさというか仕草のキュートさがこれでもかと描かれてて、凄く印象に焼き付くことに。そんでもって、男性体や中性体の時の様子も余計に引き立つことになってるんですよね。
正直、ウェブ版のときよりもだいぶミカの印象強くなったんじゃないだろうか。出番も凄く増えてますよね!?
これだけ女っ気を強く発しながら「我が友」とぴったりと寄り添ってくるの、ちょっと凶悪すぎやしませんかね!? 性別の変化に伴って精神性や様子が変わりながらも、この親友というスタンスは変わらない、というのが余計にエーリヒとミカの距離感をおかしくしてしまっているような気がする。
当人たちの間ではその辺無意識であんまり自覚ないみたいなんですけどね。他者から見るとなんかすげえ関係だな、と見て取られるのは後々また語られるところなのですけど。

さて、なにはともあれTRPGの華である都市探索シティアドベンチャーである。in帝都!
その帝都がどういう都市なのか、三重帝国というこの国がどのように成り立ち、今に至り、どんな支配者たちがこの国を動かしているのか、というのが現皇帝の登場とともに描かれる。
てか、あの三巨頭揃いぶみのぶっちゃけ話は結構好きなんですよね。意外と、この物語に登場する権力者たちって、権力そのものにあんまり興味ないどころか、他人にぶん投げたくて仕方ない、他に自分のやりたいこと持ってる抱え込んでる頭のヤベえ趣味人、というのが面白いんですよね。
それでいて、尋常ならざる政治家であり謀略家であり政略家でもあるという皮肉。アグリッピナ師だって、あれだけ責任から逃げ回っておきながらこの人稀代の政治力の怪物だったりするんですよね。まあ、この国そういうのの巣窟だったりするのですけど。
アグリッピナ師をして、ギャフンと言わされいいように振り回されるようなヤベえのが上にいるんだよなあ。そのアグリッピナ師がどれだけヤベえかについて、エーリヒが散々これでもかと痛い目を見つつ言及した上で、そのアグリッピナ師受難の時を描くとか、恐ろしや、である。
何より、この人ら最終的に自分だけがその枷から逃れて、誰かにそういうしち面倒くっさいの押し付けて、自由にやりたいことやり倒すぞー!というのが目的だったりするので、たちが悪いなんてもんじゃないんですよね。見事なまでの政略謀略をやり尽くしての権力の押し付け合いw
まあその流れ矢がなぜかピンポイントでエーリヒのところに飛んでくるんですけどね。どこにいてもなにやってても、ピンポイントで彼のところに飛んでくる不思議。

そもそも、いい年した大人共の大人気ない押し付け合いのとばっちりにして被害者であるところのツェツィーリアさんとエーリヒの間には本来縁らしい縁なんてなかったはずなのにね。
それが、エーリヒが小遣い稼ぎのためにやってた兵演棋というこの世界のチェスか将棋みたいなボードゲームの駒(自作)売りと、営業を兼ねた兵演棋の辻勝負の常連客、というだけの縁だった訳ですから。
ただ常連というだけあって、兵演棋の勝負、指し合いを通じた濃密な会話を何日も何日も続けていた、という意味合いもあるだけに、運命と言えば運命的ではあるんですよね。
出会いのきっかけ、縁のはじまり、としては。

ってか、ツェツィーリアさんってこのシリーズにおいての貴重な「お姫様」枠ヒロインですからねえ。幼馴染枠のマルギット、親友という女友達枠のミカ、妹枠のエリザ、そしてお姫様枠のツェツィーリア……って、こういう枠でくくると意外と王道路線なヒロイン構成だっりするんですね、この作品。
まあ、一人として普通の人類がいないという時点でオーソドックスなんて欠片も見当たらないとも言えるのですがw
いや個人的にツェツィーリアは、一番立場的に色々とお互いハードルが高い分、期待も募っちゃう相手なんですよ。
アグリッピナ師? あの人は……うん、なんかもうクリティカルかファンブルかわっかんねーわ。


というわけで、ついに本格的なシティアドベンチャーの開幕。混在した街の中を敵と味方で走り回る、というのはTRPGの肝にして味噌ですよねえ。そんでもって、地下通路はやはり王道なわけで。
その上で、ちゃんと地下通路の出来た理由やら今現在、どのように地下が使われているのか、なんかが帝国の歴史から社会情勢、インフラにまで言及が及ぶ辺りで世界の設定の濃密さがこれでもかと味わえるのであります。
もうどこ齧ってもどこ舐めても濃厚な味わいを堪能できる設定で敷き詰められた作品ですわー。めっちゃ楽しい。

ヘンダーソンスケール2.0。つまり、今回のIFとなる未来の話は。
生命礼賛主義者……つまりロリコンにしてショタコンという筋金入りの幽霊であるライゼニッツ卿に、エーリヒが貰われてしまった世界線のお話。ガチでピナ師に売り払われる未来も可能性としてあったのかw
ライゼニッツ卿、この巻の前半あたりで貴族階級の金銭感覚は隔絶している、という話題の中でそんな金銭感覚おかしい連中をぶっちぎりで置き去りにした金額を、エーリヒとエリザに着せる衣装代に注ぎ込んでる、という話で思わず笑ってしまったんだけど、ほんとこの人はほんとにもう、どうしたものか。
でも、そんなライゼニッツ卿との未来の話で、ショタを維持するどころではなく、老いた側仕えとして老人として、ずっとライゼニッツ卿の傍に侍っている老エーリヒを敢えて描いてみせるの、なんかいいですわー。
エーリヒもまた、すんげえカッコいい年のとり方してるんですよね。そして、そんな趣味趣向の範疇から遠くハズレてしまったはずのエーリヒを、ついに晩年まで傍から離さず寄り添わせ続けたライゼニッツ卿の、どこか無邪気な姿に感慨を覚えるわけです。
これはこれでイイ世界線だったなあ。好き。