【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 2】  雲雀湯/シソ 角川スニーカー文庫

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少しずつ熱くなる、君への「特別」な気持ち。 大人気青春ラブコメ第2弾!

隼人と再会してから猫かぶりが剥がれつつある春希。クラスの女友達も増えて賑やかになる一方で隼人との時間が減ってしまって……。「親友」のはずなのに、もっと相手の「特別」になりたくなる。青春ラブコメ第2弾!

隼人と姫子の霧島兄妹との再会は、春希の凍結していた時間を解凍してくれた。本来、春希は小器用な方ではない。隼人たちに男の子と認識されていたように、大雑把な面が多分にある娘だ。これまで被っていた猫を場に応じて使い分ける、なんて真似はあれで難易度が高いものなのだ。ふと気を緩めると、素が出てしまう。隼人や姫子がいるところでこの娘が気を緩めずに引き締め続ける、なんて事まあ出来るわけないじゃないですか。
というわけで、隼人にとって「変わっていない」春希の溌剌とした素顔が、徐々にクラスメイト達にも知れ渡るようになる。今までのどこか人を寄せ付けない凛とした姿しか知らない彼らからしてみると、それは春希の大きな変化だ。人懐っこさすら感じさせる春希の素顔は、当然好意的に受け止められて瞬く間に春希の交友関係が広がっていく。
隼人にとってだけの特別だった、ありのままの春希は、みんなの春希へと変わっていってしまう。

一方で、転校生の隼人の方も学校に馴染んできた事によって普通の友人、男友達も増えてくるのだが……それだけなら、春希と隼人の間にある特別な関係はこゆるぎもしなかっただろう。しかし、そこに割って入ってくる一人の少年がいたのだ。
それは、どこか春希と境遇が似ていて、学校内での立ち位置も良く似通っていた学校一のイケメン男子・海童一輝。彼は春希と同じように仮面を被っていた。周りから期待されそうあれと望まれる好青年という仮面を、だ。だから、同じような立場にある春希の猫かぶりにも気づいていたし、そんな彼女の仮面を容易に引き剥がしてしまった隼人に多大な感心をもって近づいてくる。
そんな一輝に対して、春希に好意を抱いているとの噂もあって警戒心バリバリだった隼人だけれど、この主人公、どうにも孤独や寂しさを宿している相手には随分と絆されやすいらしい。捨て犬みたいに懐いてくる一輝を突き放せずに、何だかんだとかまってあげて何くれとなく世話を焼くようになってしまう。
それは、かつての小さなハルキにしてくれたように。
そんな二人を目の当たりにして、嫉妬心を募らせる春希。その二人の姿は、春希とっては権利の侵害のように思えたのだろう。ただの男友達、ただの男同士の親友なら独占欲を掻き立てられなかったかもしれない。でも、この隼人と一輝の関係は、かつての自分たちの関係の鏡写しのようだった。それは、隼人と春希の二人にとっての特別な関係が……別に相手がハルキでなくても構わなかったんじゃないか、と不安を抱かせるものだったからだ。

唯一無二だった隼人と春希の特別な関係。変わらないままだった二人の関係は、周りとの関係の変化によって徐々に希釈されていく。二人の間に割って入るものはないのかもしれないが、ただ二人だけの「特別」は紛れ薄れて希釈され、濃度を失っていくようだった。
それが、隼人と春希を刺激する。薄らいでいく特別に執着が湧き、自分の元から持っていかれたような感覚に独占欲が募っていく。
何よりも、特別でありたいのだ。隼人にとって春希の存在は。春希にとって隼人の存在は。唯一無二であってほしい。自分のことを、特別な存在だと思っていてほしい。
でもそれは、いつしか幼馴染という関係のままではその濃度を維持できないのだと、理解し始めていた。いくら希釈されても薄れることのない、もっともっと特別な関係であることを欲するという事が、異性同士で何を意味するのか頭じゃなく心で、胸で感じ始めていた。
それは紛れもなく、幼馴染という関係性に恋が生まれ育まれていく、そのプロセスである。その細やかで繊細な一部始終が描かれようとしている。
素晴らしい。
これぞ、青春であり幼馴染同士のラブストーリー、その極めつけじゃないですか。
これまで相手を大切に思うからこそ踏み込まなかった、家庭の事情。それを自分からそっと曝け出し、相手に知って貰うことで今までになかった領域に踏み込んでいく。
幼い頃から時が流れ多くのことが変わってしまった中で、再会した二人は「変わっていない」部分を見つけ合い、今のお互いを受け止めあって支え合い変わらない新しい関係を築き直すことが出来た。
でもここにきて、隼人と春希は変わらないお互いをとても大切にし、好きに想いながら、だからこそ変わろうとしている。
変わったけれど変わってない関係は、変わらないまま変わった関係へと進もうとしている。

それは考え得る限り、もっとも素敵な幼馴染関係の変化のプロセスなんじゃないかな、と思うのでした。
ああ、甘酸っぺえ。