【泥酔彼女 2.「弟クンがんばえー」「助けて」】  串木野たんぼ/加川壱互 GA文庫

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「弟クン、早く成人してよー。弟クンと一緒に飲ーみーたーいー! 」

アンチ酔っ払いの俺の家に入り浸る酒好きダメ美人・和泉七瀬。鬱陶しいけど、でも、そんな彼女がいる日常も思っていたほど悪くない――。そう感じ始めた矢先、俺は自分の恋愛トラウマの元凶と再会してしまう。

「先輩を“私に"酔わせてみせます」

大ブレイク中の若手女優・月浦水守。再会するなり俺とヨリを戻そうとし始めた彼女と、犬猿の仲の羊子は一触即発状態に。さらに、その面倒な状況を酔った七瀬さんが面白半分でひっかき回し――ってなんで七瀬さんが複雑そうな顔してるんだ?

2月14日に笑うのは誰だ! 距離感激近宅飲み青春ラブコメ第2巻!

甲斐甲斐しく手取り足取り気配りが行き届いたお世話を七瀬さん、というよりも穂澄の場合は役者という括りにある人間に対しては、かもしれないけれど、兎に角細やかなフォローから演技力向上のためのプロジェクトまでその有能さを発揮する主人公くん、穂澄だけれど……かと言って彼が精神的に大人なのか、というとやっぱり違うんだなあ、と深く頷かされた次第。
結局、月浦や姉の手のひらの上なんですよね。今、月浦を毛嫌いしている事すらもお釈迦様の手のひらの上、になるんじゃないだろうか。自分の納得できる自信ある脚本を書き上げたら演劇部に戻ろう、なんて考えているのもちょっと子供っぽいじゃないですか。
確かに色々何でも出来る子かもしれないのですが、彼が居ることで七瀬さん達が何倍も能力を発揮できる無くてはならない人になってるかもしれないですけれど、大きな枠組みで見ると穂澄って女性陣に対してまったくイニシアチブを取れていないんですよ。彼女たちに大きな影響を及ぼす事は出来ているかもしれないけれど、彼女たちを自分の思うように動かしたり変えたりすることは全く出来ていない。なんだかんだと根っこの部分が子供っぽくて幼くて、そこを女性陣たちに首根っこ抑えられてると言ってイイ。これじゃあ勝てないですよね、勝負にすらなってないんじゃないだろうか。
だから、実のところ女性陣は穂澄を相手にしているのではなく、同じライバルとなる恋敵の方に視線の焦点をあてながら、穂澄を引っ掻き回していると言ってイイのかもしれない。特に月浦。まったくそれが出来ていない独り相撲というか勝手に自爆し逃げ回っているのがヒツジちゃんで、七瀬さんはそもそも一歩距離をおいてお姉さんとして彼らのラブコメを他人事として見守っていたのが、まーそれはそれは尽くしてくれまくる穂澄くんにキューンときてしまい、やっぱり誰にもあーげない、となって確保に動き出した、といったあたりですか。
ヒツジちゃんはほんとなにやってたんだろうこの娘。ライバル不在で独壇場、いかようにも料理できただろうに、指くわえて眺めてるだけだったんだから、ほんとになにをやってたんだろう。
そりゃ、月浦にも呆れられますわ。主人公、ニブチンの極みですけれどどの分チョロいなんてもんじゃないですからね。イレグイもいいところだったろうに、勿体ない。

さても、主題と言うか問題は月浦が突然アプローチをしかけてきた、ということもよりも本来は七瀬さんの演技ベタの解消、克服だったんだと思うのですが、兎にも角にも月浦の小悪魔っぷりとその積極攻勢が強烈すぎて、穂澄どころか物語そのものが翻弄されてしまった感がある。その存在感の異様なまでの凄まじさが幾度も語られる月浦水守ですが、実際に彼女が喋り彼女が動くとそれだけで物語の焦点が彼女に集中してしまって目が離せなくなるんですよね。何をしでかすかわからない、何を考えているかわからない、という未知というところも魅力的だったのでしょうけれど。なにより、穂澄がなんだかんだと嫌悪丸出しにしながら全然無視できずにいるんだから。
まあでも、本当に何を考えているかわからない、というわけではなく、穂澄に対してべた惚れなのはあからさまなくらいでしたけれど。
これ、五股されて失恋した、という穂澄のトラウマ話、まず事実とは食い違ってるんでしょうね。穂澄の証言以外で月浦がそれらしいことをしてたという話が全然出てきませんもの。当時を知る関係者でもある羊子ですら、五股を責める様子はありませんでしたもんね。月浦に対して穂澄以上に嫌悪感を丸出しにしながらも。
何があったか詳しくは語られていませんけれど、余程拙いことになってたんですかね。穂澄が月浦に狂って散々やらかしてたみたいですし。もう月浦自身にも止められないことになっていたのだとしたら、距離を置くという選択肢を取る、あるいは強制的に取らせるだけの力を持っている人がマネージャーだったり姉だったりする人あたりにはありそうですし。
穂澄の七瀬への献身的なまでのお世話って、役者へのリスペクトにとどまらず彼自身の性格もあるでしょうからね。ちょっと偏執的なところすらある献身性は、のめり込むと、或いは恋愛に絡むとボーダーラインを越えやすい性質なのかもしれません。本質的にヤベえやつ、という可能性も結構ありそう。まあ、今の彼はそれを強く自覚し戒めているのですが。そうなるように誘導されたんだろうなあ。

七瀬さんの演技ベタの原因、わりとサクッと突き止められて克服への道がつけられてしまいましたけれど、本筋は七瀬さんの初恋の自覚と、恋敵達との真っ向勝負への宣戦布告、ということになるんでしょうか。七瀬さんがどうして演技下手だったのか、についての考察はけっこうあれ彼女の闇に繋がっている気がしたのですが。
いやでも、七瀬さんのあのタフさは、闇を闇として惑わされないんだろうなあ。月浦にプレッシャーにもまるで動じず応えず上から笑って宥めてるくらいですし、何気に尋常じゃない大物感が備わっている。酒に酔って気が大きくなっている、というんじゃなくてw
シラフでも、ある意味月浦水守が相手にされなかった、という面すらあったわけですしねえ。そりゃ月浦もモリモリ好敵手感強めますわ。それでいて、本気で仲良いという関係性も結構好きかも。月浦って言動が陰湿なタイプに寄っていると思うのですけれど(それでいて根っこはカラッとしている気もしますが)、七瀬さんってそういう彼女の湿度を諸共しないどころか乾燥させちゃうキャラクターなんだろうなあ、あれ。ヒツジちゃんは逆にさらに湿度に潤いを与えてしまうタイプに思える。おかげで月浦、常にツヤツヤしてそう、ヒツジちゃん相手だとw

なんか人間関係なにも決着していないけれど、ある意味スタートラインが成立して何となく話もまとまった感あるので、もしかしたらこれで完結なんだろうか。
続くと言えば続きそうだし、終わると言えば終わってもおかしくないような、まあ何となく一区切りついた感じのある終わり方でした。