【フシノカミ 5 ~辺境から始める文明再生記~】  雨川水海/大熊まい オーバーラップノベルス

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『古代文明の伝説にあるような便利で豊かな生活』を今世に取り戻すため、領地改革推進室にて文明の復旧を続けるアッシュ。
アジョル村にてトレント討伐の事後処理を終えたアッシュたち領地改革推進室の一行は、休暇も兼ねて温泉地があるスクナ子爵領へ。
そこで思いを伝えると意気込んでいたマイカは、先んじてアッシュから告白を受けてしまう。
『私はあなたのことが好きですが――あなた以上に好きなものがあるんです』
振られてしまったマイカだったが、アッシュを絶対に振り向かせるべく、優勝すればどんな要望も聞き入れてもらえる武芸王杯大会へ参加することを決める。かつて父親が優勝し、婚姻を果たして歴史に名を刻んだ大会。
一世一代の告白をするため、マイカは伝説の再演に挑む――!
理想の暮らしを手にするため、世界に変革をもたらす少年の軌跡を紡いだ文明復旧譚、第五幕!
うはははははっ! ワハハハハッ! やった! やった! マイカがやった!
マイカ嬢、大勝利だーー!!
いやー、痛快だった。気持ちよかった。スゲえわマイカ。めちゃくちゃとんでもねー女ですわ。アッシュがもう人並み外れているだけで、マイカの方もその成長の仕方がハチャメチャの領域にあるとは思っていたのですが、ずっとアッシュの背中を追いかけていたマイカがついについに、誰も追いつけないと思われたアッシュの所に追いついてみせてくれたのは、感無量でもあり愉快痛快でもあり、一言で言って最高でした。
ここまで気持ちよく、惚れた男のために突っ走り、一途に想い続け、その想いを叶えるために努力しまくって成長してみせた女性を、カッコいいと言わずしてなんというのか。
女性として自分を磨きまくり、武人として途方も無い領域に達し、未来の領主として政治力交渉力問題解決力を余人に及ばないくらい叩き上げ、あらゆる方面で人並み外れた域を収めたマイカ。
前に、アッシュが次期領主候補である自分に相応しいかじゃなく、自分がアッシュという前人未到の人外に相応しくなれるかだ、みたいな事をぶちあげてましたけれど、文字通り有言実行してみせたんですよね。もう両親や、領主である祖父や叔父もこれ以上無く納得させ(というか、この人たちもアッシュの価値を誰よりも理解しているために押し押しだったわけですけれど)、外堀を埋め、環境を整え、誰にも文句を言わせない状況を作り上げた上で、それでもアッシュ自身を納得させられなかったとなるや。
落ち込む暇もなく、足を止めることもなく、次の瞬間から次の手段を模索して突っ走りはじめるの、ほんとアッシュに誰よりも相応しくて、お似合いの爆発的な行動力で思わずニコニコしてしまいましたよ。
そして、アッシュをすら有無を言わせない、アッシュをして思わず黙って首根っこ掴まれて振り回されるような……いつも周りの人間を有無を言わせず盛大に引っ張り回し振り回しぶん回していたアッシュが、もう何も言えずにマイカを見守り、彼女の行動の果てを見守るつもりにしかなれないくらいに、ド派手にやってくれたんですよね。
ここまでかっこよく、惚れろ! とやられたら、さすがのアッシュですらもう完堕ちですよ。元々、マイカの事は唯一無二で惚れ抜いていることは、彼自身が明言していた事ですけれど。それでも、彼の文明を再誕させるという夢は、他に比べられない無二であり、マイカですら押しのけられない不動のナンバーワンだった事はこれまでのアッシュの言動を見ていれば、よくわかることでしょう。
その一番の理解者がマイカだったのですけれど、その絶対に勝てないはずだった恋敵に、この女の子は真っ向勝負でぶち抜いてみせたのである。絶対にアッシュの一番にはなれないはずだったのを、マイカはそのありえない一番を自力で、勝ち取ってみせたのである。奪い取ってみせたのです。
これほど、痛快なことはないでしょう。アッシュが、もう魂から惚れ抜いてしまう瞬間は、なんか胸にくるものすらありました。
あれほど追いかけ続けたアッシュの背中に、この子はついに追いついたのです。ついに、隣に立ったのです。アッシュと対等になってみせた。さすがは、女神ユイカの娘。女神の娘はやっぱり女神だった。
マイカ、大勝利! それに尽きる回でありました。

再誕させた古代文明の様々な知識や技術を実用化させ、領内で運用させはじめたアッシュ。そのお陰で領地は空前の上昇気流にのり始めたわけですけれど、その波を領内のみに留めることなく、今度は近隣の交流のある親交の深い、或いはこの波に乗るだけの見識と好奇心を持つ他領の責任者たちともコンタクトを取って、同盟というよりも共犯者……いや、この文明復興という楽しい楽しい遊戯を一緒に遊ぶプレイヤーとして、多くを巻き込んでいくのでありました。
ほんと、これは共通しているんだけれど、アッシュによって巻き込まれた、いや振り回されはするものの最後は自分の意志で巻き込まれに行く、波に乗ってくる、自分たちも混ぜてくれーと飛び込んでくる奇矯な人達なんだけど、みんな共通して楽しそうなんですよね。アッシュの言葉に乗せられて、目をキラキラさせて、ワクワクを抑えきれずに、一緒にはしゃいで騒いで盛り上がってくれる人達。
そんなバカモノたちの輪がどんどん広がっていく。それがもう、楽しくて仕方ない。皆が見ていた未来の色が、まったく違うものに変わっていくことに、ワクワクが止まらない。
このワクワク感こそが、その広がりこそが、この作品の醍醐味だなあ、と再認識。
王都に帰った姫様ことアーサーが、当地で彼女なりにそのワクワクを広げていることが、今回の再会でわかって思わずニッコリ。マイカとの恋敵という友情物語はマイカの突出を許してしまったけれど、さて姫様も全力でマイカを応援しつつ黙って見てばかりもいないだろうし、王家との関わり方はどうなってくるのだろう。
姫様も、自分を傀儡化しようとしている後ろ盾の公爵家相手に、まだ雌伏しているみたいだけれど、なんか着々と自分の勢力は広げているみたいですしね。今回の一件で辺境勢力はこぞって姫様の親衛となるだろうし、彼女の侍女団があれほど姫様の思想に足並み揃えてくれているとは思わなかっただけに、足元は万全だろうし。
さて、今度はどんな規模の大騒ぎになるのやら。楽しみで、ワクワクしますよ。