【星詠みの魔法使い 2.黒水晶の夢色プロローグ】  六海刻羽/ゆさの オーバーラップ文庫

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代々、誇り高き魔術剣士を輩出するレ・ノール家の少女・エヴァリーナ。
幼い頃から魔術剣士を夢見た彼女は、しかし、絶望的なほどに才能がなかった。
魔導書作家を志す少女・ルナと共にソラナカルタ魔法学校の定期試験に挑んだエヴァは、ルナに後れを取り、自身の無力さに焦りを覚え始めていた。
ヨヨに特訓を頼み、鍛えてもらう――その最中。
邪教種の襲撃により、ルナが囚われの身となってしまう。
エヴァはヨヨと共に救出に向かうものの、襲い来る脅威によって窮地に追いやられていた。
傷ついたヨヨに守られることしかできないエヴァは、ルナが記した魔導書で覚醒の兆しを手にする――!

ルナってば贅沢ですよね。ヨヨという自分にとっての主人公を前巻で見つけるわ、食らいつくわ、ものにするわ、とやってのけてたくせに、この娘もうひとり自分にとっての主人公を既に懐に抱え込んでたじゃないですか。
エヴァリーナ・レ・ソール。ルナの親友にしてパートナー。1巻でも親友として登場していましたけれど、彼女のパートは結構駆け足で駆け抜けてしまったのと、あくまでルナとヨヨの物語という体だったのであまりエヴァの印象残っていなかったのですが……いや、めちゃくちゃ重要人物じゃないですか。
というかこれ、ルナのワンマンヒロインの作品かと思ったら、ほぼほぼ等距離でエヴァももう一人のメインヒロインじゃないですか、これ。ヨヨが後輩であるルナが魔導書作家として大成するまで一緒に居続けると心に決めたのと同じくらいの比重で、同じく後輩であるエヴァの事もずっと最後まで見守ってやる、と……この男、それって実質プロポーズなんじゃないのか、というくらいの勢いでこのルナとエヴァの二人の少女に入れ込んでるんですよね。その誓いって、もう学生の間だけじゃ済まないのめり込みっぷりなんですけど、お互いからして。
そんなヨヨの後輩二人への姿勢は、なんかもう先生役とか指導役とか通り越して騎士のように身体を張ってボロボロになりながらも絶対に守り通すという献身と、どれほど彼女たちが自分の道を見失い迷い戸惑っていても、とことん付き合って教え導き彼女たちが望む高みへと辿り着くまで後押しする、見守る、応援し絶対助ける、という慈しみに満ちあふれていて、こんな献身と慈愛に守られてたらそりゃ少女たちも奮い立つし、それ以上に好きになっちゃうじゃないですか。
生まれた時から術素の素養を持たず、憧れた魔術剣士としての素質を持たないながら、それでも憧れを諦めきれずに足掻き続ける少女剣士エヴァ。ずっと挫折し続けてきたと言っていい彼女は、それでも性格歪まず素直に真っ直ぐ育っていて、めちゃくちゃいい子なんですよね。
そして、ルナとは親友を通り越してこれラブ入ってるんじゃないか、というキャッキャウフフな関係で、その凛とした不屈の姿はルナにとってヨヨとは別の意味で自分にとっての主人公がエヴァだったのです。同性の主人公ってやつですね。
今回の話はそんなエヴァがヒロインとしてキラキラ輝き、またルナの望んだ女主人公としてついに挫折から立ち上がり、囚われの愛する親友のお姫様を助けに来るという見事な話でもありました。
ルナからすれば、両手に花ならぬ両手に主人公。自分がこの人こそ主人公と見初めた二人が助けにきてくれるという冥利に尽きる状況だったわけですなあ。
そりゃ、筆も捗るw ウハウハじゃないですか。
ヨヨにとっては目に入れても痛くないほど可愛くて仕方ない後輩二人。エヴァからしても、自分の人生を救ってくれて輝かせてくれた何よりも大好きな二人。
と、なんかうまいことスッポリとこの三人が三人でこそ、という関係に収まったなあ。いや、わりと最初から三人でうまいこと収まっていたのを、エヴァの覚醒というお話によって隙間なく埋め尽くした、というべきかもしれないけれど。
いずれにせよ、読んでいるこっちにも登場人物たちの感情が色濃く伝わってくる、という以上に感情の波に乗ってしまうような想いをぶつけてくる文章はほんと好みです。世界観の設定もしっかりしていて、魔術学園という特異な環境の描き方や登場人物のキャラ立ちなんかも濃厚かつ生き生きしているのですが、登場人物の情緒に重きを置いている分、その感情の勢いに任せてどんどんと話が進んでいく傾向があって、ちょっと急ぎすぎの感があるのかなあ。1巻ではそのきらいが顕著に見えたのですが、まだ2巻はそのあたりしっかりと地に足がついていたようにも思えるのですが、それでもまだいささか早い気がするなあ。
ともあれ、何らかの悪意をもって動いている黒幕めいたものの姿も見えてきて、ヒロイン二人のあり方がある程度完成をみたところで、次はヨヨにスポットがあたるのか、それともこの三人組での話になるのか。なんにせよ、次からこそ本格的に物語が動いていきそうで楽しみです。