【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #11】 枯野 瑛/ue 角川スニーカー文庫

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終末のとき、開かれる未来の行方は。明日を繋いだ妖精たちの第2部、幕。

〈最後の獣〉が創り出した少年は、最期の選択を迫られる。
今ここにある幸せを慈しみ、浮遊大陸群《レグル・エレ》を滅ぼすか――多くを奪う邪悪として、自分自身が滅ぼされるか。
偽りの楽園は罅割れ、幸福のかけらも削れ行き、少年は自身の存在する意味を覚る。
「ぼくはちゃんと、あなたたちと戦います」
聖剣モウルネンを差し向けるティアットに、示す答えは。
そして、崩れ行く世界は、その跡に何を残すのか。

明日を繋いだ妖精たちの第2部、終幕。

黄金妖精たちは、自分たちを命のない存在だと定義している。自然発生してそのまま自然に消えてしまう死霊の類。自分たちはここにいるけれど、だからといって生きている訳ではないのだと。
だから、彼女たちは自分の命に対してひどく無頓着で、そこにあまり価値を見出していない。それはまだ幼い発生したばかりの幼子たちにこそ顕著に見られる傾向で、少女になった子たちにも少なからず見受けられる。ユーディアなど、この最後に至っても命のない存在としての自分を死を目前としていてもあるがままに受け止めていた。
でも、その最期にユーディアもまだあの子の、アミルタの傍に居続けたいと思ったんですよね。
自分たちのあり方はそのまま受け止めている、それでもその向こう側をこの妖精たちは望むことも出来るのだ。
だから。
そんな彼女たちのあり方に対して、生き続ける可能性を遺したのはヴィレムだった。
そんな彼女たちのあり方を許せないと、否定して消えていったのはフェオドールだった。
彼らの行動の後に、黄金妖精たちの今がある。それに彼女たちが納得しているかどうかは別として。
彼女たちが与えられたのは選択肢だ。摂理に身を任せるのではなく、自分の身を自分の生き方を、自分の終わり方を、そこに至るまでの続け方を、彼女たちは自分自身で選んで今、ここにいる。
パニバルが何も知らない何も持っていない生まれたばかりのモーントシャインに、彼自身が選ぶ選択肢を与えたかったのは、かつて彼女たち自身がそれを与えられたものだったからだろう。
そんでもって、もうちょっとお節介で選択肢という可能性以上のものを与えようとするのがティアットなのだろう。ティアットはいつだって皆に「生きろ」と呼びかける。その声は、命なき妖精たちにも生まれたばかりの世界の種子にも、ダイレクトに届いてしまう。だから、彼女は英雄なのだ。
思えば、この子が、ティアットが一番「生きてる」妖精だったな。この子を起点として、黄金妖精たちは死霊じゃなくて、自分たちの意思で生きようと思う生命に変わっていった気がする。
モーントシャインとの戦いと対話は、最終回答だったんじゃないだろうか。ヴィレムとクトリから始まって、フェオドールがひっくり返して、ティアットが叩き起こしてきたことの。
モーントシャインはかつてのヴィレムたちであり、同時に黄金妖精たちでもあった。その彼に後事を託して行ってしまうのではなく、かつ生きるという選択肢を掴ませるという事は、今までのシリーズであったことの総決算であり、これまで越えられなかった壁を超えたという事であり、終末とともに消えていくはずだったものの向こう側にたどり着いたような、そんな感覚なんですよね。
世界は、滅びるでしょう。でも、そこで全部終わってしまうのではなくて、その先も終わらず消えず生きていく、ゴールを越えて新しいスタート地点にたどり着いたような。
だから、ヴィレムはもう庇護者としての自分を置いていく事が出来たんじゃないかな。もう自分がいなくても、あの儚くふと目を離せば消えてしまう泡のような妖精たちは、これから逞しくしっかりと生きていく事がわかったから。愛すべき娘たちを友に託して相棒と新しい世界に旅立っていくことを選べたんじゃないかな、なんて事を思ったり。
エピローグに入ってからも、黄金妖精たちのその後が描かれていたけれど、みんながこの先も生きていくという確かな意思を持って、それぞれの日々を歩んでいる姿が見られました。特に、大人になってから一番、生の感触が希薄だったアイセアがあんな形になったことで、これからの黄金妖精達は命のない死霊とはまた違う、生きた命として在っていくんだなあ、というのが強く実感できたのでした。
新しい命の輝きを、一番ピカピカ光らせていたのはリィエルでしたけれどね。この幼い妖精は、誰かさんたちの魂の欠片を引き継いでいるのかもしれない幼子は、きっと自分の力であの人にもう一度会いに行くんだろうな。
ラストの「もう一度だけ、会えますか?」への回答は、ちょっとびっくりしましたけどね。こ、こいつあれだけやらかしておいて、最後両手に花かよ。ってかティアットさん大勝利ですか、もしかして。

というか、この「すかすか」シリーズ通しての大勝利者は文句なしにネフレンなんですけどね!
きっととても永いものになるだろう星の旅路に、ヴィレムの傍らに寄り添う少女あり。なんかもう、ついにやってやった感が凄いんですけど。クトリやリーリァを置き去りにして、最後の最後にヴィレムの隣に居続けたのがネフレンだったとは。ってこれ一期にも言っていたような気がするけれど、ヴィレムに先がもう存在しなかったかつてと違って、今度は悠久の旅になるんだもんなあ。
これを大勝利と言わずして、なんといいますか。

ああ、終わったなあ。こんなに続く事になるとは思いもしなかったこの物語が、こうしてちゃんと「終わったなあ」という感慨を浮かべることの出来る結末を迎えることが出来たのは、ずっと読み続けてきた身としても、感無量です。良き、物語でした。読むことが出来て本当に良かったと思えるお話でした。
これからも、この物語の登場人物たちが長く長く幸せに過ごせることが出来ますように。