【人狼への転生、魔王の副官 13.二人の姫】  漂月/ 手島nari。 アース・スターノベル

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北の帝国(ロルムンド)、再び――!!
2人の少女の友情が国交親睦の要となる!?

生きる伝説“黒狼卿”ヴァイト、“魔王”アイリアの偉大な両親の姿を見て育った娘のフリーデは幼馴染のユヒテ、シリンとともに女帝エレオラが統治する氷壁の帝国ロルムンドへ使節団の一員として派遣されることとなった。

初めての外国で父の偉業を目にしながら研鑽を積んでいくフリーデはその中でエレオラの姪のミーチャと仲良くなる。

しかし、城下町へ2人で出かけている最中、エレオラ失墜を目論む謀反人によってミーチャが誘拐されてしまった。
フリーデはなんとか尾行してアジトを突き止めるが謀反人たちの策略により、なかなか応援が来ない。

しびれを切らしたフリーデは友であるミーチャを助けるため1人でアジトへ潜入することになるが――
アイリア以外では唯一ヴァイトとのラブロマンスの可能性があったロルムンドの女帝エレオラ。ってか、元々継承権も低くて扱いも悪かったエレオラをヴァイトが守り立てて女帝へと擁立したんですよね。ミラルディア・ロルムンド戦争からロルムンド内乱編はシリーズ全般を見てももっとも戦記物として盛り上がってるところなので、またぞろご覧の程を。
やっぱりというかなんというか、エレオラは独身で通していたのか。元来、研究者気質の強い人で恋愛ごとには興味も薄く、女帝として後継を育てなくてはいけなくなる段になっても、姪っ子を養子として後継者にしてしまうのは実に彼女らしい、という所なのでしょう。
エレオラにとって、それは一度きりの運命の交差だったわけだ。そこに縁がなかったのなら、未練がましく引きずらずにスパッと割り切って女帝やって研究者としても突き詰めて、と彼女なりに人生を謳歌しているのが垣間見えて、このフリーデというヴァイトの娘を通じての女帝の再登場は色々と確認できることが多くて、うん良かった。
フリーデに対してもヴァイトの娘ということで複雑なものを抱く、というわけではなく、その才幹にヴァイトの血と教育を確認できて喜んでいる所なんぞ、実にエレオラらしく。それでいて、純粋にフリーデの利発さを慈しんで彼女を彼女として可愛がってくれてるの、いい意味で大人になったなあ、というのが伝わってくるじゃないですか。大人としても女性としても女帝としても余裕が垣間見えて、これはロルムンド安泰だなあ。
そんな彼女の脇を固めるのは彼女が女帝として立つ時に下級貴族の身分からずっと支え戦い続けた護帝十四将と呼ばれるロルムンド帝国の英雄たち。
いやあ、この人たち好きだわあ。実際のロルムンド内戦では、主だった活躍をしたのは大体黒狼卿という体で彼らが名を挙げたという功績は殆どがヴァイトがポイポイと放り投げてきたもの。そのままポイ捨てするわけにもいかず、虚飾に塗れた名望を受け入れる事になった護帝十四将たちだけど、この人たち決して自分たちの功績が自分のものではないという事実から目をそらさなかったんですよね。
ヴァイトから譲ってもらったもの、というか無造作に押し付けられてしまったもの、という認識をちゃんと抱え続けて、つけあがったり調子に乗って増長したり、という事を一切しなかった。そして、今に至るまで謙虚であり続け努力と研鑽を続けて、その護帝十四将という仰々しい名前に負けていない本当の実績と実力を身に着けた、っていうの滅茶苦茶カッコよくないですか?
子供世代たちがそんな自分たちの英雄譚に目をキラキラさせて見つめてくるのを、凄く恥ずかしそうに謙遜してあれはそんな大した事をしていないんだ、と常に正直に告白しているのもとても好感度高まってしまうんですよなあ。
レコーミャ大公をはじめとした彼ら、何気に作中でも屈指の黒狼卿のファン集団なんですよねえ。この人ら、ヴァイトの事好きすぎだろうw
ヴァイトから来た手紙とか家宝にしてるとか、フリーデの姿に黒狼卿の面影を見つけて、いつの間にかニコニコしながら思い出話に花を咲かせたり、とか。
でも、ヴァイトのそういう所が私も一番好きなんですよねえ。畏怖されるというよりも敬服されるというよりも、凄い凄いと持て囃されるというよりも、あああの人はもう、と文句を言いながらもその人の話をしているとみんな笑顔になってしまうような、みんな大好きでどうしようもない、そんな親愛とともにある英雄像が。
様々な物語でいろんな英雄像がありますけれど、自分が一番好きなのはこの手のタイプなんですよねえ。
フリーデも、ロルムンドに来てもお父さんの知り合いばかりで外国に来た気がしない、と言ってますけれど、そうやってパパの話をする時みんな心からの笑顔であることに気づいているだろうか。
恩義もあるだろう、敬意もあるだろう、畏れもあるかもしれない。でもそれ以上に、みんなあの人が好きなのだ。そんでもって自分は副官だ、なんて言って目立ちたがないのを知っているから、その癖真っ先に自分から危地に飛び込んでいくのを知っているから、彼がどんなに凄くてとんでもない人物だとわかっていても崇め奉って遠ざけるのではなく駆け寄っていって一緒になって手助けしてしまう。彼のことが好きだから。
フリーデも、いろんな人から父親のことを聞いてもその偉大さを思い知って遠くに感じる、なんてことはないんですよね。凄い人だと感じても不思議ともっと身近に感じているんじゃないだろうか。彼のことを思い出話する人達の口ぶりは、そんな感じなんですもんねえ。

気負わず自然体で他国の要人たちと顔を繋ぎ、次期女帝である帝姪であるミーチャと身分を超えた友情を育んでいくフリーデ。ただのフリーデとただのミーチャとして、でも次代のミラルディアとロルムンドを担うものとして、二人の友情は2つの国の未来を祝いでいく。二人の友情がいつまでも続くように、いつまでも仲良く出来るように、いつでも会いに行けるように……自分たちの国を育んでいくことを約束するのである。
そんな子どもたちの未来を、子どもたちが自分で立って歩こうとしていくのを、周りの大人たちが優しく見守り、その障害となるだろうものを叩き潰していくのホント頼もしいです。
未来は、明るいなあ。

漂月・作品感想