【継母の連れ子が元カノだった 7.もう少しだけこのままで】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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生徒会は、恋ざかり!? 新たな日常と体育祭――二人の誕生日ももうすぐ。

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
文化祭の一件から、元カップルだった記憶もいい思い出になりつつある秋のこの頃……結女が生徒会書記を務める、新たな日常も始まっていた!
緊張の面持ちで踏み入れた生徒会室に集うのは――意外と恋に多感な高校生たちで!?
水斗と散々嫌みを言い合った手前、いまさら好きだと言いにくい結女は、会長・紅鈴理はじめ女子メンバーの恋バナをヒントに、水斗から告白させるための“小悪魔ムーブ”を思いつき!?
「――私たちの、誕生日。予定、空けておいてね」
そしてきょうだいとして迎えるその日に、二人の想いは向かい合う――?


生徒会は恋の花咲く春爛漫、とばかりに結女が入った生徒会の役員たちは青春の真っ只中でありました。前巻で登場した生徒会長の紅鈴理はそのカリスマ性を見せつけてくれると同時に恋に悩む一人の乙女である事も発覚していたのですが……。
もう一人の副会長の亜霜愛紗という娘も、前生徒会長の星辺先輩に小悪魔ムーヴをかまして気を引こうと一生懸命。まさに恋真っ盛りの生徒会は、水斗にどうやってもう一度恋させるかに悩む結女にとっては相談相手に事欠かない頼もしい先輩達の園、になるはずだったのですが……。
いやうん、だめだこりゃ。
今まさに恋に夢中、と言った女性陣。年上の先輩たちと来たら、もう恋愛模様については練達、経験も豊富で相手を意識させるスキルにも事欠かない恋愛強者だと思うじゃないですか。
ちょっと相談したら含蓄ある台詞が帰ってくると思うじゃないですか。今恋している女の子特有の、価値ある言葉を送ってくれると思うじゃないですか。
……鈴理会長も、愛紗副会長も、ひでえポンコツだったぁ。
今まさに恋真っ盛りって、思いっきり空振りまくってる真っ最中じゃないですか! 相手を振り向かせるために、金属バットで殴りかかるような暴走娘たちじゃないですか。
恋愛弱者にも程があるじゃないですか。いや、もうちょっと男を振り迎えるにもやり方ってもんがあるんじゃないですか? 恋愛雑魚か! ゴブリンか何かなにか、この先輩たちは。
ラブコメ漫画読んだほうがまだ参考になるんじゃないだろうか。やり方を完全に間違えてません?
なんかもう目を覆わんばかりの惨状が繰り広げられてて、むしろもっとこの人達の恋模様一部始終見てみたい気がムクムク湧いてきてしまうんですが。ラブコメとして面白すぎるサンプルだぞ、この二組。
愛紗は小悪魔ムーヴかますにしても、もうちょっとやり方があるだろう、とかもうちょっと上手くやれよ、空気読めよ、タイミング見計らえよ、とツッコミが絶えないありさまで。
いやあ、作者の紙城さんといえば、別作品ですた最強のサークルの姫「アルティメット・オタサー・プリンセス」の暴れさせっぷりからも小悪魔ムーヴに関しては達人もいいところなんですけれど、あれをポンコツ方向にぶん投げるとこんな残念キャラになるのかー、すごいなー、わはははは(爆笑
それよりも酷いのが鈴理会長なんですが。この人は……ほんとになにやってんだ? 物理か? 取り敢えずメーター貯まりきったら襲いかかるのは、女の子としてどうなの!? どうなの!?

彼女たちを見ていると、中学時代に凄く真っ当に男女のお付き合いをしていた結女の方が恋愛経験値では遥かにベテランの風格が感じられてしまうのですが。暁月の方ですら、大失敗をしたとは言え川波とそれはディープな付き合い方をしていたのですから、同じ小悪魔ムーヴでも恋愛雑魚どもとは格が違うんですよねえ。
暁月の場合、やり方がエグすぎてどんな瀬戸際狙ってるんだよ、となってしまいますが。この娘、色んな意味で業が深すぎるw
ともあれ、恋愛雑魚どもの頓珍漢なアドバイスを真面目に聞いてしまう結女でありますけれど、生徒会の先輩たちの旋風脚並の空振りっぷりに比べると、結女がそのアドバイスどおりに動くと多少から回っててもちゃんと水斗に刺さるように着弾してるのを見て、流石結女さん恋愛経験値が高い! となってしまう不思議。
いや、最初の時のバスタオル事件と比べると、結女の肝の据わり方も違いますからねえ。腰引けたまま勢いだけでツンツン突き回そうとした頃と比べたら、攻める気満々の今は度胸が違う。
それはそれとして水斗の息子さんを思いっきりガン見してしまった後の、あの喜悦っぷりは普通にキモい、キモいぞ結女さん。いさな並にキモいw いや、生々しい反応というべきなんだろうけど、あんた喜びすぎだw

そんな裸のお付き合い、に限らないんだけれど、結女と水斗の距離感が凄く安定してきたのがわかるんですよね。かつての恋人だった時の頃のお互いに気を遣い、相手のことを慮りだからこそ距離が一定置かれてしまっている状況と違って、家族になったが故の遠慮のなさ。
それでいて、結女が生徒会に入って学校の中でも水斗と違う時間と空間の中で過ごすようになった事で、それぞれ離れた所で時間が進むようになったんですよね。それぞれに自分の世界を作って、別の道を歩きはじめた、とも言えるわけで、その意味では距離は開いた、とも言えるんですよね。
でも、恋人だった頃よりもその距離感は柔軟と言えるのかもしれない。近くも遠くも自由で、でも望めばすぐ手が届く。望めば、いつもそこにいる。
距離感というなら、今水斗とべったり近くにひっついているのはいざなの方でしょう。いやそりゃ、付き合ってると思わないほうがおかしい、という距離感でくっついている二人だけれど、結女はさほどその二人の距離感に焦りとか嫉妬とか感じている様子見えないんですよね。
それは、二人の関係をちゃんと理解しているという以上に、今の自分と水斗の距離感に確信を抱いているから、なのかもしれない。
あの体育祭の借り物競争の時の、いざなに対しての「貸して」じゃなくて「返して」。は結女の揺るぎない立場を指し示しているように思えます。いざなはほんと、無双状態エンドレスなんですけど、この結女に対しては完全に立場わからせられてますよねー。完全にひっくり返ってお腹見せてる状態。そんな無条件降伏状態にも関わらず、隙あらば水斗の美味しそうなところ齧ろうとしているところが卑しいw いざな卑しいw それを愛嬌として水斗にも結女にも見事に認めさせてしまっているところがなおさら御卑しいw
いやあ、この娘ほんと好きだわ。


もう少しだけこのままで
誕生日の、あのプレゼントを渡すエピソードは良かったなあ。今の兄妹という家族の関係と、元恋人という過去の想いと、今新たに好きになった人への想い、それらがゆっくりとかき混ぜられていく心地よさ。それが穏やかながらしっとりとした熱の籠もった深夜の部屋の中で交わされる会話の中に詰まってて、なんか胸が暖かくなるやらキュンキュンするやら、ぶわーっと読んでるこっちの感情というか気持ちというか、噴き上がってる感覚がたまらんでした。こういう「ぶわーーっ」ってなる作品は、やっぱりイイですわ。充足感というか、この胸一杯になる感覚を味わわせてくれる作品は、物語は、最高です。