【恋は双子で割り切れない 2】 高村 資本/あるみっく 電撃文庫

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割り切れないからこそラブコメは続く? 双子姉妹の誕生日、どうする!

わたしの妹は昔から賢くて、変わり者で、自由だった。
純と付き合うよう仕向けたわたしの狙いにも容易く勘付き、結果、那織の策略によって三人のこじれた関係がリセットされるに至ったのが先日のこと。
那織曰く、「単純明快な三角関係でしょ? 私はもう手加減しないからね」
だからこれからは正々堂々の勝負……なはずだけど、やっぱりこじれてばかり。
友達の慈衣菜は純に勉強教えて欲しいとか言い出すし、那織は機嫌が悪いみたいだし、純は恋愛そのものから距離を置こうとするし。わたしはと言えば、まだこの状況を素直に飲み込めなくて。
そんな中、わたしたち姉妹の誕生日が近づいてくる。……だからちょっとだけわがままを言ってみたい。昔みたいに、キスをして、って。
くわー、どちゃくそ面白いなあ。
1巻はほぼほぼ那織の手のひらの上、という感じで彼女の頭の回転の速さと突出した感性に振り回されたものですけれど、2巻はそんな彼女も思うがままに学校生活すいすいと泳いでいるわけじゃない、大きな弱点もあれば逆に振り回される展開もあり、ままならなさに頭抱えているのは彼女も変わらず、というのがよく見えてくる回でした。
というか、一旦視点をちょいと俯瞰的にした感じですよね。というより焦点を純と双子姉妹からちょっと後ろにさげて、琉実と那織、そして純の三人の交友関係にまで広げて改めて三人を取り巻いている環境を描いた、というべきか。
意外と三人はそれぞれのグループで離れて過ごしているんだけれど、同時にその3グループ間の交友もあって……いや、那織は人見知りもあってか琉実のバレー部の部活仲間とは接点持たないようにしてるわけだけれど。運動部で活発なバレー部の面々をやたら罵倒しまくってたくせに、いざそのグループに囲まれたら途端に寡黙になって表情閉ざしちゃうの、申告よりも酷い人見知りの内弁慶だなおい! どうせその際も内心ではめっちゃ早口に複雑でサブカル知識満載した罵詈雑言をつぶやいていたに違いないの容易に想像してしまえるのが、なんか笑える。
そんな彼女の頭の回転の速さについていける、というか対等に面突き合わせる相手っているのかねえ、とその役割を担っているらしい「部長」をどこか胡乱に見ていたんだけれど……いやあ、この娘はこの娘でとんでもねえなあ! むしろ対人能力ある分、那織より物事への柔軟度高いんじゃないだろうか。
まさか前回の那織に匹敵する人間関係を巡る謀略を見せられるとは思わなかった。関係者の殆ど、知らず識らずに手玉に取られてたって事じゃないですか。いや、前回の那織みたいに結論がひねくれているわけではなく、友人のあの子と仲良くなりたいという要望を叶えてあげただけ、ではあるんですけれど、やり方の迂遠さが! もって回っているうえに悪戯心満載なやり方が、那織曰くの邪悪!というの、わかっちゃうわー。
いやー、この歳でその悪魔的な蜘蛛の糸的なシナリオの描き方、エグくない!?
本質的な意味で那織と対等なのがよくわかった。
それでいて嫌がらせではないんですよね。那織にとって最適でスムーズな交友関係の広がり方をしたわけですし。散々、引っ掻き回されて悩まされて地団駄を踏むはめになったのは兎も角としても。
いやー、邪悪だw
でもほんとに那織みたいな子は「友達」足り得ると自認できる相手が、本当に少ないだろうから、もし友達になったとしたら一生モノなんですよね、それを見繕えるんだからなあ。
まあ、相手側からは友情ではない、というカードを伏せちゃっているあたりが実に邪悪ですがw 
最初、部長と那織の出会った当初が不倶戴天の敵同士だった、というのもこうなるとよくわかりますねえ。こんなん、最初から息が合うわけないじゃないですか。元々敵を作りやすい那織ですけれど、その敵というのは那織という存在を理解しきれず未知であるからこそ、その尖りっぷりばかりが突き刺さって敵意を抱いてしまうと思うのですけれど、部長の場合は同じステージに立ってしまったからこそぶん殴り合う以外なかった関係とも言えるので、ある意味本物の敵だったんだよなあ。
最後の那織の独白で引用されてた詩の作者であるテニスンの言葉を借りれば、He makes no friend who never made a foe(一人の敵も作らぬものは一人の友も作れない)という感じですか。
那織は敵を作ってしまうところもあるけれど、意図的に相手を敵認定していくところもあるんですよね。慈衣菜は元より、純を巡っての恋模様に関しても姉の琉実をしきりに敵としようとしている。
まあ、琉実相手はどれだけ那織が敵扱いしようとしていても、実際那織がやってることは琉実に助け舟出してばかりで、口で言う敵だ敵だという台詞は狼が来たぞにしか聞こえなくなってきているのだけれど。
それを一番わかってるの、琉実ですしねえ。この姉妹、仲が良すぎる。
実際問題、那織が仕掛けをして一旦拗れてしまった純との関係を三人でリセットしたの、今回の安定した琉実と純の様子を見ていると、あれ本当に正解だったんだなあ、というのがよくわかるんですよね。
ああやってリセットしていなかったら、元の幼馴染の気安い関係にも戻ること出来なかったでしょう。気軽にお互いの家を行き来することも、普通に学校で会話することもなく、疎遠になっていってしまったのが容易に想像してしまえる。
リセットしたからこそ、幼馴染以上恋人未満という淡い関係でもう一度、リトライする環境が整えられた。あんな、ハグしてとか甘えられること出来なかったでしょうし。
結局、早すぎたんですよね、付き合うの。幼馴染という関係を喪失して恋人になってしまった以上、その恋人という関係が終わってしまった時に日々激しい変化を迎えている高校生じゃ元に戻ることも出来ない、はずだった。
まああのままズルズルと幼馴染という関係を続けていった結果、関係そのものが腐ってしまう可能性もあったので、三人の関係に大きな刺激を与えるという意味で琉実が純と付き合ったこと自体は否定されるべきじゃないのでしょうけれど。ことを姉が起こすことで起動に成功し、その後始末というかリカバーを妹がして、というのはよく出来た手順じゃないですか。
一方で、純が何も出来ていない、というのもまあ確かな話なんですよね。わりと卒なく、姉妹の機嫌とって対処もスマートにこなしているのは結構凄いとは思うのですけれど(誕生日プレゼントの渡す順番とか、かなり気を遣ってるのが見受けられましたし)、それでも受け身のままなあなあで過ごしちゃってる。自分でどうこうしようとせず放棄してしまっている、という指摘は彼にとっては痛いものだったんじゃないだろうか。
まあでも、だからといってどちらかを選べ、というのもナンセンスな話だとは思うのですけどね。姉妹側もそういうのを求めてるんじゃないでしょうし。いや、最終的に自分の方を選んで欲しい、とは思ってるんだろうけれど、でも選んで欲しいと思ってるんだろうか。
那織は自分では好戦的に行動を起こそうとしているつもりみたいだけれど……あれで、琉実に純となにかやってるのかを秘密、というか特に言う必要も感じずに後回しにしてたというくらいなのですけれど、やたらと拗ねてましたしねえ。あそこで拗ねるのって、出し抜かれる云々というよりも除け者にされたという感覚の方が強いみたいで、それって三人一緒という意識が強くないと生じにくい感覚でしょうしね。那織ってそういう所、自分で思ってるよりも相当に現状維持派に見えるんだよなあ。

いやー、ほんとこの作品、登場人物見ているのがやたら楽しいですわ。人間関係が多角的な分、いろんな方向からキャラの側面が見えてくるし、掘り下げ方も深さから方向から多種多様でそのキャラを覗き込むのがほんと面白い。1巻のようなインパクトは、あの展開のひっくり返し方を何度もやられたらたまらんという所もあって、ありませんでしたけれど、その分縦横に世界が広がり奥行きもさらに覗けるようになって、噛めば噛むほど味が滲み出てくる感じでどちゃくそ面白かった!
これは先々も楽しみだなあ。