【田中家、転生する。】 猪口/kaworu ドラゴンノベルス

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家族いっしょに異世界転生。平凡一家の異世界無双が始まる!?

平凡を愛する田中家はある日地震で全滅。
異世界の貴族一家に転生していた。
飼い猫達も巨大モフモフになって転生し一家勢揃い !
ただし領地は端の辺境。魔物は出るし王族とのお茶会もあるし大変な世界だけど、猫達との日々を守るために一家は奮闘 !
のんびりだけど確かに周囲を変えていき、日々はどんどん楽しくなって――。
一家無双の転生譚、始まります !

一家丸ごと異世界転生! いやこれはなるほど。異世界転生モノでまず最初に気になってしまうのはやっぱり元の世界に残された家族の事なんですよね。特にまだ十代の若者、それも一人っ子なんかが事故やらで死んでしまったら、残された家族のそれからの事を思うと胸が痛いものがありました。
それを思うと、一家丸ごとで転生してしまうというのは、元の世界への心残りが一つ解消されるパターンなんですなあ。まあ冷静に考えると、元の世界では一家丸ごと全滅しているわけですから、悲惨極まりない話では在るんですけれど。
まあ、転生することになった田中家の人たちは楽天的と言うか根っから明るく呑気な性格なのであまり引きずることはないようですけれど。
ある日突然、前世の記憶を一家みんなが思い出す、という展開はまあ生まれた時から記憶があるとこの場合混乱してしまいますので、自然な成り行きというべきなのでしょうか。
でもこれ、ある意味パパさんとママさん、生まれ変わっても結ばれていたということなのですから、何気にロマンチックなシチュエーションなんじゃないですか?
あと、特徴的なのが猫である。猫でかいな!!  完全に猫という名の巨大生物じゃないですか。これだけデカイ猫ってもはや虎なんじゃないですか? 猫科がデカイとそれもう猛獣ですよ? じゃれつかれると普通に死にそうなんですけど。
幸い、この猫たちは元の世界に居ることから半ば妖怪みたいな存在で非常に知性的であり、田中家の人々を慈しんでいたので、ちょっと機嫌が悪くなると猫パンチ、などという危険もなさそうなのですが。
でもこういう人間よりも巨大な質量を備えてしまうと、不思議と猫というよりも犬的な挙動に見えてしまうんですよね。犬みたいな忠実な振る舞いとはもちろん違うのですけれど、自由気ままで自分たちこそが一番偉くて人間たちは下僕!という風な振る舞いを見せる猫らしいところが目立たず、自分よりも小さな存在を護るように気を配って動くようすなんか、大型犬っぽく見えるんだよなあ。

とまあ、記憶が戻ったことで皆の無事(?)を喜ぶ田中家の人々。呑気だ。
でも、本人たちのこののんびりした善良温厚な気質とは裏腹に、田中家が転生したスチュワート伯爵家は、魔物が侵攻してくる辺境を任された貴族であり、これが想像以上に過酷な土地なんですよね。
実際、周りの辺境領は統治する貴族家が軒並み破綻していて、スチュワート伯爵家も長女のエマが偶々開発に成功した高級絹と、商材を的確に稼ぎに変換してくれるお抱え商人がいなけりゃ、一家総出で内職してても早晩財政破綻していたくらいですしね。
それに、魔物の恐ろしさがゲームのモンスターのようなちゃちなものと違って、まさに存在そのものが厄災級。突然、湧いて出てくるところといい、強さの基準がまともに人間の手に負えるものじゃないところといい、魔物の侵入が「ハザード」と呼ばれるのに相応しい脅威であり、それと真正面から向き合っているのが辺境地域なんですよね。
スライム戦でここまで絶望的でエグいことになる戦いは、早々見たことなかったですわ。場合によっては生きたまま喰われるの前提で生き残りの選別をしなければならない、ってそれまでのんびりコメディやってたのが嘘のような緊迫感と絶望感で、そのギャップが凄かった。普段あれだけ呑気にすごしているのに、いざという時あれだけの覚悟を備えていたわけだ、スチュワート伯爵家の人々は。

彼らと知り合い、それまで宮廷政治の陰湿さから精神の均衡を崩し家族間の仲も壊れかけていた王妃とその子供たちは、スチュワート家の人々の明るさと善良さ、その純朴さに心救われることになるのですけれど、それだけではない辺境に暮らす者たちの覚悟と、彼らの置かれた過酷で理不尽な状況を目の当たりにすることで、国内の政治的な不均衡と向き合うことになっていくのか。
ちなみに、スチュワート家こと田中家の人々は腹芸とか全然できないので、政治的にはまったくアレなのですが、彼らの場合はそのアレさがまた武器となっていくんだろうな、これ。
次からは辺境から王都に一家乗り込んでの大騒動になるようなので、彼らの動向によって何がどうシッチャカメッチャカになるのか、楽しみです。
しかし、長男と次男と結婚してくれそうな相手、出てくるんだろうかw