【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 七】 秋田 みやび/しの とうこ 富士見L文庫

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芹が呪いを受けていた!? 原因を除くため、形代の式神・青竜が目覚める。

“北御門”が呪詛で狙われた廃遊園地の一件を切り抜け、大学でも新年度を迎えるころ――ところが芹は、どうにも体調が優れない。
その様子に呪いの兆候を感じた皇臥は、芹に北御門への呪詛が効かなかったのは、すでに彼女が別の呪いを受けていたからだという可能性に思い至る。皇臥は事態を重く見て、災いを受け流す役割を持った式神・青竜を呼び覚ますのだが……なんとその姿は、若い頃の皇臥そっくりで!?
呪いも旦那も増殖中? 受難の仮嫁とぼんくら旦那は、呪いの源に迫れるか!?
ああもう、この旦那ホントにかわいいなあ!!
往々にしてこの手の下げる評価を受けてる主人公って、実は有能だったり天才だったりするのですけれど、皇臥って掛け値なしにぼんくらなんですよね。陰陽師としての腕前は最大限評価して普通。苦手分野多すぎるし、得意の式神製作も今回の青竜の如月も出来栄えはともかくとして、面倒がってアップデートしてなかったとか、何をやってるんだと。
本当の本当にやや駄目よりの凡庸な陰陽師で、覚醒の余地とか完全にないんだよなあ。
かといって頭のほうが冴えているかというと、こっちもぼんくらと言われても仕方ない右往左往っぷりで、オマケに芹に秘密に事を進めようとして、史緒佳お義母さんにこっぴどく叱られる羽目になってるし。
嫁さんの前で母親にガチで叱られるって、恥ずかしいなんてもんじゃないですよ。でも、それとなく皇臥を庇ってフォローする芹が実に良い嫁してて、史緒佳お義母さんもあとで感謝して褒めてましたけれど、あれは良いシーンでした。
という風にやることなすことぼんくらで、芹がかけられた呪詛に関してもあれ正体を見抜いたのって偶然の産物に近くて、皇臥が鋭く見抜いたってわけじゃ全然ないんですよね。それどころか、予想がことごとく外れるわ、芹を護るための防衛策が片っ端から効かないわで、文字通り右往左往してましたもんね。
ただ、芹のために必死で一生懸命頑張ってるのだけはこれ以上無く伝わってくるんですよ。余裕ない分、必死さが焦りが懸命さが余計に伝わってくる。芹に黙って対処しようとしていたのも、芹を不安がらせないためですし、芹の事が心配で心配でたまらないというのがヒシヒシと伝わってきて、もうそれが可愛いというほかなく。
形代という身代わりの生贄役である青竜を使いたがらなかったのも、皇臥が式神たちを使役する道具ではなく家族として愛情を注いでいるのが良く分かるエピソードでもありますし、彼の優しさというのは随所に見られるんですよね。そういうところが陰陽師として甘いところだと言われたとしても。
かっこ悪いところもたくさんあった、でもそういう時って自分のメンツ度外視して、芹の気持ちを組んで彼女の心身だけじゃなく芹の友人たちや置かれた環境ごと守ろうとしてくれている時で、それを叶えるためならどれだけ自分の無能をさらけ出してもいい、自身が格好悪いことになっても構わない、という姿勢って……カッコいいんですよ。
かっこ悪いのが、カッコいい。
いやほんと、あの兄貴に頼み込むシーンはダサダサで恥ずかしいしみっともなくてかっこ悪い事この上なかったんだけれど、それが本当にかっこよかった。
芹がそれを見ていて、もうなんかアテられちゃったの、凄くわかりますわー。
女の人が男のことを可愛くてたまらない、と思う場面ってこういう形もあるんだなあ。

その芹の方も、今までの生き方のせいか不安や辛いことがあっても、表に出さずに誰にも弱みを見せず大丈夫大丈夫と流してしまっていた自分に、友達からわりと厳し目に指摘受けてようやく気づくことになるんですね。自覚が全然なかった分、きっとたちも悪かったんだろうけれど。
目に見えて不調なのに、病院行ったらという心配に、全然大丈夫だから、と返すのって相手からすると何も安心できることはないんですよね。心配をさせてもらえない、気遣いを受けてもらえない、というのは心の壁になるんだろうなあ、これ。
そういうのを取っ払って、ようやく「家族」になるわけだ。芹としては、もう気持ちは北御門家の一員のつもりだったと思うんですよ。でも、家族という関係に今まで慣れ親しんでいなかった彼女にとって、意識しない所でこういう隔たりが生じていたんですなあ。まあ、皇臥たちもそんな壁とか気にするほどのものでもなかったんでしょうけれど、それでも芹が意識して皇臥たちからの心配を受け取ろうとしたことで、今まで以上に芹の中で心理的な隔たりが取っ払われたような気がします。
なんか皇臥との距離感も、元から全然近かったけれど、もっと深い所でしっかりと繋がった感があって、今まで以上に夫婦然として見えるようになった気がしますもんねえ。

あと、護里ちゃんと祈里ちゃんの可愛さが相変わらず天元突破なんですけど! この幼女バージョンも、蛇と亀の式神モードになっても変わらない可愛らしさといったら、なんなんですかね!?
仕草から台詞から、あのきゅーっと抱きついてくるところとか、もう何から何まで可愛いんですけど。かわいいなー、かわいいなーー!! 

さあ問題もすっきり解決して、平和な家庭の団らんが戻ってきた……と、思うんだけれど、なんだこの不穏な空気は。なんかまた怪しい人が暗躍してるっぽいし。できればこの家庭はほんとに平和で居て欲しいんだけれど。