【ロード・エルメロイII世の冒険 2.彷徨海の魔人(上)】  三田誠/坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「でもね。わたしたちは好きになったから、生きるべきなの」
神を喰らった男、エルゴ。
徐々に人格を失うと予測された彼を助けるため、エルメロイII世たちは日本の東京に旅立った。彼らを迎えた両儀幹也は、とある誘拐事件の解決を依頼してくるのだが……。
攫われたという夜劫アキラには何があったのか。そして、遠坂凛とエルゴの前に立ち塞がる彷徨海の魔術師の正体とは?

神の名を問う旅、『ロード・エルメロイII世の冒険』第二幕が開始する――!
コクトー、全然年取ってないな!! グレイからも、未那みたいな娘がいる歳には見えないと言われているくらいだし、未だ20代前半くらいに見えるんじゃないだろうか。
実際は未那の年齢からしても30代には入っているはずだけれど。
というわけで、今度の舞台は日本。そして「空の境界」から今は両儀となった幹也とその娘の未那が出演。まさか、コクトーを他の作品でお目にかかることが出来るとは思わなかった。素直に嬉しい。
しかし、今は両儀家の会計士紛いの仕事をしてるのか。ヤクザとかマフィアの会計士って……かなりヤバイ地位じゃないですかw まあコクトーの性質からして会計士って柄なのか、とは思うところですけれど。じゃあ何が一番似合うの?と問われるとなんだろう、と首を傾げてしまうのですが。
魔術師でも異能持ちでもないにも関わらず、型月作品の中でも最も不思議でとらえどころのない異能の人物だったもんなあ、黒桐幹也は。
そんな彼の不思議な存在感は、この物語の中でも発揮されていて、コクトーがその場にいるだけで場が落ち着いてしまうんですね。終盤にはエルゴの過去を知る彷徨海の魔術師・若龍らと呉越同舟の形で集まることになるんだけれど、誘拐事件やエルゴの状態、彷徨海の目的なども絡んでどうしたって穏やかならざる雰囲気になってしまう所を、コクトーがふわりととろかしてしまうのである。
話術に優れているとか、雰囲気をコントロールしているというわけでは一切ないのだけれど、毒気が抜かれるというか攻撃的な感情が穏やかに均されてしまうというべきか。
彼がどうして両儀式や蒼崎橙子みたいな超危険物と常に一緒に居て大丈夫だったのかが何となくわかるというものです。思えば、「空の境界」という物語の備えていたあの静謐な空気感というのは、物語の根幹がそうであった、というのもあるのでしょうけれど、コクトーの存在が大きかった気がします。式だけなら、もっと冷たく冴え冴えとしたものになっていたでしょうし、静謐さの中に不思議な温かさが常にあったのは、コクトー由縁だったんじゃないかなあ。
それは今作にも引き継がれていて、何かと騒がしい凛や新キャラの白若龍なんかも陽気なキャラクターなんですが、そんな彼らが居るにも関わらず、どこか静謐な空気が流れてたんですよね。
1巻のシンガポールの暑苦しいくらいの陽光と海のイメージから比べると、雰囲気が一変している。
これは、英国人であるエルメロイ二世やグレイからみた日本という異国に訪れた時の幻想的なイメージからも来ているのでしょうけれど。いきなり、縁日からはじまりましたからね。
また未那の方もこれ、独特の育ち方をしましたよねえ。この娘は活発でわりと無節操に駆け回る落ち着きなさそうな娘なんだけれど、それでもエルゴが発作で苦しんでいる時にふわりと彼のざわめきを均してしまった所なんか、コクトーとはちょっと違うけれど父親によく似た風情でありますし。同時に、何となく逆らえない気分というか子分にさせられた感じになってしまうのってこの娘独特の性質だよなあ。あえて言うなら、叔母の鮮花似か織に寄ったところがあるのは面白い。母親の式にはあんまり似てる所が見つからないというのもまた面白い。

さてもエルメロイ二世からすると久々の日本……たまに来てるんだったっけか。でも冬木の地ではなく、東京というのはなんか変な感じがしますね。秋葉原そんなに行きたかったのか、教授w
むしろ、凛と東京という組み合わせの方が違和感あるくらいで。なんでか凛は倫敦とか外国の方が似合う感じなんだよなあ。
聖杯戦争のあった国に戻ってきたから、というわけではないのでしょうけれど、改めて凛とエルメロイ二世の二人きりで、自分たちに影響を与えたサーヴァントの話を感慨を込めて交わすシーンにはなんだか感慨がありました。こればっかりは、あの戦争に参加した、そして生き残った人間でなければ共有できない感覚なのでしょう。幸か不幸か、その場面をグレイが目撃してもやもやする、などといった事はなかったのですが。

話の方は、エルゴのリミットが迫る中で彼の中にある神を取り払う方法を求めてきた日本で、エルメロイ二世一行は、コクトーからある誘拐事件の被害者の救出、或いは救済?を求められる。
その被害者を連れ出していたのは、何の因果かエルゴの過去を知る、もしかしたら友人だったという彷徨海の魔術師・白若龍。なんか好青年っぽいんだよなあ。被害者であるアキラについても、むしろ無理やり攫ってきたというよりも、アキラの希望をきいて連れ出したという感じですし。一方で魔術師としてちゃんと目的在ってアキラを連れているというのもあり、エルゴにかけられた神食いに関わるナニかをアキラが持っている、と縁が不思議と連なり絡まっている状況。
それが、どう展開していくのかは、取り敢えず今回は登場人物と状況を舞台上にあげる、という意味でプロローグだったような感じです。エルゴを助けるための道筋が、まだよくわからないしなあ。どんどんと材料は集まっているみたいなのですが。

しかしこれ、式の登場はあるのだろうか。なんかコクトーの回想からすると、嫌だ出ない!と主張してるみたいに見えたけどw あったら嬉しいなあ、というくらいで。