【主人公じゃない! 02】  ウスバー/天野 英  エンターブレイン

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能力差5倍!? 脇役 VS 「序盤、中盤、終盤最強」の剣聖

素質看破、無限骸骨トラップ、囮召喚装置……ゲーム知識を駆使したレクスの手法によって、常識外れな速度で成長していくラッドたち新人パーティ。
だが、その総仕上げに挑んだ「世界一決定戦」で待ち構えていたのは「序盤最強」のレクスを超える「真の最強キャラ」で……!?

現実で無限に敵湧くフィールドでレベル上げ、って出来るのかー。
いや、実際にはゲームでやってたレベル上げの多くはゲームみたいに上手く行かなかったのだけれど、その中から何とか実用に耐えられるものを検証の上で採用して、という形で実現しているのですね。
シナリオの展開でもそうだけれど、ゲームが現実化したからと言ってすべてがゲーム通りに進行するのではなく、ゲームでは可能だったことが不可能になっていたり逆にゲームではシステム上不可能だったことが、自由に動き回れる現実だと可能になっていることがあったり、とその辺の現実とゲームの可能と不可能の範疇のバランスが非常に高く取れていて、読んでても引っかかりが少ないんですよね。
レクスがゲームと同じつもりでやらかしてしまい、失敗してしまうというケースもありますし、ゲーム表現と現実とのすり合わせがうまいんだなあ。
そんな中で自分たちよりも明らかにレベルの高いダンジョンボスを、ゲームさながらにハメ技で傷一つ負わずに倒してしまうシーンは、苦笑交じりながら面白かったです。
ゲームではNPCが不規則な行動を取ってしまうためにランダム要素が強かったハメ技が、現実側ではパーティーでしっかり個々のメンバーと信頼関係が結ばれていて意思統一が取れているために、余計な行動を取る人間がおらず、安全にハメられた、というのはなんともはや。
まあ現実は現実で不確定要素があったり、思わぬミスがあったりという事もあるので結局完璧に安全という事はなかったのだろうけれど。

そんな風にズルにも思える強化策を取り続けるレクスだけれど、彼の教授する攻略法や強化法は効率の最適化というもので決して楽して強くなるものではないんですよね。いや、楽しようとすれば楽できるんだろうけれど、コードをイジってステータスの数字を変更するみたいなチートではなく、ちゃんと鍛えて強くなる方法ですからね。ハメ技はシステムの穴をついたみたいなものだけれど、リスクはあったわけですし。
まあレクスの思惑以上に、ラッドたちは真面目なものだから彼に提示された訓練法にレクスの思惑以上に真剣に向き合って、数値だけをアップさせるのじゃない自力からお仕上げていくような地道な強化に繋がっているので、その成長も大きいのでしょうが。
それでも、あっさり2巻でラッドたちがレクスのステータス数値を上回ってくるとは思いませんでしたが。スペックだけなら、もうレクスよりも強いのかw
それでもこの世界で認知されている戦闘システムを越えたプレイヤースキルと知識を駆使するレクスは、戦闘巧者としてまだまだ新人で戦闘のイロハを学びきれていないラッドたちでは、遥か天上にいる英雄に思えるのでしょう。レクス自身、その憧れを裏切るようなこすっからい真似はしてませんしね。
結構内心卑屈だし、コンプレックスも強いし、ラッドたち才能あふれる若者たちに嫉妬を滾らせているレクスですけれど、その教育は熱心で誠実ですし、ついつい面倒を見てしまうところなんか、教えて貰う側もレクスがそれだけ心砕いてくれているというのが伝わるから、慕うのも無理ないんですよね。
彼の誠実さは、今回の大きな壁だった剣聖相手にも示されていて、単にゲーム感覚だけだったら彼に勝ったあとにあんな塩を送る真似は思いつきもしなかったでしょうからね。与えてもらったら、少なくともそれに比肩するものを返したい、と今以上に彼に強くなるためのシステムブレイクのヒントを与えてしまうとか、ほんとそういうところだぞ、という感じで。
しかし、主人公じゃないと自重し逃げ腰にもなりながら、いざというときには逃げないし、度胸も据わって思い切るあたりが、このレクスの中の人の資質だよなあ、と思う所だ。大人のくせにガキみたいなピチピチした心を持ってるんじゃないだろうか、この人。まあそういう粋人じゃなかったら、高くて売れなかったゲーム機を買い揃えて夢中になって攻略したりとかしないですわなあ。
彼ならたとえ本当の現実だとしても、必要ならバカ高い高級品を使い潰すことを躊躇わなかったんじゃないだろうか、と思えてくる。
同時に、その必要な時を見極めるのも上手いよなあ、と。単に意地や見栄だけで不必要に超高級アイテムを使い潰したりはしない強かさもあるんですよね。
まあ、単純に負けた場合面倒見てる若手の女の子の身の安全がヤバイ、という段階で勝つために躊躇うことはなかったかもしれませんけれど、ちゃんと得るべきものは得ているあたりが抜け目ないんですよねえ。

さて、これでレクスの行き止まりだった成長の壁を突破できたわけですけれど、だからといって順調に波に乗れる、というはずもなく。また不用意に名声があがってしまったために余計なトラブルも舞い込んできそうですし、果たしてこれからもシナリオ管理や成長管制ができるのか。
あと、若手の中心であるラッドの成長はわりと丁寧に描かれているのですけれど、それ以外のメンバーはあんまり掘り下げた描写も少ないので、もう少し描いてほしいかなあ。それとレクスの妹のレシリアのポディションもまだ中途半端でどういう立ち位置なのか微妙によくわからんのですよねえ。ラッドのパーティーとは一歩距離置いていますし、レクスの相棒というわりにはレクス単独行動が多いですし。レシリアがヒロイン枠ではあるんだろうけれど、もうちょっとハッキリ立ち位置がしてくるとありがたいなあ、と思ったり。