【王様のプロポーズ 極彩の魔女】  橘 公司/ つなこ 富士見ファンタジア文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

世界を統べる魔女の身体と力を手にした少年の、最強の初恋!

久遠崎彩禍。三○○時間に一度、滅亡の危機を迎える世界を救い続けてきた最強の魔女にして、魔術師が通う学園の長。

「――――君に、わたしの世界を託す――」

そして――玖珂無色に身体と力を引き継ぎ、死んでしまった初恋の少女。無色は彩禍の従者、烏丸黒衣から彩禍として誰にもバレないよう学園に通うことを指示されるのだが……。クラスメイトや教師にさえも恐れられ、再会した妹からは兄のことを好きという相談を受ける波瀾の生活が待ち受けていた!

「お静かに。手元が狂います。――いえ、口元が、でしょうか」
さらには油断すると男性に戻ってしまうため、女性からのキスが必要不可欠で!?

「デート・ア・ライブ」のコンビが放つ新世代最強の初恋!
大長編となった人気シリーズ【デート・ア・ライブ】を完結させた橘先生が、新たに送り出してきた新シリーズがこれ。おなじみ、イラストはつなこさん。
新しいシリーズはじめるのは久々なだけに、どうなるかとも思ったのですがそこはさすがベテランというべきか。盛り上げどころというのを把握しきっていて、この一巻の中に見所がどれだけあるか。その上でクライマックスには幾つもの予想外の展開を襲いかからせて、盛り上がる盛り上がる。
まさに怒涛の勢い。
これぞシリーズ開幕のお手本というくらい、理想的な第一巻だったんじゃないだろうか。正直、引き込まれました。現状で既にめちゃくちゃ面白く、これから広がっていくだろう物語はメチャクチャ面白そう、なのですから。
肝心要の主人公・玖珂無色は真面目にぶっ飛んでいますなあ。いや、変態とか異常者の類じゃないと思うんですよ、多少頭おかしいだけで。
デート・ア・ライブの士道はあれで基本無味無臭タイプだったんですが、それと比べると明らかに頭おかしいです。まあ橘さんの作品の主人公は基本頭おかしいので、それらと比べると大人しい部類なのでしょうけれど。ましてや、橘作品のガチの変態たちはガチの変態なので、それこそ比べるまでもありません。それと比べてしまうと大概のキャラは常識人になってしまうので、相対的に見ると無色も常識人に違いありません。
いきなり死にかけている女の人を見て一目惚れしてしまっている時点でどうかとも思いますが。
そして、自分も殺されかけた上で意識を取り戻したらその一目惚れした女性・彩禍に自分がなってしまっている、というとんでもない状況に驚く前に彩禍さんとお近づきになれた(融合してます)わーい♪ となっている時点でどうかしていると思いますが。
それだけでもとんでもない状況なのに、そこから久遠崎彩禍に成り代わり、周囲にバレないように魔術の学園の理事長になったり平均300時間に一回世界滅亡の危機が訪れているこの世界を救ったりしなければならない、という立場に追い込まれてしまった無色。
まるで知らなかった世界の現状に魔術という要素、そして突然世界守護の要として彩禍の代わりを勤めなければならない、という状況はかなり追い詰められたもののはずなんですが、無色ってわりとこれを卒なくこなしていくんですよね。普通ならパニックになって焦って周囲からどうしたんだろうと変な目で見られながら、自分の無力さに打ちひしがれて、なんていうイベントをこなしていくのがテンプレートだと思うのですが。
無色の場合、彩禍さんの代わりを見事務めたら彩禍さん喜んでくれますっ!というウキウキ感でサクサクっとこの辺軽くこなしていくの、彩禍しか眼中になくて、うんヤバいやつですね。
これで、自分のものになってしまった彩禍の身体とか自分で弄って喜んでたりしたら変態なのですが、そういう変態性は全然ないんですよね。無色くん、紳士である。究極的にお近づきになれたのに、彩禍を自分のものにしたという認識だけは絶無なわけだ。
後々、彩禍が戻ってきた時に良い印象を持ってもらえれば、くらいの控えめな立ち居振る舞いですし。その意味では、わりと傍観勢というか推しは積極的に絡まず距離をおいて愛でるべし、派なのかもしれない。その上で、よければお近づきになりたい、という気持ちもある、という体で。
そう考えると、妹の瑠璃と趣向はそっくりという事なんですよね。彩禍信者の瑠璃の、あの彩禍萌えで彩禍のことになると頭おかしくなるのに、ちょっと関われただけで大満足してるってな感じの瑠璃のあの彩禍への距離感というか態度みたいなの、まんま無色にも当てはまるんじゃないだろうか。
無色の場合はもっと達観しているというか、彩禍や黒衣が若干引いてしまったり置いてけぼりにされるほど、彩禍推し、彩禍ラブで突き抜けているのですけれど。
いずれにしても、頭おかしい方向性で無色と瑠璃って、確かに兄妹だわな。そっくりだわ!

この自分ではどうしようもない状況に放り込まれながら、振り回されるどころかわりと周囲を振り回しまくる無色。そんなマイペースにガンガン突き進む無色=彩禍の行状に魔術師養成機関<空隙の庭園>は大混乱、という学園コメディでありつつ。
世界は平均300時間に一回滅びの危機に襲われている、という「週刊世界の危機」を上回るペースでえらいことになっている世界の裏事情。それを陰ながら防いでいる魔術師という存在。
なにより、世界最強の魔女、誰も敵うことがない無敵の存在を殺したのは一体誰なのか。様々な謎が、その驚愕の真相と新たな謎を伴って怒涛の勢いで襲い来るクライマックス。
登場人物も主人公の無色をはじめ、見事に最初から個性的で色づいていてキャラ立ちしていました。
あのヤンキーみたいなやさぐれてガラ悪い兄ちゃんなのに授業内容めっちゃ真面目で堅実なアンヴィエット先生とか大好きですw と、現状唯一無色以外の男キャラだけどイイキャラしてますわー、アンヴィエット。うん、とそれ以外のヒロインたちも色んな意味で出揃ってますし……瑠璃は単純なコメディからラブコメから兄バカに彩禍信者という頭おかしいキてるキャラな上にシリアスなバトルまで全部一線級でこなしてしまうので、ちょっと万能すぎやしませんかね!?
そして、唯一彩禍=無色という秘密を知り、その傍らで彩禍の身代わりをする無色のサポートをしてくれる烏丸黒衣の見事なツッコミの数々w
うん、本当の面白かった。一巻から見事に掴んでくれました。物語の行く先として特大の爆弾を置いていってくれた一話の黒幕に、ラブコメとしては常に爆弾の導火線に着火しつづける無色くん。
これは続きが楽しみです。またぞろ、でっかいシリーズになりそうだ。