14年ぶり、3歳馬によるスプリンターズステークスを制したのは、ピクシーナイト!
新鋭たる妖精騎士が、名だたるスプリンターたちを蹴散らして見事秋の短距離王を戴冠しました。
モーリス産駒として初のG1馬。元々、シンザン記念を勝利してモーリス産駒最初の重賞馬となったのもこの馬。モーリスの初年度産駒であるピクナイですけれど、見事にモーリスの短距離適性を証明してくれる結果になりました。母父がキングヘイローということもあり、そちらの血統の影響もあるかもしれませんが。
モーリス自身、祖父にグラスワンダー。母系をメジロ党という夢ある血統でしたが、ピクナイはさらに母系がキングヘイローと母の母がサクラバクシンオー産駒という日本競馬の結晶みたいな馬なんですよね。
モーリス産駒は初年度産駒が2歳時には殆ど勝てなくて種牡馬として不安視されていましたけれど、3歳になってから伸びる馬が増えてきた中で、こうして秋口に古馬を蹴散らして短距離G1を勝つ馬を排出したというのは、種牡馬としてのモーリスの前途を明るくしてくれる結果でもありました。

それにしても、まさか3歳のこの時点でスプリンターズステークスを勝つとは。
シンザン記念を勝利したもののクラシック戦線には進まず、マイル短距離路線へと舵を切ったピクシーナイトは、しかしNHKマイルを惨敗。しかし、夏に1200のスプリント路線に進んだことで更に才能を開花。勝ちこそ拾えなかったものの、小倉のCBC賞、中京のセントウルSを連続2着と結果を残し、このスプリンターズステークスへと挑んだのでした。
とはいえ、冒頭に書いた通り、アストンマーチャン以来14年3歳馬の勝利がなかったこのレース。鞍上の福永も、この馬の将来は有望視していたものの、どうやらこの時点で勝利できるとまでは考えていなかった様子が、勝利インタビューでの驚き混じりのコメントからも伺えます。

JRA史上最強の短距離馬の一頭にあげられるロードカナロアの後継者。香港スプリントを勝利し、今年の高松宮記念も勝って父と同じ春秋短距離G1制覇を目指したダノンスマッシュ。
無敗で阪神ジュベナイルフィリーズを勝ち最優秀2歳牝馬に。桜花賞、NHKマイルを連続2着。
今年の高松宮記念ではダノンスマッシュに続いて2着に入り、前哨戦のセントウルSではピクシーナイトの猛追をクビ差抑え込んで勝った現短距離女王レステンシア。
これら現在のJRA短距離戦線の二強に加えて、
鞍上に癖馬専用・池添騎手を迎えたおてんば娘メイケイエール。
CBC賞で1:06.0という超速レコード勝ちしてピクシーナイトをこれまた2着に押し込み、続く北九州記念ではヨカヨカの2着に入って夏の小倉を駆け回ったファストフォース。
函館スプリントステークスでカレンモエをはじめとした他馬の猛追を振り切って先頭を駆け抜けた逃げ馬娘ビアンフェ。
去年の高松宮記念の膠着から長いスランプに陥っていたものの、春の特別レースの勝利から連勝、セントウルSでも3着に入って復活したクリノガウディ。
今年に入り、阪急杯3着を含めて各レースで際立った上がり3ハロンの時計を叩き出し、短距離戦線屈指の差し馬として注目を集めるジャンダルム。
去年の高松宮記念をあのグランアレグリアの追い上げをねじ伏せ勝利した稀代の逃げ馬モズスーパーフレア。
事故で引退した北九州記念勝ち馬のヨカヨカと、捻挫で参戦を回避したカレンモエ、キーンランドカップの勝ち馬三歳牝馬のレイハリアを除けば、ほぼ現役スプリンターは出揃った感のある最強を決めるに相応しい短距離王座決定戦。
これで歴戦の古馬を軒並み置き去りにする脚で完勝してみせた、現時点でこれだけの強さを見せてくれたというのは、これから将来どれだけさらに強くなるのか。ちょっとすごい馬になってくれそうだなあ。

ダノンスマッシュはまったく良いところなく終わってしまいました。逃げ先行不利の傾向にあるスプリントステークスで、他にも不安要素が幾つもあったレシステンシアに比べて、万全の態勢、データ的にも確勝傾向。唯一外枠というのが不安材料か、ってくらいだったのですが。
全く見所なく6着で終わってしまったのはちと情けない。昔からG1になると途端に不甲斐なくなってしまう馬でしたけれど、今年は違うぞという所を見せてくれていただけに、元の木阿弥になってしまったなあ。前走の香港G1で圧倒的一番人気になったにも関わらず、理由らしい理由が見当たらない凡走はむしろフラグだったのか。

このレース、別の意味で注目されていたのが、勝ったチューリップ賞を含めて3戦連続で鞍上の騎手の言うことを聞かずに、レースがはじまると頭真っ白になったみたいに暴走して先頭に立ち、そのまま力尽きてズルズルと負けてしまうというレースを続けてしまっていたメイケイエール。
おてんば娘を通り越して暴走特急と化していたんですよね。調教再審査まで受けるはめになった、武豊も横山典も御しきれなかった迷牝。それがメイケイエールでした。
でも、暴走しながら勝ってしまったチューリップ賞のように、能力はずば抜けているというのは衆目一致するところ。
そんな彼女の能力を発揮させるために抜擢されたのが……スイープトウショウ、オルフェーブル、ドリームジャーニーといった稀代の癖馬たちの相棒を務めてきた池添謙一騎手。気性難は池添に任せろ! という選択だったのか、メイケイエールの鞍上を任させた池添騎手でしたが……。
……池添、マジで凄いぞ。メイケイエールが普通に折り合ってる!?
メイケイエールが暴走しないことに各所がどよめくことに。
そして大人しくしたまま、馬群に消えるのではなく、直線でしっかりと伸びてきて4着に入ったのでありました。これまで、言うことを聞かずにひたすら全力で走ってしまうことから、距離の短い1200を使いましたけれど、メイケイエールって適性距離はスプリンターともイイ切れないと思うんですよね。それで3歳牝馬で古馬混合のG14着に入るというのは、この馬が決して評判ばかりが先に立ってしまっている馬じゃない事を証明してくれたんじゃあないでしょうか。
池添とのコンビで、今後色々と期待も膨らみます。


追記:どうやらレース直後にメイケイエール、ハミ受けしないで……ハミという騎手からの指示を受け取る馬具をちゃんと噛まないで外に斜行して他馬を妨害してしまっていたらしく、やっぱり暴れてはいたようです。再審査まではならなかったみたいですけど。
その後、池添ジョッキーよく抑え込んだというべきか。やっぱり難しい馬ですなあ。それでも、ちょっとずつでもマシになっているのでしょうけれど。