【クロの戦記 7 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです】  サイトウアユム/むつみまさと HJ文庫

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南辺境での蛮族討伐編、開幕!!
ちょっと過激な王道戦記、美女を引き連れ、いざ帰郷!!

タウルからの依頼で南辺境へと向かったクロノ。久々の帰郷に感慨を覚えつつ部下と蛮族討伐の準備を進めていたクロノだったが、何故か駐屯軍と自警団が対立し、一触即発の事態に。
クロノは蛮族討伐前に味方の仲裁に入ることになって―― さらに、ここにきてクロノとフェイの仲が急接近!?

「さて、フェイに背中を流してもらおうかな」

第二の故郷である南辺境を舞台に、クロノは新たな戦いと美少女に挑む!! エロティック王道戦記、蛮族討伐編開幕の第7弾!!
うおお、腹筋バキバキだ。
さすが、騎兵として鍛えまくって脳まで筋肉と化した三下系女騎士である。こういう色気の欠片もない子もいける口、というのクロノってストライクゾーンが広いとうより見境いないですよねえ。
さて、久々に名目上とはいえ故郷の南辺境へと帰ってきたクロノ。クロノの素性と、どうしてクロフォード家の嫡男となったのかの事情が語られたのって、はじめてだったっけ。
クロフォード男爵のおっちゃんとは血は繋がっていないし、異世界から迷い込んできてクロフォード家に拾われてから、ここに居たのは一年だけだったのか。
でも、養父とはそれこそ本当の親子のように絆があるんですよね。それは、養父にとっては死する妻の無念を救ってくれた恩であるし、恩という以上にあのクロノの義母への言葉は本当の家族であるからこそ出た思いやりの言葉であり、愛情が吐き出させた嘘だったんですよね。
ならば、もうクロフォード男爵にとってクロノは恩人である以上に、かけがえのない息子になっていたのだろう。この二人、面白いほどに他人行儀さがないんですよね。遠慮もなんにもないし、臆面のなさはよく似ている。知らない人が見たら、親子以外のなにものでもないでしょう。
実際、クロノの方ももう心の根っこの部分で、義父のことを実の父と変わらないように思っているし、もう元の世界の家族の面影や思いは薄れてすらいるのですから。
名実ともに、クロフォード男爵の息子として、この世界に骨を埋めるつもりでいる。今は、さらに叙爵され自分の領地をもらい、部下も愛人も居る身の上。守るものは随分と増えた。でも、クロノにとっては南辺境こそが故郷なのだろう。

さて、帰郷の目的でもあるタウル将軍の息子であるガウルとの交渉は、元々クロノの事を尊敬する父親がやたら評価することからも面白く思っていなかったところもあり、さらに武勲を求めて視野狭窄に陥っている節もあったので、随分と面倒くさいことになる……と、読んでいるこっちもクロノの方も思っていたのですが。
なんなら、ガウル自身も派遣されてきたクロノに対して同じようなことを思っていたはずなのですが……。
いや、面白いことにこの二人、実際に会って話してみるとお互いに身構えた部分が全部肩透かしになってしまって、あれこいつ、思ってたのと全然違うぞ? となってるんですよね。
以前のベティス隊長なんかもそうでしたけれど、事前に色々と聞いていて思い巡らせていた人物像と、実際に会って話してみた際の相手の姿って、結構違っていたりするんですよね。
いや、聞き及んでいる様々な話が間違っているわけじゃなく、それはそれで正しい情報なんですよ。ベティス隊長にしてもガウルにしても、クロノの耳に届いていたネガティブな情報、こいつろくでもない人間なんじゃないだろうか、と思っても仕方ないような悪質さ、短慮さ、俗物さ、視野の狭さ、というのは一面として間違いじゃないんですよ。
ただ、決して人間というのは悪い部分だけじゃない。ある側面から見ると悪い部分でも、違う方向から見るとむしろ長所だったり、好感を持ててしまう要素だったりもする。
クロノだって、悪い評判だけ見ていたら、そりゃあとんでもないろくでなしだし、邪悪な行いを幾つもしているヤバい人間なんですけれど、その中身はというと素朴で善良で人を見捨てられないいい意味での小心者であり、勇気の塊みたいな人物である。そういう人の善し悪しって、まあ相性もありますし、実際会ってみないとわかんない部分があるんですよね。
クロノとガウルの面会も、むしろ相手の悪い面ばかり話に聞いていたからか、まともな面、理知的で感情任せじゃない論理的な面、部下の扱い方や人の意見をちゃんと聞くところ。悪いと思えば、相手が誰だろうとどんな身分だろうとちゃんと謝罪できる誠実さ、など良い面が目立って目についてた節があるんですよね。
その直前に、セシルという感情任せで差別的で人格的にひん曲がってる人物と遭遇した、というのもあるのでしょうけれど。クロノにしてもガウルにしても、話してみるとちゃんと道理は通じるし、相手の意見も聞いた上で配慮もしてくれる。反対意見や問題提起にしても一方的に押し付けてくるものではなく、ちゃんと論理的に納得できる内容である上にちゃんと自分の意見も聞いた上での考慮もある。ちゃんと話が通じる相手、ってそれだけで相手のこと見直しちゃう部分あるんですよねえ。

別に魂に訴えかけるような特別な説得とか、相手の目を覚まさせる鋭い一言、なんて大仰な展開、会談なんてなく、本当にただ事務的に顔合わせして打ち合わせして、礼儀に則って応対しただけなのに、クロノもガウルもお互いの印象一変させて、好感どころか信頼感すら芽生えさせていたのは、なんか面白かったなあ。
人間関係って、やたらこんがらがって難しいこともあるけれど、こんな風にえらく簡単にうまくいくこともある、というのがそれだけでもなんか面白い。
それだけ、人間って単純じゃないんですよね。いろんな側面があって、色んな噛み合い方もある。ベティス隊長の最初小悪党の俗物に見えたけれど、中間管理職の苦労を背負いながらちゃんと責任背負ってクロノを含めて立場の弱い人達にもちゃんと心配りしてくれるキャラクターとか、今となってはすごく好きなキャラクターなんですけれど、本作はこんな風に自分の中の悪の部分、人としての弱い部分に振り回されながらも、それに負けずに自分を保とうとする人、責任を果たそうとする人、そういう弱さに負けてしまう人、そんな色んな人物像が見られるのが好ましいんですよねえ。好きだなあ、と思える部分。
主人公のクロノこそ、その代表的な人物なんですよねえ。
据え膳食わぬは男の恥、とばかりに食べられるだけ食べてしまう頭の悪いワンコみたいな性欲も含めて。


しかし、女将ことシェーラの素性もウェブ版だとここまで詳しく描いてましたっけか。彼女が辺境とはいえ貴族の出とは、全然記憶になかったのですが。ましてや、家族とか。
シェーラを愛人にしてるのって、思いの外後々政治的な意味合いが出てくるんじゃないだろうか、これ。