【悪役一家の奥方、死に戻りして心を入れ替える。1】  丘野 優/TEDDY エンターブレイン

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

「心を入れ替えて生き直そう」ーーそして始まる貴婦人無双!!!

国家転覆を企てるほど悪逆を尽くした公爵夫人エレインは自らの娘によって命を奪われた。
死の間際、大罪を後悔するも時すでに遅し。公爵家は滅び、その悪名は時間と共に忘れられるはずだったーーしかし、気がつけばエレインは出産中で!? なんと長男を出産した30年前に時間が巻き戻っていたのだ。
嘘と暴虐に塗れた人生を改めるため、
我が子に親殺しをさせないため、
前世の経験と知識を総動員したエレインの快進撃が始まる!!
人妻! 主人公、夫のある人妻である。しかも子持ち! 奥様、子持ちの人妻にも関わらず、そのボディスーツはちょっと攻めすぎじゃないでしょうか、大変結構!
国家転覆企てて王家に反逆したけれども大失敗したので、死に戻った今回はもっと上手くやろう。じゃなくて、反省して後悔して今度はもっと穏やかに家族を愛して生きよう、となるのか。
いや、わりと盛大に心変わりしすぎじゃないだろうか。かなりの悪逆非道で政敵を排し、障害となる者たちを謀略で抹殺し、と相当な悪役ムーブを貫いた人生を送っているにも関わらず、今際の際にまるで憑き物が取れたかのようにそうした自分の人生を悔いているんですよね。
それだけ、自分の娘に親殺しをさせてしまった事がショックだったのか。それとも本当にナニカに憑かれていたのか。
新たな人生でも、エレインは大逆罪の自分を討ち果たす役目を負わされた末娘リリィに殺されないようにと、史上に残る天才大魔導師だったリリィに対抗できるようにと、未来の技術と経験を生かして自分を鍛え上げていくのです。……いや、これ真っ当に生きてたら普通娘と殺し合いにはならないんじゃないだろうか。何気に、いつか殺し合いになるかもしれない、という前提がエレインのどこかにあるみたいなのですけど。
なにか、運命の収束みたいなものがあると感じ取っているのだろうか。
でも、死に戻ったエレインの行動によって歴史は前回から大幅に変わっていってるんですよね。本来なら死んでいるはずの人が生きていたり、敵対していた者同士が仲良くなっていたり、エレイン自身も前回は疎遠だったり敵対することになった相手と交友を持つことになったり、と。
今の所、そこに改変された歴史の揺り戻しみたいなものは見えないのだけれど、エレインは油断せずに自身の研鑽を怠らないし、魔導具の開発や事業の拡大など周りの環境の強化に勤しみ続けるのである。
……全然、大人しくなってないどころか別の意味で突っ走りまくっている気がするんだが、二度目の人生。
ただエレイン自身、二度目の人生を見ていると冷静で他人の心情も察することの出来る深い人格の持ち主で、情にも厚く何より家族への愛情に満ち溢れた人物なんですよね。野心家だったり権力志向だったり、という素振りもなく、なんで前回の人生ではあんな大逆罪に走り、家族をも利用して、他人を陥れることも厭わない人物になったのか、ちょっとわからないんですよね。
前回も家族への愛情は変わらなかったけれど、その愛情の扱い方を取り違えてた、とはエレイン自身が自戒しているところだけれど。
だいたい、彼女の周りに居た人達。友人知人、旦那の交友関係やファーレンス公爵家の臣下たちなど、有能である以上にまず人格者であり、心からエレインの事を心配してくれるような人達ばかりなんですよね。
特に親友のセリーヌなんかは、エレインの暴走を案じて彼女の野心の最大の障害として立ちふさがりながらも、最期まで親友としてエレインを諌め彼女を止めようとしてくれたほどの人で。
エレイン当人も旦那のクレマンも、周りの人達もこんなにマトモなのに、本当になんでエレインが大逆を犯すに至ったのか、そんな野心を抱くに至ったのかわからないんですよね。
エレイン当人が、なんであんな事をしてしまったんだろう、と考えているくらいですから、ちょっと異常ですらある。これって、何か外的な要因があったんだろうか。それこそ洗脳とか思考誘導とか、何者かの意思に取り憑かれたとか。
だからこそ、エレインも無意識に警戒か危惧が残っていて、この二度目の周回で自身を含めた周囲の強化に勤しんでいるとか。未来予知能力者であるセリーヌに、死に戻りや前回の自分の所業なんかを打ち明けているのも、セリーヌが誰よりも信頼できる人物だからというだけでなく、自分以外の外の視点があった方が良い、という考えもありそうですし。
幾らなんでも、娘リリィに殺されないように、というだけでは頑張りすぎなんですよね、エレイン。
……いや、単に社畜気質というか、働き出すと止まらないタイプ、という可能性もあるのですが。
なんやかんや、働きすぎで家庭を疎かにしだして、ついに旦那のクレマンにちょっと君まとまった休み取りましょうよ、と強引に長期休暇とらされたくらいですしね。まだ幼い長男もほったらかし気味でしたし……だいたい、まだあと三人子供産む予定なのにこの奥さん、働きすぎで家帰ってこないものだから子作りとか全然してないじゃん! 大丈夫!? 予定通り二男二女産めるの? そもそも末娘のリリィはちゃんと生まれてきてくれるの!?
奥さんとラブラブのはずだし実際ラブラブなんだけれど、なんでかあんまり構ってもらえない旦那さんがちょっと不憫である。まあ、前回の人生ではお互い愛し合っているにも関わらずだいぶすれ違ってしまって、ちゃんと表立って愛情を向けて貰えなかったらしいので、それに比べれば大変仲睦まじい夫婦関係になっているはずなんですけど、旦那としてはもうちょっとイチャイチャしたいだろうなあ、これ。
ただ、結婚当初から長男出産まではなんでかエレインはやさぐれていたらしく、前回の人生ではどうやらそのあたりから夫婦関係すれ違ったまま、エレインの野心の暴走がはじまってしまったみたいなんだけれど、なんでエレインがやさぐれていたかについてはなんかエレイン語ってくれないんですよね。
しきりと、その頃のことは反省しているにも関わらず。いったい、彼女に何があったんだろう。どうやらそこが重要なポイントの一つではあるみたいなんだけれど。

ともあれ、前回の色々と踏み外してしまった人生を後悔して、新しい人生ではできるだけ周辺との関係を良好に保ちながら、特に権力など求めず、でもわりとガンガンと自分と公爵家の強化に勤しみ続けるエレインの快進撃。かつての人生では袂を分かった人々ともより親交を厚くしながら、大体においてWin-Winの形で進んでいくので、実に痛快な物語となっている。
果たして、今のエレインに立ち塞がることの出来るナニカは存在するのだろうか。
珍しい子持ち人妻主人公でありましたが、なかなかに派手に立ち回ってくれる面白い作品でありました。続きが楽しみ♪