【魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青 1】  ツクモイスオ/三田誠 BLADEコミックス

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これは、世界に色彩をもたらす為の物語。

舞台は仏国、巴里。
孤児であり外国人である少年・青の元に現れたのは、“影の茨"と並び立つ力を持つヒト為らざる魔法使い。
その身に秘めた力を見初められ、『妻』として娶られた少年は、世界における様々な色を識ってゆく――。




【魔法使いの嫁 詩篇.108 魔術師の青 2】  ツクモイスオ/三田誠 BLADEコミックス

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色を従え、色を揮え。全ては、私を殺す為に。

突然娶られ、地上での生活が始まり混乱する青。
しかし、ジゼルに助けられながら自らの力を理解していく中で、
意志の力が芽吹き始める。自身の名を冠する色を配下に置き、
人として生き始めた中で青は、不思議な男・アルベールに出会う。
飄々とした態度で人助けを行う彼に好感を持つ青であったが――……。

ヤマザキコレ先生の【魔法使いの嫁】と同じ世界観の中で描かれるもう一つの物語。そのスピンオフは人外×少年。その脚本を手掛けるのは【レンタルマギカ】や【ロード・エルメロイII世の事件簿】という魔術師たちの物語を描き続ける三田誠さん、とくればまず読まずにはいられません。
三田さんというと、古今の魔術大系を描かせればその深奥を垣間見せ、魔に魅入られ傾倒する魔術師という人種の異質さを見せつけてくれる作家さんであると同時に、そんな人からハズレていくはずの魔術師という人々のどうしようもないくらい人らしさ、どれほど踏み外しても彼らは心を持つ人間である、という人間性をこの上なく描き出してくれる人なんですよね。

魔法使いの嫁、の世界においても魔術師は人から外れるほどに誉れとされる。姿形が異形と化すことこそが尊ばれる。そしてそもそも生まれからして人ならざる人外たちは、魔の深奥に佇む尊き存在だ。そんな人外の魔法使い、ジゼルと巡り合い望まれ夫となった孤児のアオ。本来魔術的契約に過ぎない結婚の儀式によって結ばれた二人は、しかし少年アオの純粋さゆえに人と人として、向き合うことになっていく。人ならざる者であるはずのジゼルが、アオの直向きなまっすぐさにただ一人の人としての自分を突きつけられていくのである。
アオくん、かなりしんどい幼少期を送ってきて、さらに異邦人の孤児として疎まれ虐げられてきたにも関わらず、どうしてこうまで裏表なく素直で淀みなく育ったのか不思議なくらいイイ子なんですよね。
でも、それはどこか没頭の狂気が根底にあるような、画家としてのそれも資質か。真っ白なキャンバスに色を塗り込める絵師の自身に色があってはならぬ、と言わんばかりのフラットさ。
でも他人の心を受け止め絵にできる豊かな感受性もあり、決して空虚ではない。その直向きさは、一生懸命さは空っぽとは真逆ですらある。
そんな彼が、本当に裏表なくジゼルの姿形も生き方もあり方も、素直に褒めるんですよね。彼女のことを綺麗だと言ってはばからない。心から美しいと思って、それを言葉にすることをためらわない。だって彼にとってそれは自明のことだから。
でも、ジゼルからするとそれってかなりの殺し文句なもんだから、ひっきりなしにグサグサとクリティカルに刺さってしまう。惹かれてしまう、心を縫い留められてしまう。かなり早い段階で、アオに対して夢中になってますよね、この魔法使い。でも自覚はないんだろうなあ、どうにも彼女はずっと終わることばかりを考えて生きてきたようだから。
本作は人外×少年という以前に年上の女性と幼気な少年という構図にもなっているものだから、そういう年の差関係特有のあれこれがあるかと思っていたんですよね。ほら、お姉さんキャラが小さな男の子をからかって少年の方が顔を赤くしながらお姉さんの自由さに振り回されてしまうみたいな。
でも実際は逆だ、逆じゃないですか。ジゼルの方が余裕ぶった姉めいた振る舞いでアオを翻弄するのかと思ったら、むしろアオの方がジゼルを翻弄しているのである。
アオのその本質を見る目で捉えたものを率直に口にするところが炸裂してしまっていて、概ねジゼルのことをナチュラルに褒め口説く様相になってるんですよね。アオは思ってることを口にしているだけで口説いてるつもりなんか毛頭ないんだろうけれど、完全にこれ口説いてますって。
おかげでジゼルの方が照れ照れして狼狽しているわけです。威厳を保とうとしながら顔を赤らめているところなど、微笑ましい限りで。そういうところ、普通に可愛らしい女の人、になってるんですよね。
こういう繊細な表情を、しっかり描いてくれている漫画家さんがまた素晴らしい。明らかに人外の容姿、そもそも顔の作りからして獣のそれで人間の女性の美人とは程遠い造作にも関わらず、ジゼルって確かにすっごい美人だと感じるんですよ。めちゃくちゃキレイな女の人、となんでかひと目で見てわかる。
それにパンツルックはやたらとシュッとしてカッコいいし、中華服なんかこれはこれでやたらと色気とスタイリッシュさがあってカッコいい美人になってるし。
アクションもメリハリあって動きが力強く、面白い。これは良い絵師さんとのコンビによるスピンオフになったなあ。

欧州は巴里を舞台とした物語ではあるものの、巴里にある魔術師たちの共同体はルーン魔術の騎士団、エジプト魔術のウジャト図書館、そして中華に源流がある四象會という組織によって形成されている。これだけ多種多様の魔術大系が話に中枢を担っているのは、さすが三田さんというべきで、物語としてもそれぞれの魔術大系がしっかりと存在感を示していて、見える景色が多彩ですごく面白いんですよね。
ジゼルとアオの夫婦という関係にも、アルベールというジゼルの前の弟子にして妻だった男の登場によってグイグイと踏み込むきっかけが出てきましたし、これは本編の【魔法使いの嫁】に負けず劣らず惹かれるシリーズになりそうです。