【未実装のラスボス達が仲間になりました。】  ながワサビ64/かわく エンターブレイン

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新型VRMMO“eternity”の第2陣テスターとして選ばれた修太郎。ランダムスキルで“ダンジョン生成”を得た彼は、さっそくスキル発動する―時同じく、mother AIの暴走によりプレイヤー達はゲーム内に閉じ込められ、ゲームの死=現実の死、となるデスゲーム世界になってしまった。デスゲーム開始と同時にスキルを発動した修太郎は、座標バグにより実装予定の最終エリア“ロス・マオラ城”にいた。そこにいたのは、世界を統べる予定だった六人の魔王。スキルによって魔王並みに強いスライムを誕生させたり、モンスターの城下町を楽しく発展させたりする修太郎に、六人の魔王たちは徐々に惹かれていく。そうして魔王たちの加護を得た修太郎は、当初の目的である冒険を始めようと始まりの街に戻るのだけれど―。魔王達と楽しくデスゲーム世界を切り拓く、ある少年の成長冒険譚開幕!7話+書き下ろし「死族の魔王」。
未実装って、まだ実装していない待機状態なのか、それとも実装する予定がないままお蔵入りしていたのか、どっちなんだろう。
いずれにしても、固有の意識があるにも関わらず、ラストダンジョンに閉じ込められたままだった、というのは牢獄みたいなもんですよね。
でも、ラスボスが6人もいるというのはどうなんだろう。というか、ラスボスって比喩なだけで別にゲームのトリを飾るボスキャラではないみたいだけれど。強いて言うなら裏ボス? 或いは野生の野良ラスボス。そういうのって、自分の世代だとまず「神竜」と「オメガ」のイメージになってしまうのですが。
ともあれ、そんな彼ら魔王たちを眷属にしてしまった修太郎くん。彼の情報、ほとんどないまま話が進みだしてしまったのでわからなかったのですが、彼って中学生らしいのだけれどどうも中学生は中学生でも成り立て。まだ一学期かくらいのちょっと前まで小学生だった年齢みたいなんですよね。
どうにも言動が幼いというか純朴というか。最近のこの界隈の小説は、小学生だろうと幼稚園児くらいの年齢だろうと関係なく大人仕様の言動をするのが普通みたいになっているので、普通の小学生ってどんなだっただろう、とわかんなくなってるのですが、だいたいこのくらいの年齢の子供というと、同時にあれこれと並列的に考える事よりも取り敢えず目の前のことに夢中になっちゃいますよね。
修太郎くんも、最初はデスゲームがはじまってしまった事に怯えていたものの、次にわけのわからない魔王たちを眷属にしてしまって途方に暮れて、次に色々と与えられてしまった報酬やスキルを使ってあれこれ試してみることに夢中になって、と取り敢えず目の前のことに頭がいっぱいになってしまうところや、ラスボスたち相手にも不器用に仲良くなろうとするところなど、微笑ましい子供っぽさが随所に見られて、なんだかほっこりしてしまいました。
絶対戦力とも言えるラスボスたちを眷属にしたことで、如何用にも彼らを利用して利益を得たり、名声を掴んだり、果ては好き勝手なんでもすることが出来るだろうに、そういう恣意的な発想がそもそも生まれずに、街づくりなどゲーム的な要素を夢中になって遊んで……本人感覚ではこれゲームで遊んでる感覚なんだろうな。まあそういう姿は純粋に楽しそうで、ラスボスたちもあんまり不埒なことは考えてなくてなんだかんだと修太郎に従う気満々なので、随分と平和な空気感になっている。
こちらは、死者の女王たるバンピーが実質ヒロイン的な立ち位置なのかしら。

一方で、他の一般プレイヤーたちはというと、こちらはこちらで真面目に純粋にデスゲームに巻き込まれ阿鼻叫喚の真っ最中。いや、なんか随分真っ当にデスゲームに立ち向かってるなー、と逆に感心してしまった。これだけ真面目にデスゲームしてくれると、運営の方もやった甲斐あったんじゃないだろうか。
有力ギルドのリーダーから、巻き込まれたプレイヤーたち全体のまとめ役として立ち上がったワタルを中心に、なんとか生き残り戦略を建てていくプレイヤーたち。
でも、一致団結して対処しようという姿勢に背を向けて、個々に先のフィールドに進んでいってしまうプレイヤーたちもいれば、戦闘に参加せずに引きこもるプレイヤーもあり、とまあ案の定立ち位置からなどの揉め事が増えていってしまうわけだ。
それでも、最初からほぼ滅私奉公的にプレイヤー全体を助け生き残らせようというワタルを中心としたギルドの献身的な働きは、なんとかセーフティーネットとして機能して、士気の瓦解、パニックの拡大を防ぐことに成功してるんですよね。これは控えめに言ってもよくやったよなあ、と感心してしまいます。
それでも、体制が安定する前に安全フィールドのはずの街自体を崩壊に追い込むイベントを早々に盛り込んでくるあたり、運営の殺意相当高いんじゃないだろうか、これ。
これ、修太郎君というイレギュラーがなかったら、かなり高い可能性でギルドの首脳部壊滅していたわけですから、早々に安全なはずのフィールドがなくなり、プレイヤーたち壊滅状態に陥って一部の戦闘職しか生き残れなかったんじゃないだろうか。
この運営、ゲームバランスとか考えてないな、さてはw

ゲーム初心者ながら、今回のイベントの攻略の鍵となったミサキの、無力でありながらみんなの為に戦おうとする意思が、修太郎との出会いを生んで壊滅の危機を救ったように、あっちこっちで一人ひとりが生き残るために必死に戦う様子が描かれている、あとがきでも書いていたけれど群像劇なんですねえ、これって。
でも、修太郎以外のプレイヤーってほんとにギリギリで必死に戦っているので、空気としては悲壮感すら漂う切羽詰まったものなわけです。
修太郎サイドのあの修太郎の気質も相まってほのぼのとしているのんびりとした平和な空気感とは、寒暖差がありすぎるんですけれど、これって修太郎の戦力が極まりすぎてて彼が手助けしたらあっという間にデスゲーム崩壊してしまうんですよね。何気にこっちもゲームバランスがヤバいことになっているのだけれど、果たして修太郎サイドと一般プレイヤーサイド、どう絡めていくんだろう。
あんまり修太郎が前に出てきてしまうと、ほんとにバランス崩れてしまいますし。そのあたりのお話の進め方は気になるところですねえ。