【軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜】  冬瀬/タムラ ヨウ 一迅社ノベルス

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貴族、令嬢たちとの華麗な学園生活でありますか!?
潜入 護衛 破滅回避
舞台はバトルファンタジー強めの乙女ゲーム!? チート軍人ラゼの異世界転生ラブコメ!


前世の記憶を駆使し、15歳にしてシアン皇国のエリート軍人として名を馳せるラゼ。
上司である鬼畜宰相閣下に命じられた次なる任務は、
セントリオール皇立魔法学園に生徒として潜入し、
お偉い様のご子息ご子女の未来を見守ること⁉
軍での生活とは一変、ご子息ご息女とのキラキラな学園生活に戸惑いながらもなじんでいくラゼだが、
突然友人のカーナが、「ここは乙女ゲームの世界、そして自分は悪役令嬢」と言い出した!
しかも、最悪のシナリオを回避しなければ、ラゼももろとも破滅する!?
その日からラゼは陰に日向に? イベントを攻略していくが、次々とゲームにはない未知のフラグが発生して――!?

前世知識と軍人として培った技能をフル活用して、このミッションを必ず成功してみせる!

【フルメタル・パニック】などに代表されるように、それまで普通の子供の平和な生活に縁のなかった物心ついたときから軍人や傭兵として生きてきた子が、突然普通の学生として学校に通うことになる、というストーリーの作品は往々にして、普通の学生生活に馴染めない主人公が常識はずれの突拍子もない行動を起こして、周りを混乱の渦に叩き落とすドタバタコメディになるのが定番といえば定番でしょう。
ましてやラゼが通う事になったセントリオール皇立魔法学園は王族や貴族の子女が通う選ばれしもののための学校。そこに平民のしかも成績優秀の特待生として過ごすことになるのですから、果たしてどんなシッチャカメッチャカなことになるのか、と色んな意味でドキドキしていたのですが……。

……このラゼって娘、めちゃくちゃ優秀じゃないか!
いやもちろん、ラゼも幼少時からずっと軍で生きてきただけに、周りに同世代の子供もおらず、そもそもこんな沢山の同じ年くらいの子供達と過ごすことじたいが初めてだから、戸惑いっぱなしではあるんですけれど、あくまで突然貴族の学校に通うことになった優秀な平民が、慣れない環境に戸惑っている、という範疇に収まってるんですよね。
幼い頃、戦乱と魔物の大量発生によって両親と幼い弟を喪ったときから、志願して軍に入りそれからずっと軍人として生きてきたラゼ。個人の能力のみならず、指揮官としての才覚も開花させ、わずか15歳で魔物討伐数で軍のエースオブエースとして名をあげ、国内有数の特殊部隊の隊長として戦果武功をあげまくっているエリート軍人。というと、軍の世界、戦うことしか知らない娘になってそうなのですけれど、元々転生者として前世の記憶を持っていることと、謀略畑にも足を突っ込んでいて社会の中に一般人として紛れ込む訓練も受けているものだから、容易にボロは出さないんですよ。
その優秀さ故に、どうしてもこの特待生すげえ! という形で文武で目立ってしまってはいるんですけれど、あくまで特待生として凄い! であって、そこに彼女の軍人としての正体がバレるような、それを連想させるような言動は一切見せていないので、少なくとも現状では彼女の正体に疑念を抱いているような人物は存在していない。
これ、潜入と護衛という任務からすると、相当に優秀なんじゃないだろうか。
もっとも、宰相や学園の理事長である王弟陛下など、ラゼに任務を与えた大人たちの思惑は純粋にラゼに年相応の平和な生活を送らせてあげたい、という好意であって、任務はあくまでお題目なんですよね。
ラゼの優秀さ故に、どうしても彼女のことを便利使いしてしまっていたけれど、彼女がまだ本来なら自分たちの子供達と同じく友人たちと学校に通っているような子供である、というのを彼らは忘れていなかったし、まだ幼かった彼女を軍に採用した人達も含めて、みんなずっと罪悪感を抱えていたんだなあ、と。
ラゼはあくまで、なにか裏の思惑があるんじゃ、とえらく曖昧な任務内容を勘ぐっていますけれど。
でも一方で、任務にかこつけてせっかくの機会だから、ちゃんと学生生活楽しんじゃおう、という柔軟な考え方も出来るんですよね、この娘って。もちろん、軍人として任務を忘れていないのですけれど、そうやってスイッチのオンオフをちゃんと出来るのも、ラゼの優れているところなんですよね。
そもそも、ラゼの頭の良さとか入学試験でトップの成績叩き出したのって、前世の記憶があるからとか全然関係ないんだよなあ。自己評価あんまり高くないけれど、チートとかじゃなくシンプルにラゼ本人が優秀極まりないんですよねえ。15歳で中佐にまで出世したのって、絶対彼女の素の能力ですし。
ともあれ、ラゼがちゃんと同い年のクラスメイトたちと仲良くなり、年頃の女の子らしくキャッキャウフフとはしゃいでいたり、興味ある生物学の学術研究にハマっていったり、と宰相たちの思惑通りにちゃんとキャンパスライフを楽しんでいる様子にはほっこりしてしまいました。
一方で軍人としての本分も忘れず、自分の任務の範疇と思い込んでいる国の有力者の子女たちの動向をきちんとチェックしつつ、仲良くなった公爵令嬢のカーナ(この娘もメチャクチャいい子なんだ)が自分と同じ転生者だと知ると同時に、この世界が乙女ゲームの世界だと知ったことから、悪役令嬢役となってるカーナの破滅を防ぐため、同じく友達となったこのゲーム世界のメインヒロインであるフォリアもちゃんと幸せになれるように、乙女ゲームのシナリオを覆すために駆け回り始めるのである。友達のため、将来国を支えることになる彼女たちの破滅が、国家の危機につながるからこそ、国防のために。
こっそりと次々起こるトラブルを解決して回るラゼの姿は、さながら影のヒーローという感じでこれはこれでカッコいいんですよ。
ラゼ当人はとても常識的で、ヒロインたちの悩みを聞く相談役にもなっているし、いざというときはささっと動いてスマートにトラブル片付けるし、堅苦しくなく柔軟に物事に対処するので、見ていて安定感が半端なくて安心感があるんですよね。それでいて、愛嬌たっぷりの年頃の女の子としての顔も失いませんし、上司の息子の顔色伺ったりと俗っぽさもあり、自然体のその物腰は可愛げもあってマスコット的なところもありますし、その有り余る才覚を発揮する姿は痛快ですらあり、とかく見ていて楽しい娘でもあるんですよね。
こういう主人公は、魅力タップリでほんと好きですわー。
これは早く続きが読みたくなる作品でした。面白かった!!