【乙女ゲームのハードモードで生きています 1】  赤野 用介/芝石 ひらめ 星海社FICTIONS

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西暦3737年ーー星間国家を誕生させた人類は、宇宙を舞台に4つの勢力に分かれていた。

ディーテ王国・王立魔法学院の生徒である男爵家令息ハルト・ヒイラギは、祖父の家でプレイした1700年前の日本の乙女ゲーム『銀河の王子様』と今の現実世界が酷似していることに気付く。

乙女ゲームと現実との繋がりを確かめるために、公爵家が未来に起こす事件に介入したハルトは、9万を超える破格の魔力値を得てしまう。

魔力値の高さが星間国家の国防能力に直結し、貴族階級をも決定づけるがゆえに起こる「貴族政治の陰謀」と「星間戦争による首星壊滅ルート」を避けるため、ハルトは魔法学院(乙女ゲームの舞台)から抜けだし、王国軍士官学校へ入学する。

だがそこでハルトを待ち受けていたのは、本来であれば魔法学院にいるはずの3人の貴族令嬢(ヒロイン)だったーー

乙女ゲームの知識で、貴族政治と宇宙戦争に勝利せよ!
ゲーム世界に転生、とかじゃなくて現地主人公のはずなんだけど、このハルトくん完全に人生ゲーム感覚ですよね、というくらいなんかゲーム実況でもしているみたいに、どこか第三者的感覚で物事や他人を見ているように見えます。
それは、いわゆるヒロインであるところの侯爵令嬢フィリーネ、メインヒロイン枠のユーナ、そしてメインヒロインの友人枠のコレットの三人に対してもどこか同じなんですよね。
彼女たちに対して果たして情はあるのだろうか。まあ情くらいは感じているんだろうけれど、どこかゲームのヒロインだから、という目線は常にあるような気がします。
そもそも、これ乙女ゲームなんですよね? どう見ても普通にギャルゲーみたいに見えるんですが。乙女ゲームってのは確か主人公である女の子がイケメンたちを攻略していくゲームのはずなのですが、面白いくらいきっぱりさっぱりとそのイケメンたち登場すらしませんからね。
そもそも、ゲームの舞台となる魔法学院に通わずに士官学校の方に進学してそこにヒロインたちがついてきてしまったのですから、そりゃ登場もなにもないでしょうけれど。
しかしてハルトは自分の出世と地位の安定と戦争敗北による破滅回避のために、ゲーム知識を利用してのし上がっていくのである。おまけに、悪役令嬢とその一家が仕掛けていた企みを逆に則って、魔力を横取りした結果、国家的戦略兵器として遇されるようになった、というだけでまあまあ将来の優位は勝ち取ったようなものだったのですが、ただ個人の力が強いだけだとイイように利用されるだけだと考えて、経済的バックグラウンドと政治的後ろ盾を求めるのですが、その一貫として外道妹との当主争いをしている侯爵令嬢フィリーネと、お互いに利益となる婚約話を結ぶわけだ。
完全に個人で政略結婚仕掛けてますなあ。
そこで恋愛感情が生まれるならそれはそれで王道のラブストーリーになるのでしょうけれど、フィリーネとの間で将来の主導権争いをしている時点で、愛情らしきものはそこには存在していないんですよね。ゲーム知識を生かして国家の戦略的重要物資の供給を握って経済的主導権を握ったハルトが完全に上から殴る形でフィリーネから主導権を握って、ぐぬぬさせる様子は自分が侯爵家に利用さず囲われて自由を失うのを嫌ったから、とは言えまあなんともはや。
ただ、フィリーネとハルトの場合そうやって駆け引きやっているのも恋愛のうちなのかもしれませんが。少なくともお互いに嫌いとか無関心ではないようなので。でも、自分のほうが主導権握って頭抑えたいから、好き勝手したいからで綱引きしているのはなんともねえ。
メインヒロイン枠であるユーナの方に声をかける、或いは粉掛けるのもこれ好きだから、というよりも選択肢にあがったから必然的に、という感じでまあやっぱりルート入っとくかー的ゲーム感覚っぽいんですよね。昔からの友人ゆえの情はあるんでしょうけれど。表向き男爵令嬢なユーナも、乙女ゲームの主人公らしく実は高貴な身、という裏事情もあるので、こっちもこれ政略狙いでもあるんだよなあ。
むしろ、いつもその所業に対して怒られてるコレット相手にしているときが一番人間相手にしてる感覚に見えてきてしまいます。

さて、肝心の星間戦争はその有り余る魔力を動力源に、イゼルローン要塞みたいな巨大宇宙要塞を動かすことになるハルトたち。移動要塞って、ぶっちゃけ天体級宇宙戦艦じゃないの、これ?
並の艦船では小舟を蹴散らすような戦力差。同じ移動要塞相手でも、超弩級戦艦と前弩級戦艦くらい差があるんじゃなかろうか、というくらいハルトの魔力で動かせる要塞の巨大さ、起動できる兵器の質と量は途方もなく、敵味方両軍が正面衝突しているなかを、ハルトの要塞が敵軍を真横にぶち抜いていき端から艦隊を一つ一つ壊滅させて戦域の端から端まで突っ切っていくシーンは、すげえスケールなのだけれど相手からしたら溜まったもんじゃないよな、これ。
本来なら、これだけ敵の主力艦隊壊滅させたらそれだけで戦争勝ったようなもののはずなのに、この最後の決戦はハルト個人としては戦術的にわけのわからない勝ち方をしているにも関わらず、戦略的には大敗北してしまうんですよね。戦争の行方は霧の向こう、ハルトも最大の武器を喪って、なるほど依然ハードモードである。