【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件 3】  雲雀湯/シソ 角川スニーカー文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER

待望の夏休みが到来し、隼人と春希はバイトに遊びに忙しい日々がスタートした。月野瀬の幼馴染・沙紀が隼人に恋心を抱いていると気づいた春希は、胸がざわざわとして落ち着かなくなって……。

ああ、いいなあ! もう、素晴らしくいいなあ! 今回、ほんとに隼人がめちゃくちゃ春希の事大切にしてるんですよ。もちろん、今までも再会した幼馴染に対して隼人はこれ以上なく大切に扱い、宝物のように接してはいたんです。彼女のことを本当に大事にしていた。
でもそこには大切にしていたからこそ踏み込まないようにしていた部分があったんですよね。春希の気持ちを慮って、彼女のセンシティブな部分には触れないようにしていた。
それはさながら、箱の中にしまい込んだ宝物、とでも言うのでしょうか。
でも、再会してからこっち、春希も隼人も相手に新しい顔を見つけるようになった。成長して、高校生になって、男と女になって、どうしても過去と同じでは居られない部分が目につくようになった。
過去のままでは居られない。同時に、過去と同じままで居られる部分もある。そうした過去と現在、そして周囲との関係も含めて、隼人と春希の幼馴染関係は次の段階へと進みはじめていたわけです。
それは、触れても壊れない関係になったと言ってもいい。隼人は宝箱の中から、大事な大事な宝物を取り出して、その手の内に包み込んだのでした。
それは「掌中の珠」と呼ぶのが相応しいでしょう。
いやもう、隼人くん大事にしすぎだろう!? と、思わず唸ってしまうくらい、春希のことメチャクチャ大切にしてるんですよね。もうギュッと包み込んで一瞬たりとも離さないようにしているかのように。春希が、壊れてしまわないように。見失ってしまわないように。
もうその様子が、尊い。エモい。
こんなに大切に扱われるヒロインも中々いないんじゃないだろうか、というくらい。お姫様のようにじゃない、本当に宝物のように、大切に大切に。
春希は、そんな隼人にどれだけ安心を、安らぎを与えられているのだろう。今、とても大きな不安を抱えている彼女である。未だ癒えない傷に苛まれている春希である。そんな怯えを、凍えるような不安を抱え込んでいる春希にとって、隼人のそれはどれほど温かいものなんだろう。
彼が許してくれるのは、春希の全てなんですよね。過去も現在も、その生まれも何もかもを受け入れてくれている。男だろうと女だろうと関係なく、春希であろうとハルキであろうと区別なく、過去も現在もそしてこれからの未来ですらも彼は受け入れてくれようとしてくれている。それどころか、宝物みたいに大切にしてくれている、傷つけまいと壊すまいと包み込んでくれている。
この彼女の安堵感を、感じている温もりを、その掛け替えのなさを、文章の行間からどれほど感じ取れるだろうか。それこそ、目一杯伝わってくる。春希の、溢れ出す想いがこれ以上無く伝わってくる!
彼女がそこに、恋を重ねたい、愛を注ぎたいと思うことは当然で自然のことだろう。欲張りなんかじゃないよ、当たり前の感情だ。とても尊い恋のはじまりだ。
隼人の方も、幼馴染を大切に思う感情の中に、異性を意識してしまうことは当然のことで、なんら否定されるものではない。たとえ恋がなくても、お互いのことは唯一無二の大切な宝物で、でもそこにさらに恋や愛が加わり育まれていくならばそれはとても素敵なことなのでしょう。
とても素敵な、恋物語なのです。
甘やかという以上に、甘酸っぱいという以上に、眠気を誘うほどの温かで安らぎを感じさせてくれる幼馴染同士の恋。
一巻一巻、進むごとに恋模様が昇華していくのが本当に素晴らしい。心情描写から伝わってくる色彩が、感情の色鮮やかさが、豊潤さが、どんどん輝きを増しているかのようです。
これは本当に素晴らしい作品になりそう。

不穏と言えば、春希に「演技」の才能が誰の予想する以上に開花しはじめていることでしょう。母絡みの因縁から芸能界に嫌悪以上に生理的な拒否感を抱えている春希にとって、それは不安要素でしかないのだけれど、母との因縁に決着をつけるためには逃れられない障害なのか。

また、良いエッセンスとなっているのが隼人の妹の姫子なんですよね。彼女独りでどれだけのシーンで登場人物の感情を救ってくれたか。本人は自然体で振る舞ってるだけなのに、それが癒やしとなってるんですよね。その影響を一番受けたのが、人との距離感を見失って苦しんでいる、救いを求めていた一輝だった、というのが面白いところ。
そして、何も考えていない天然であるからこそ空気を変えてくれる存在だ、と見せていた姫子が不意に見せた失恋を乗り越えた大人びた顔。
姫子の存在って、単なるサブキャラじゃなくて作品の雰囲気そのものを一変させ、また下支えするほどの存在感を見せてると思うんですよね。色んな局面で主役の二人に匹敵するほどの重要なキャラとなっているような気がします。
そして、春希と隼人にとって先達というか見習うべき相手というか、参考書代わりになっている友人でありもうひとつの幼馴染カップル、それも正式にちゃんと彼氏彼女として付き合いだしている伊織と恵麻の二人も今回は非常に重要な役回りだったと同時に、彼ら自身とても初々しい幼馴染カップルでこっちこそ甘酸っぺー!の鑑でしたよ。

一輝の元カノにして芸能人でもある愛梨、彼女もまた一筋縄ではいかないキャラクターで単純なレッテルを貼ることの出来ない掘り下げ甲斐のありそうな人物の登場は、春希、隼人、一輝のこれからに深く関わってきそうで、今からハラハラしてしまっています。
でもまずはその前に、春希にとっての久々の田舎帰り。自分の居場所になれなかった故郷への帰郷、そして姫子を通じて友人となり、そして恋敵である少女沙紀との対面。それは春希にとって自分の中に芽生えた恋という感情に向き合う覚悟でもあり……
次巻もまた盛り沢山の内容になりそうで、うん絶対面白いなこれ。