【ロクでなし魔術講師と追想日誌 9】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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私が生きている意味はーーこれだったんだ

「Project: Revive Life」から生まれ、グレンに救い出されたリィエル=レイフォード。しかし、彼女には生きる意志が消えていた。帝国に存在を偽り、彼女を育てることに決めたグレンは……


レーンの受難
あんまりクローズアップされないけれど、システィたちの下の世代、一年生たちもちゃんと学園にはいるんですよね。そりゃ、グレンの実態を直接知らず、その来歴だけみたらポンポンと学園のみならず国の危機まで救ってるとんでもない人物だもんなあ。そりゃ、人気も出るわさ。
そんな一年生の女子寮で発生している下着ドロを捕まえるため、セリカ特製の女性化魔法薬によって再び超絶美人女教師となって女子寮を警備することになったグレン。って、これグレン女性化する必要どこにあったんだろう。生徒たちにも極秘に、というわけじゃなく生徒みんなグレンが女となっているのを承知しているのですから。これって単にサービスなだけですよね?


嵐の夜の悪夢
グレン先生、幼少からのトラウマである首なし騎士にビビリまくるの回。教師としての威厳も大人としての立場も男としての面目も投げ売って、ひたすら幽霊ならぬ首なし騎士にビビり倒すグレン先生の醜態W
いやまあ、霊障とかにトラウマある人からすると、怖いもんは怖いよなあ。徹底してシスティを盾にしてるのは笑ってしまうけれど、それだけ耐久力ある盾だと信頼してのことでしょうW
しかしあれだけ良い反応をしてくれると、ドッキリ仕掛けた方もやりがいあっただろうなあ。
そしてセリアは子供相手に深い心の傷を負わせすぎである。親としてはやりすぎです、それW


名も無きビューティフル・デイ
出るたんびに、神秘が薄れて単に突っ張った小娘(チョロい)という本性が発覚していくナムルスの、初めてのデート回。
いやマジで普通にデートしてもらってるだけじゃないですか、やだもう。口では偉そうな尖ったことをイイながら、本当にチョロい。作中随一のチョロさを露呈しまくるナムルス。おまえ、本当にただの小娘だなあ。
逆に言うと、本当ならただの小娘でしかないナムスルが重い役割負わされすぎている、とも言えるのだけれど。
あとちょっと感心したのが、グレン先生。この人やろうと思ったらちゃんとしたデートのプランニングから実践からそつなくやれるんですよねえ。このへん、その辺の経験不足の子供と違う大人だなあと感心してしまった。
ちなみに、ホテルの寝室に連れ込まれた場合、ナムルスちゃん身を任してしまいそうな流れだった件について。君、それがルミアの身体だというのを完全にスルーしてたでしょう。チョロすぎる。


君に教えたいこと
なかなか将来有望な娘が。グレン先生、才能豊かな天才児とその母である未亡人に引っかかる、の巻き。いや、未亡人ではないんだが。
いやまじでこのママさん、最強の刺客じゃないだろうか。13歳の娘がいる28歳のシングルマザーって……あんた、15歳で娘さん産んだんですか!?
政略結婚の挙げ句DV離婚したというのがまた生々しいというか。28歳って全然若いですがな。
このママさん相手だと、グレン先生本気で更生してしまいそうなのですが。イヴをライバル視している場合じゃないですよ、システィとルミア。
しかしここで将来の学院生を出す、というのは将来を感じさせてくれるのがいいですよね。未来において、グレンはまだ講師やっていてウルが入学してくるのを迎えてやれる、そういう希望が見えるじゃないですか。


迷子の戦車
「Project: Revive Life」によって生み出され、関係者の多くが無念の死を遂げる中、独りグレンに救われた人造生命であるリィエル。その人形でしか無い、自分の生きる意思を持たなかった彼女が、グレンと同じ特務室の一員となるまでの。何のために生きるのかを見つけるまでのお話。
と言っても、リィエルはほとんど無気力に横たわっているだけで、そんな彼女の身の回りの世話をして必死に彼女に生きる意思を持たせようとするグレンの霞を掴むような介護の様子をその奮闘と挫折の繰り返しを描く物語になっているわけですが。
しかしリィエルを助けたはいいけれど、彼女の身分保障の偽造やら何やら全部お膳立てしてくれたのってイヴだったんですねえ。グレンをリィエルの世話に専念できるようにしてくれたのも彼女ですし、お互い反発しながらどうしてかイヴが一番のグレンの理解者っぽいんだよなあ。
グレンは昔からイヴは嫌がらせしかしてこないろくな上司じゃなかった、みたいな言い方してたし、イヴの方もグレンのことをずっと反発してぞんざいに扱ってたみたいな述懐してたけれど、短編集だけ見ていると、なんだかんだグレンのフォローしてくれるし支援やら何やら手厚くしてくれてたりするし、かなり助けられてるんですよねえ。
グレンの切なる思い、生きてくれという願いに応え、ようやく生きる意志を得たリィエル。でも、その生きる目的はグレンのため、というただ一点。それは依存の先を変えただけの生き様。結局、グレンはそれを変えることが出来ないまま、彼女を放り出して特務室から消えてしまうのですが……。
こうしてみると、リィエルの成長はシスティのそれとはまた少し違って、独り立ちするための成長なんだよなあ。彼女は自分で守りたいものを見つけ、誰に寄り掛かるでもなく自分の意志で戦い生きる「人」になった。それはもう彼女の生存にはグレンは必要としなくなったということでもあり、そうしてようやくリィエルは一人の女の子としてグレンを追いかける事が出来るようになったのかもしれないのですね。