【メイデーア転生物語 5.扉の向こうの魔法使い(下)】  友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

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明かされる転生の秘密、訪れる仲間との別れ。マキアの魔法学校生活が終わる

魔法学校の終業式の日。マキアたちは空から降ってきた魔物――帝国による強襲を受けていた。突然の侵攻に防戦を強いられ、散り散りになっていく学友たち。窮地を打開するため、マキアとトールはユリシス先生の指揮で、学校に封じられた強大な力を解放することに。そして封印を解く鍵は、三人の前世にあるのだという。
黒の魔王、白の賢者、そして紅の魔女。おとぎ話の悪役として語られる、三大魔術師の転生の秘密。そして想いの一端に、マキアは触れて……。
赤く染まる“メイデーア”の空が、遥かなる物語へと繋がる。
ネロ、さすがにカノンの肉親というわけじゃなかったか。それ以上に、秘められし正体だったわけですけれど。
考えてみると、ちょっとチンピラ入ってるフレイ王子よりもよっぽどネロの方が品の良い王子さまだった気がするぞ。
集まるべくして集まったガーネットの9班。でも彼らは決して仕組まれた形で同じ班になったのではなく、みんなマキアが見つけて集めてきたメンバーだったんですよね。何の裏事情も背景もなく、ただのネロとして、ただのフレイとして、ただのレピスとして、彼らはマキアの元に集ったのだ。何の思惑もなく、彼らは仲間になり、友達になった。
戦争がはじまり、四人はそれぞれに背負った運命、肩書、使命の下に戦いに赴くだろう。それぞれ、別れ別れとなり己が道をゆくことになる。
でも彼らは決して忘れないだろう。この学園での日々のことを。四人の仲間たちと一緒に過ごしたこの楽しかった時間を。肩書も立場も関係なく、友人となった皆のことを。
ネロにとっても、レピスにとっても、フレイにとっても、マキアにとっても、この友情は掛け替えのない拠り所になるのだろう。時に孤独のうちに戦わなければならないとき、それでも大事に宿す想い出がある。決して切れることのない繋がりがある。それこそが、彼ら自身を励まし続けるのだ。
そして何があろうと、何が起ころうと、ガーネットの9班は仲間である。友達であり、味方であり続ける。
そんな切々たるネロやレピスの心情が痛いほど伝わってくる、楽しい日々の終わりであり友との別れであり、旅立ちの物語でありました。

そして、ついにマキアとトールに明かされる、二人の内に眠る真実。彼らが紅の魔女と黒の魔王の末裔……ではなく、魔女と魔王当人の生まれ変わりであるという事実。
伝説の大魔術師(ロード)クラスの転生体なのである、と。
それはユリシスも同じ立場であり、また大司教エスカやシャトマ姫もまたかつて伝説に残る偉大なる魔術師の生まれ変わりなのだという。今、歴史に刻まれる伝説の大魔術師の生まれ変わりたちが、この時代に一同に会そうとしているのだ、と。

って、ここでユリシスが学園の深層に秘められたこの世界の秘密が隠されている場所に連れてきてくれながら、待っていたエスカやシャトマ姫とともに色々と説明してくれたのですけれど……。
え? ええ!? そこまで全部語っちゃうのですか!? まだマキアとトールが覚醒しておらず、前世の記憶もちゃんと戻っていないにも関わらず、伝説に残る魔術師たちの正体と転生の謎についてまで全部一気に暴露してしまったのは、ちょっと情報量多すぎやしませんか!?
ウェブ版だとどういう展開だっただろう。そもそも、マキアたちには前世の記憶が残っていた、という前提から違ったんでしたっけか、そう言えば。にしても、前世の紅の魔女時代の様々な想い出、心残り、痛切な願いや灼熱にして後悔にまみれた恋の記憶など、様々な形で前世の物語が語られその運命の激しさを味わったからこそ、さらにその前世の前世、幾年も人生を駆け抜けていく重厚さを感じられて、その大本である創世神の物語に辿り着いたときの壮大さに打ちのめされた記憶があるんですよね。
そして、その神代の時代から続く切なる願いの壮大さを味わったからこそ、その悠久のような時間の流れの中でただ一人記憶を継続したまま使命のために命を注ぎ続けるカノンの生き様のその凄まじさ、悲壮さに行き当たってしまったのでした。
それを全部ここで一気にネタバラシ的に語っちゃうのは、巻きですか!? と、思っちゃうところなんですよね。そりゃ、前世の話だけで一巻どころで済まない気もするしなあ。
にしても、ここで全部語ってしまったのは、ちょっと余韻とか感傷とかあんまり感じられない忙しなさだった気がします。マキアとトールも実感も何もない、というか彼女たちまだ前世の記憶も思い出してないものだから、ぽかんとしてたんじゃないでしょうか、これ。
未だ、カノンがどうして彼らマキアたちを殺し続けるのか、その理由についてはすべてが明かされていないので、彼の生き様の壮絶さはそれこそすべてが明らかになった時に嫌というほど味わうことになるのかもしれませんが。それに、紅の魔女の鮮烈な生き様も。黒の魔王の後悔も。それを直接見聞きして味わうことで、ようやくマキアとトールの運命の再会の尊さを実感できることになると思うので、そのへんは次回以降の楽しみですわなあ。
しかし、ユリシス先生はハラグロ感がウェブ版よりもいや増している、というかあんなちょっとイッちゃってるユリシス先生初めてみたよ! あんなユリシス先生が実在していたのかw

そして、救世主として完全に立ち直ったアイリ。いやもうこの娘は、なんであんなドリーム状態に陥っていたのか、そっちの方が不思議なくらい、元々いい子だったのだけれど、ココに来て完全に覚悟キメて根性据えて目を覚ましてくれたので、一安心を通り越して頼もしいくらい。
今度、マキアの方がどうにも不安定になりそうなので、自分の全身全霊を賭けてマキアの事を支えてトールの事も応援してくれそうなアイリの存在は正直かなり助かるんじゃないだろうか。


Mayday Mayday Mayday 

それがこの世界の名前に込められていた叫びだという。
助けて、助けて、助けに来て!
その叫びを名前に刻んだこの世界の有り様は、果たしてどんな形をしているのだろう。10柱の創世神が、子供達が、今なお転生を繰り返している意味を、本当の意味を、まだ知ることはない。
知っているのは、ただ一人の死神だけだ。さても、メーデー、それはいったい誰の叫びなのか。


巻末には短編がいくつか。掌編と言ってもいいくらい。いや、いや、いや、マキアとトール、これお互い好きすぎじゃないですかね!? まだ幼い頃の無邪気で穢れのない純粋な好きの領域だったかもしれないけれど、ちょっとパパさんの出張にトールがついていくことになってしばらく離れ離れになっただけで、マキアに禁断症状が出てるんですが。
これ、後々トールが救世主の守護者に任命されて離れ離れになったとき、よくマキアがトール不足で枯死しなかったなあ、というくらいトール成分を常時取らないとマキアおかしくなってるんですよねえ。
トールが家を出る際、トール筆頭に家全体でこれ絶対やべえんじゃないか、という空気に染まっていたのも、二人の文通の内容見てるとよくわかりますわー。