【百花宮のお掃除係 2 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。】  黒辺 あゆみ/しのとうこ カドカワBOOKS

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子どもの病いは呪いじゃありません! 新米宮女、後宮でまたまた大暴れ!
中華風の異世界に転生し、後宮でのお掃除生活を満喫していた雨妹は、庭でやせ細った子どもと出会う。皇帝の息子にもかかわらず酷い扱いを受ける子に違和感を持ち、その原因を探ることにしたが……

ああ、食物アレルギーはやばいですよね。この症例が世間的に周知されるまでに一体どれだけの人たちが犠牲になっていったのか。ぶっちゃけ、私が子供の頃なんてアレルギーなんて全然一般的に知られていなかったもんなあ。
前世の華流ドラマファンを拗らせて、この新しい人生でも後宮ウォッチャーとして掃除係生活をエンジョイしている雨妹。あくまでウォッチャーであって自分から面倒事に首を突っ込むつもりはないし、派閥争いにも興味なし。出世して忙しい仕事に追い立てられる人生は前世でもう十分堪能したし、この人生ではのんびり楽しく過ごしたい、と仕事の合間、ご飯の後の甘味を楽しみに過ごしている雨妹だけれど、いざ目の前に病気で苦しんでいる人や虐待されている子供を目の当たりにしたら、この娘は放っておけずに突っ込んでいくんですよね。
彼女の悠々自適には、見て見ぬ振りは存在しないんだよなあ。そんな事をすれば、それこそ楽しく過ごせない。
それは命を救う現場で人生を全うした人間の、魂に刻まれた胸を張るべき為すべき事なのでしょう。甘いものを上げていたらホイホイと嘴を開いてピーピー鳴いて喜ぶ小鳥のような、小動物のような愛らしさとはまた別の、それが雨妹の魅力なのでしょう。そういう毅然とした側面はほんと好きだわー。
そんな彼女の見守り人と半ばなってしまっている立彬くん。最初、立ち位置的に明賢太子が物語上の雨妹の相手役なのかと思いましたけれど、この人血統的には雨妹の実の兄にあたるんですよね。そうこうしているうちに、太子という立場上早々簡単にうろつけない太子に変わって、立彬が頻繁に雨妹に会いに来るようになって、なるほどこっちか、と理解した次第。
最初は胡乱な態度だったのに、そのうち餌付けするみたいに雨妹に食べさせるために甘味持参してくるようになりましたしねえ。さらに、何か雨妹が困っていたらすぐさま現れて助けてくれたり求めているものを調達してきてくれたり、と完全にお助けマンになってるぞこの人。
……暇なのか? と、雨妹にも思われていそう。一応太子の命令もあって雨妹の動向を観察しているはずなのですが、段々と個人的にも目を離していると何をしでかすかわからない小動物、という感じで見守っている節があるんだよなあ。にしても彼も雨妹が本来なら公主であり主である太子の妹だと知っているはずなのだけど結構扱いがぞんざいであるw
さても相変わらず、目の前で苦しんでいる人は見捨てられない雨妹は、呪いだなんだと騒ぐ皇太后の命令を踏みにじる形で、それは病気だ症状だと看破して治療の助言をしてまわっているだけに、いい加減目をつけられそう。既に注目は集めちゃってますしね。
一方で太子や幾人かの妃のお気に入り、という立場は周知されつつありますし、太子の側近や幾人かの聡明な人は雨妹の素性についても察知しはじめているし、さていつまで後宮ウォッチャーなんて悠長なことを言っていられるか。
派閥争いなどとは関係なかったものの、病気などに詳しいというのはすでに知れ渡っているために今回は拉致までされる展開になってますしね。段々と、派閥争いの核心になっていきそうな予感である。
それに、どうやら皇帝陛下も雨妹の存在に気づいた節もあるからなあ。これまで勝手に自殺していなくなった母親にもあまり情が感じられず、会ったこともなかった父親である皇帝陛下については自分が皇族なんて実感もなく育ったこともあり、実際父帝を見かけても何の情動も湧かなかった雨妹。
自分には関係ない世界だ、と割り切る以前に無関心だったはずなのに。
それでも、父親の口から確かに母とその生まれるはずだった娘への愛情が語られたら、この雨妹という名前に込められていた目いっぱいの想いを知ってしまったら。
思わず無意識に涙が溢れてきてしまった雨妹の姿には、何か胸を打つものがありました。愛情を求めてなんていなかった。でも、それは確かに嬉しく温かいものだった。
そのあと、さっぱり切り替えて引きずらず、空元気じゃなく本気で元気いっぱいに振る舞う雨妹の様子は何とも微笑ましく愛らしく。強くていい子である。
そんな表に出来ぬ妹に、何くれとなく目をかけて、助けの手を伸ばす明賢太子。彼女に妃を助けてもらった恩もあるけれど、それ以上に名乗れぬ妹を目一杯気に入って可愛がっている節があって、なんともお兄ちゃんしてるんですよね、太子さま。美味しそうに甘味パクパク食べてる雨妹を見ている太子のニコニコとした表情が浮かんでくるようである。
一方で同じ親族でも、雨妹の母譲りの髪を通じて厄介な執着をみせる皇子が登場し、派閥争いとは別に雨妹の周囲に不穏な影も見えてきているし、これまで以上に立彬が見守り人として見守っていないと大変なことになりそう。それはそれとして、立彬、軽々に女の髪に触れるのはどうかと思うぞ。まあ、簪の件も含めて雨妹は立彬に触れられることには全然嫌な想いをしていないようだけれど。
むしろ、皇子の件もあって立彬に触れられる事に安心を覚えているくらいだから、……ふむふむ。
立彬の母が太子の側仕えとして雨妹にも接触していて、なんか娘みたいに可愛がっているのを見ると、段々と堀が埋められていっているようなw