【佐々木とピーちゃん 異世界でスローライフを楽しもうとしたら、現代で異能バトルに巻き込まれた件 ~魔法少女がアップを始めたようです~】  ぶんころり/カントク KADOKAWA

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ペットショップで購入した可愛い文鳥は異世界から転生してきた賢者様だった

ペットショップで購入した可愛らしい文鳥は、異世界から転生した高名な賢者様だった。
世界を超える機会と強力な魔法の力を与えられ、佐々木は異世界へと現代の物品を持ち込み商売を開始する。
世界間を行き来しつつ――お金を稼ぎ、魔法の訓練をして、美味しい物を食べる――悠々自適なスローライフを目指すが、ある日の会社からの帰り道で異能力者と遭遇してしまう。
賢者印の魔法で異能バトルを切り抜けるも、実力を見込まれて内閣府超常現象対策局にスカウトされ、晴れて国家公務員に転職が決まり……?
異世界ファンタジー×異能バトル×年の差ラブコメ(?)。
さらには魔法少女、ご近所JC、同僚JK、貴族、ロリババア、王子etc...
属性ジャンル全部乗せでお贈りする、異世界と現代日本行ったり来たり物語。
MF文庫Jが放つ新文芸として、遂に登場!
この作者さんの作品は以前に【西野】を読んだのですけれど、これがどうも合わなかったものでこの【佐々木とピーちゃん】も話題にはなっていたのですが自然と手を出さずにいたのでした。ですが先日【このライトノベルがすごい!】の単行本部門で取り上げられたのをきっかけに、一度読んでみようかと思い手にとったのですが、これがうん、大丈夫だった。面白かった。
一番の要因はやはり佐々木さんでしょう。彼の温厚篤実な人柄は非常に好感が持てるもので、取っつきやすかったです。穏やかで自己主張は激しくなく積極的にガツガツいく性格ではないのですが、決して内向的とか引っ込み思案とか内向きの性格はしていなくて、行動スべき時はわりとフットワーク軽いですし、相手が誰でも言葉は尽くします。決して多弁ではなくむしろ静かな人という印象のわりに喋らないといけない時は雄弁に淀みなく言葉が出てくるのは営業職長かったおかげなのでしょうか。それでいて、この人けっこう聞き上手でもあるんですよね。上からものを語らないし、じっくり人の話を聞いて意見もそっと添えてくれる。
自己評価は高くないけれど、彼を慕う人は多かったんじゃないだろうか。同じ会社の後輩くん、独立しようとしていて佐々木さんを一緒に来てくれませんか、と誘っていたけれどあれってかなり本気だったんじゃないだろうか。
いや、マジであの異能課の上司とのタフなネゴを見ているとそれまでの仕事でも無能とか昼行灯ではなかったと思うんだがなあ。上昇志向や野心がなくガツガツ仕事するタイプじゃなかったから、窓際に追いやられていただけで実際は仕事だいぶ出来てたんじゃないだろうか。あまり実力が出世に反映しないブラック会社だったとか。
実際に、超常現象対策局では人員が大幅にいなくなっちゃったという要因はあったとはいえ、佐々木さんは異能力……というか魔法だけど、その魔法の能力の高さではなくて(そっちは極力力を見せないように隠しているわけで)人品の方を見てと思しき出世を果たしていますし、異世界の方では並々ならぬ有能さを示している商会のマルク副店長と対等に渡り合いビジネスパートナーとなっていったわけですし。あれも、単に珍しいものを輸入してくるってだけじゃあの副店長、そうそう胸襟をひらくたまじゃなかったですよ。
ピーちゃんという賢者がバックにいて、いつも判断を助けてくれるとはいえ、人の話をちゃんと聞き、咀嚼して自分で判断し続けていたのは佐々木さんだったもんなあ。
そもそも、ぴーちゃんからしてあれ、簡単に聞き分けるタイプじゃないんですよね、多分。かなり難しい人だったんじゃないだろうか。優秀な人特有の。でも、佐々木さんとは衝突もなくうまくやれてるんですよね。佐々木さん、はいはいと言うことを聞いているだけじゃなくて、ダメなものはちゃんと理由をいい含めてこれは出来ません、と言うべきは言ってくれるのでうまいこと回るんだろうなあ。
かくして、ピーちゃんと出会った佐々木さんは異世界と日本を行き来するようになり、異世界で戦争に巻き込まれ、日本の方では異能バトルに巻き込まれ、と平凡なサラリーマンから一転、騒がしいではすまない動乱のごとき日々を過ごすことになるのですけれど、それでも佐々木さん、慌てるし驚くしどうしようと困りはするんだけれど、常に穏やかで感情的にはならず訥々と目の前で起こることに誠実に対処していくのである。ピーちゃんと落ち着いてゆっくり出来る生活をしたいなあ、と思いながら。
まあ、佐々木さん穏やかと言いつつ、あれどんな場面でもその落ち着きが崩れないというのは「おかしい」人間であるのかもしれませんねえ。平凡なサラリーマンだった人が、人の生死、それも結構見た目にはひどい有様となっている横で焦りビビリはしていてもパニックにもならず錯乱もせず根本的に落ち着き続けることが出来ているって、なかなか普通ではないですし、修羅場くぐったあともPTSDになるどころか、普通の生活を普通に穏やかにそれまでと変わらぬペースで続けていられる、というのはメンタルちょっとおかしいですよ、うん。
とはいえ、彼が温厚篤実で誠実で善良で、親しい人の無事を喜び、不幸を悲しみ、幸せを望むことが当たり前の人格者であることは間違いなく、見ていて癒やし系なおじさんであることは間違いないんですよねえ。
しかし、ピーちゃん絶対元は女の子だと思っていたのに、違うんかっ!
そして、これだけ異世界でも日本の方でもやばい修羅場をくぐりながら、佐々木さんの一番の死亡フラグに成りかねない危険要因は、ただのサラリーマンだった頃の最初から一番近くにあって、既に導火線に火が付いていた、というのは結構怖いぞ、ホラーだぞ!