【ナイツ&マジック 11】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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空飛ぶ大地の覇者を決める戦いは、ハルピュイアたちの王である『竜の王』と西方最強の飛空船(レビテートシップ)『飛竜戦艦』(リンドヴルム)が互いに致命傷を与えあう痛み分けに終わった。
戦いの余波が漂う空飛ぶ大地に強欲なる商人が暗躍する。その魔の手が大地の中心へと伸びた時、
破滅の光が柱となって天へと伸びた。空飛ぶ大地を襲う未曽有の激震。西方人であれハルピュイアであれ、大地の支えなくして生きることはできない。あらゆる勢力が否応なく光の柱をめぐる流れの中に巻き込まれてゆく。
その頃、修復を条件に飛竜戦艦を乗っ取ったエルネスティはご機嫌で飛竜をぶん回しついでに事態の調査へと向かっていた。そうして光の柱へと接近したエルたちは知ることになる。噴き出したエーテルだと思われていたその正体を。
傷を癒すべく安息の地を求める魔王軍はとあるハルピュイアの巣に目を付けていた。
いかなる運命のいたずらか、魔王は捨て去ったはずの過去の因縁と再開する。大団長の後を追う銀の鳳と魔王が出会うとき、空飛ぶ大地を襲う恐るべき脅威が明らかとなり。それは西方諸国(オクシデンツ)の全てを巻き込む、終焉の始まりを告げる鐘となった。天が姿を変え、起こりえない嵐が西方世界を飲み込んでゆく。絶望が全てを覆い尽くすかに思えた――しかし。
如何なる困難窮地にあろうとも、そこにはエルネスティ・エチェバルリアがいる。人の身では抗い得ない絶望を蹴り飛ばし、猛り狂う暴風にすら怯むことなく、大団長の笑い声が木霊する。
世界の破滅を前にして怯える者たちは目撃することになるだろう、人類史上最強最大の力を結集した決戦騎の姿を。
彼らに向かって銀鳳騎士団大団長は力強く宣言する。
「それでは、僕たち皆で世界を救ってしまいましょうか!!」
世界の命運を背負い、決戦騎が真の空へと挑む――!
表紙でもうこれは酷い!というのが伝わってくる酷い表紙になってるんですがw
ってか、なんで顔芸やってるんですかオベロンさま!? よりにもよって表紙で変顔を晒すことになってしまったオベロンさまの不憫さよ。そしてエルくんの楽しそうなこと。
シリーズ通しても飛竜戦艦の設計者であるオラシオ・コジャーソ卿とボキューズ大森海で激戦を繰り広げた「魔王」の登場者である小王オベロン。この二人はエルくんのシリーズ通しての仇敵でありライバルとなる存在だと思っていたし、多分それは間違っていないのだけれど……ああ、仇敵というフレーズは向こうからはそう見られていても、エルくんからすると仇敵とか天敵とかいう眼中にはオベロンですらそうではないのか。
オラシオも飛空船普及の立役者であり、はじめてエルくんの技術に追いついてきた技術者として一目置いているし、メカ至上主義者としては思う所あったのかもしれないけれど、エルくんの感性ではそこから敵愾心には繋がらないんだなあ。
それはそれとして、エーテルの海のさらに上、宇宙を目指すオラシオの夢と野望を聞いて、ロボットで先乗りしてやろう、とか考えているあたり敵対はするつもりなくても、十分敵愾心煽る意地悪ですよね。ロボ至上主義者すぎる。

ともあれ、浮遊する大地が墜落をはじめ、エーテルから産まれた魔法生物が暴れ狂うという、果ては大戦乱の果ての滅亡の危機を迎えた世界のために、ここに集った勢力がエルくんの号令のもとに一致団結することに。それこそ、ハルピュリアの過激派をまとめた小王オベロンをも巻き込んで。
ここに、エルネスティ、オラシオ、小王の最悪の協力体制が生まれることになったのである。いや、最悪だーとのたうち回っているのは小王さまとオラシオばかりで、エルくんはいつも通り世界の危機にもかつての敵との協力にも楽しそう、どころか率先していて、相変わらず引きずり回しているのですが。
本当に楽しそうだな、この人。ライトノベル界隈見渡してもエルくんに比肩するレベルのエンジョイ勢ってちょっと思いつかないですよ。エンジェイ勢って一定数は存在すると思うんだけれど、その殆どが常識的な範疇に落ち着いてますからね。ここまで盛大にやらかしつつ、やりっぱなしじゃなくて政治的な根回しで自分のやりたい放題にちゃんとした説得力を付加した上でやりたい放題する人もまずいないでしょうし。おかげで相手がどれだけ偉い人でもむしろ偉くて責任を持っているからこそ、エルくんのやりようを止められなくなるんですよね。
オベロンはあれで群れの長としての責任感は王として立派以上に持ち合わせている人だからこそ、ハルピュリアの将来を考えて協力せざるを得なくなったんだよなあ。あの人、本気でエルくんの事嫌いなのに。
一致団結、というにはギスギスしすぎている関係のはずなんだけれど、エルくんはそもそもそういうギスギスは眼中になく、問答無用で引っ張り回すので小王もオラシオもパーヴェルツィーク王国のグスタフ将軍もギャーギャーと文句を叫びながら、足を引っ張り合うなんて余裕はなく、問答無用でエルくんの言うとおりにあれこれやるはめに。これだけ仲悪い集団なのに、これだけスムーズに事が運んでいくって本来ならおかしいことこの上ないはずなんだけれど、エルくんの牽引力がほんととんでもなさすぎるw
こうなるともう開き直って一緒に楽しくなるのが正解で、嫁のアディを含めてやっとこ合流した銀鳳騎士団の面々はまさにこれで、エドガーもディートリヒも完全にこっちなんだよなあ。いやエドガーは染まってると言ってしまうと悪い気がするけれど、完全に慣れきっちゃってるし、ディーたちはエルくんの同類になっちゃってるし、こいつらはほんとにもう。
パーヴェルツィーク王国のフリーデクント王女は常識的な人なので、もうついていけなくて置いてけぼりになってたじゃないですか。グスタフみたいに頭沸騰させるほど感情的になれず、聡明であるが故にエルくんの主張の正しさを認めざるを得ず、受け入れるんだけれど彼のむちゃくちゃ具合を受け止めきれずに、ほぼキャパオーバーのままで、今回はお疲れさまでした。
エルくんの国の王族みたいに、一緒にはしゃいで楽しくなれる種族なら良かったのにね。いや、エルムス王子や先王陛下と違って今の国王陛下は、お疲れ様勢なんですが。

というわけで、これ主人公連合じゃなくて逆にラスボス連合だろう、というエルくん、オベロン、オラシオらの協力で作り上げた決戦騎。いや、よくまあこんな頭の悪いものを実際に作り上げちゃうこの頭の悪さ!! 
ほんとにもう、よくまあこんなの作っちゃいましたよね。レギュラー機にならなくてよかったと言うべきか、こんなのレギュラー機にしてもいったい何と戦おうというのだ、という事になってしまいますしねえ。
そして一緒になって汗を流して喧々諤々角突き合わせて議論して、とやっていたら例え仇敵同士でも心がつながって同志になっていく……なんてことはこの三人には結局なくて、でもオベロンは嫌いだ嫌いだと叫びながらも憎いとは言わなかったんですよね。和解も同心もしないけれど、いつか絶対に殺すという怒りは消えないけれど、それでも決着をつけることなく、エルピュリアを救うことになったエルくんの偉業に王として感謝して、浮遊大地からの追放という形で、不倶戴天の関係に決着をつけるというオベロン閣下の決断は、和睦というくらいには落ち着くことになったんだろうか。
にしても最後まで、自分はアナタのこと嫌いじゃないのにー、と言っちゃうエルくんってばほんとに煽り体質である。