【悪役令嬢の兄に転生しました 2】  内河弘児/キャナリーヌ TOブックス

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悪役令嬢(になるはずの)妹ディアーナを破滅エンドから守るため、攻略本作りに乗り出す公爵家嫡男・カイン。そんな彼に届いたのは、父からの留学命令だった。『妹の成長を一瞬でも見逃すなんて、耐えられない! 』という訴えも虚しく、隣国の地を踏むことに。だが、寮で同室になったのは乙女ゲームシナリオの分岐で妹を側姫にして苦しめる、女たらしの第一王子! ? カインは迷わず、破滅フラグをへし折るために動いていく。一方、ディアーナも兄に会おうと、ある計画へと勝手に動き出し......?「どんなに離れようとも、君の未来は俺が守る! 」「ディは、お兄さまが大好きですのよ! 」移ろいゆく季節のなか、約束を胸に兄妹が挑む! 破滅回避のフルラブ・ファンタジー!

ド魔学と略称される魔法学園がゲームの舞台のはずなのに、何故か国外の学校に留学させられることになったカイン。隣国とはいえ長期休暇でも往復考えると帰って来られない場所に6年もの間留学することになる。いやこれ、客観的に見たら実質追放みたいなもんじゃないのかしら。大貴族の後継として、子供時代に人脈を作っておく事はむしろ貴族としての仕事と言っても過言ではないのに、その大事な時期を外国で特に目的を与えられる事無く過ごせ、というのはねえ。
しかも、たった一人で。仕送りも勝手に帰って来られないようにとだいぶ抑えられているみたいですし。おかげで、カインてば異国の地で大貴族の子息なのにバイトするはめに。いや、帰る事を考えなかったら別にお金貯める必要ないくらいには送ってくれているのですけれど。父上もまさか息子がバイトまでするとは思わんかったんだろうなあ。
てっきり側仕えであるイルは連れて行くのかと思ったら、彼すらも置いていかざるを得なかったですしね。ただ、彼をディアーナの元に置いていけたのはむしろ良かったのかも。
明らかに兄の影響を排して、ディアーナの再教育を目論んでいる節がありましたしね。その意味ではディアーナとカインの同志でもあるイルが傍で守ってくれているのは大きかったのではないでしょうか。ディアーナの専属メイドとなったサッシャはいい子なのだけれどまだ頭固いですからね。ディアーナが貴族令嬢らしくない振る舞いを見せる事にまだ耐えられない様子ですし。
しかし、父公爵があれほどディアーナの変化に嫌悪感を示すとは思わなかった。カインがディアーナに仕込んでいる価値観は貴族のものではなく、前世に基づいた倫理観であるのでこの世界の貴族のそれにはそぐわないにしても、理屈じゃなくああも生理的に嫌悪感を抱かれてしまうと歩み寄るのはかなり難しいのではないだろうか。
決して柔軟性に欠ける人ではなく、辣腕の執事長が元平民でそれを貴族の養子に押し込んで自分のもとで働けるようにした、などのエピソードを見ると決して固定観念に囚われた人ではないとわかるんですけどね。イルくんをカインの側仕えにするのを許してくれたのもそうですし。
そんな人でも、貴族としての常識は魂の底から根付いている。まだディアーナがゲーム原作のような他者の心を理解しようとしない悪役令嬢になってしまう、そのように育てられ仕立て上げられてしまう余地というのが残っていそうで怖いんですよね。その意味でもイルが残ってくれていたのは幸いだったように思います。

一方で異国の地に辿り着いたカインは、そこで一組の兄弟と出会うことになります。カインってホント女っ気ないよな!!
地元ではみんなのお兄ちゃん! となってしまっていたカインですけれど、第一王子のジュリアンはカインと同い年でさらにジャンルーカというゲームでの攻略対象となる第二王子の兄、というわけで、イルヴァレーノとはまた別の対等の友人であり兄仲間、になるんですよね。ジャンルーカには既に兄がいるのですから、こっちの国ではそんなにお兄さんせずに済んでいるわけですが、国に早く帰国するために飛び級するため、あと飛竜便で一時帰国するつもりでその資金稼ぎにバイト三昧、となんか苦学生みたいな日々を送っているカイン。女性が寄り付く島もなし。ほんと女っ気ないな!
いずれ絶対に婚約者とか必要になるはずなのに、お相手どうするんだろう。少なくとも地元に戻るまでは縁なしで終わってしまいそう。