【パパ活JKの弱みを握ったので、犬の散歩をお願いしてみた。】  持崎湯葉/れい亜 ガガガ文庫

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お隣JKと繰り広げる匂いフェチ系ラブコメ

残業帰りの会社員・梶野了は、女子高生がパパ活をしている決定的瞬間を目撃する。
彼女には見覚えがあった。同じマンションに住むお隣の娘さん、香月乃亜である。
「親には言わないでください、なんでもしますから」そう懇願する彼女に梶野は、一つの要求をする。
「じゃあ、犬の散歩よろしく」
奇妙なきっかけから始まった二人の関係は、次第に親密になっていき--。
「カジさん、匂い……嗅いでもいいっすか?」
「なんで!?」
匂いフェチのパパ活JKと、お疲れサラリーマンが贈る、新感覚ドタバタラブコメディ堂々開幕!
まさかのおじさん加齢臭をターゲットにした匂いフェチJKである。業が、業が深い!
しかもただのフェチじゃなく、若干中毒症入ってませんか!? 加齢臭ジャンキーじゃないですか? 加齢臭吸ってるトキ、キメてる感がバリバリに出てしまっているんですが。
お隣さんの娘さんの乃亜が、見知らぬ大人の男性に車で送ってもらって帰ってくるのを目撃してしまった梶野さん。疲れ果ててメンタルやばくなっていた彼は、彼女に大人の男性の怖さを教えるためとしばらく散歩に連れて行ってあげられていなかった愛犬のために、とっさに彼女を部屋に連れ込んで黙っている代わりに犬の散歩をして、と要求してしまう。
これはこれで、わりとアウトである。
その御蔭で、むしろ逆に乃亜に軽く脅迫されて付きまとわれるはめになってしまうのですが。疲れ切っていると、頭回らなくなるんですよねえ。
あまり犬には興味なく、仕方なく何度かわんこのタクトを散歩させてそれでおしまい、にするつもりだった乃亜。梶野の方も頭回って無くて無茶したなあと思っていたので、数回散歩シてもらえればそれで終わりのつもりだったんですよね。ところが、まず乃亜がタクトを連れての散歩にハマってしまう。無邪気なわんことの戯れと、犬を連れて散歩すると何の意図もなく気軽に声をかけてきてくれる同じ散歩中の人や犬好きの人との交流が、心休まらない日々を送っていた彼女にとって癒やしになっていくのである。
母親と折り合い悪く、学校でも中学の頃に揉めてトラブった際に同級生の大人気なさ子供っぽさに幻滅しきっていた乃亜は、学友との交流を一切絶って孤立を良しとしていました。でも、周りを全部拒絶する生き方はやっぱりしんどかったのか、拠り所として頼れる年上の大人の男性を求めるようになっていったんですね。家庭環境、母一人娘一人で父親いないみたいですし。さらに加齢臭フェチというのもあいまっていたわけで。
そんなこんなで、寂しい時はパパ活で紛らわせていたのである。性的な接触は一切なく、一緒にご飯食べて、という塩梅にとどめてはいたものの、そんな出会い系で女子高生と会おうとしている男が欲望抜きにそんな事をしているわけがなく、彼女の行動は考えなしの軽率と言われても仕方のないものでした。
だからこそ、梶野さんはそれを実感させようと冒頭の行動にうって出たわけですけれど。
幸い、乃亜は心底アホの子ではなく、梶野の意図もちゃんと察する聡さはありましたし、タクトとの散歩や年齢はいささか好みからは下がるけれども、頼りがいありつつ可愛げのある大人である梶野の部屋に入り浸ることで、寂しさや孤独感が解消されたことでパパ活からは遠ざかって行くのでした。
ちなみに29歳はおじさんじゃないですからね! アラサーってのは青年の範疇なんですよ。三十路だってまだ若い、若い、若いんですから。
でも若い若いと言っても大人は大人なんですよね。大人なんて中身は全然大人じゃないのも事実なんですけれど、それでももう子供でもないのは確かなんですよ。その意味では、乃亜はまだまだ社会の悪意も知らない、子供に過ぎないとも言えるのでしょう。生きづらさにあえいで呼吸困難になるのに、大人も子供もないのもまた確かなんですけどね。それでも、乃亜はその息継ぎのために危なっかしい事をしてしまい、今梶野に寄りかかっている。拠り所として頼りにしている。
それが悪いって訳でもないんでしょうけれど、そうしている間は梶野もこの子の事を子供扱いしてしまうんでしょうね。
そんな梶野だって、完璧な大人じゃないし頼られてもうまく対応できない事もある。乃亜が思い描くような大人の男性とは裏腹の、弱い部分だってたくさん抱えている。
そんな頼りない梶野に直面した時、乃亜がうろたえてしまったのは無理もないのですけれど、彼に幻想を抱いている間は梶野に対して依存しているとも逃げ場にしているとも言えなくもない間柄ではあったんですよね。
そんないびつさを、相談されたとは言え恋敵である乃亜にビシッと指摘しちゃう日菜子さんはちょっとお人好しが過ぎますよ。塩を送るどころじゃない、殆ど致命的と言っていいクリティカルな痛恨の支援じゃないですか。引き換えにとてつもない尊敬と信頼を乃亜から受けてしまう日菜子ですが、梶野と乃亜の関係に決定的な一撃を入れてしまったわけですから、よくまあやってしまったなあ、と。
イイ人過ぎて、これ絶対に報われないタイプだ。
いやもう、内心この女めんどくせー、と罵倒しくさりながら、ついつい的確なアドバイス送っちゃう日菜子さん、ものすごい好きです。報われなさそうだけどなー。そしてそれが似合う女w
とはいえ、自分の恋に自信を持てた、浮かれに浮かれてでも照れまくりデレまくる乃亜もまた、それはそれで残念臭が漂うのですが、梶野さんからの大切にされっぷりがまた半端なくなってきて、うんどこか社会から足を踏み外しかけてた少女が、明るく楽しくテンポよくただただ恋にときめく女の子になっていく様子はとても良きものでした。