【会話もしない連れ子の妹が、長年一緒にバカやってきたネトゲのフレだった】 雲雀湯/jimmy ダッシュエックス文庫

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ゲームが大好きな高校2年生の倉井昴。5年前に両親が再婚し、同じ高校に通う同い年の義妹・平折と4人で暮らしている。
生活に不満はないものの、平折との間には壁があり、いまだに打ち解けられずにいた。
そんなある日、ネトゲで仲が良くなった親友と会うことになった昴だが……
「嘘、だろ……」――待ち合わせに現れた超絶美少女がなんと平折で!?
美少女と一つ屋根の下、青春真っ盛りの男子高校生がおくる、ほのぼのラブコメ!
あっ、意外と早々にタイトルで語られている通りに、妹の平折がネトゲでのパートナーだとわかっちゃうのか。
角川スニーカー文庫から【転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件】シリーズを出している雲雀湯さんのもう一つのラブコメ作品であります。

平素では内向的で周りに友達もおらず、家族となった自分とも最低限のコミュニケーションしか取らない義妹の平折。でも、ネットゲームのアバターで彼女が演じるキャラは明るく社交的で言いたいことはハッキリというシャキシャキとしたキャラクターだったんですね。
尤も、それは平折の本当のキャラというわけじゃなく、作ったキャラであったんだけれど、実はちゃんとそのモデルが居る事があとになってわかるのです。もうひとりのメインヒロインとも言える立ち位置になる南條凛。クラスの中心にして、平折の憧れでもある少女。もっとも、学校での凛の振る舞いは平折のネトゲのキャラであるフィーリアさんのそれとはちょっと違っていて、もっと外面がよく品行方正で他人の見る目を意識した、或いは周りの期待や理想に応えるような振る舞いをする少女でありました。フィーリアさんはもっと親しみやすく遠慮がなくズケズケとした物言いで、ちょっと乱暴なくらい距離感が近いキャラだったのですけれど。
実は、そんなフィーリアさんのキャラの方が外面取り繕った方ではなく、南條凛という少女の本性に近かったんですね。
ひょんなことから、そんな凛の素顔の方と接するようになった昴。気楽に本性を晒せる相手として、凛と昴は急速に仲がよくなっていきます。何より、長年の相棒であるフィーリアさんによく似たキャラの凛は、昴にとっても親しみやすく長年連れ添ったような気安い距離感で居られることが大きかったのでしょう。
そして、面白いことに凛の方も平折のことを特に気にしていて、仮面の自分に良い顔する取り巻きたちのオモテウラの激しすぎる態度に若干人間不信気味になってる凛にとって、言葉数は少ないものの決して他人の悪口を言わず誠実に対する平折のことを、凄く意識していて仲良くなりたいと思っていたわけです。
そんな二人のキューピットに、はからずもなってしまう昴。凛の本性も、平折の素顔も知っていて、お互いに仲良くなりたいと思っていることもわかっていて、そんな二人にダイレクトに言葉を伝えられる昴は、まさに縁結びに最高のポディションだったわけである。
おまけに、凛に勧めたネトゲで凛も平折もお互い知らずにネトゲのキャラ同士で意気投合し、現実での悩みを相談し合うような仲になってしまう。ネトゲでも現実でも順調に仲良くなっていく二人を暖かく見守るポディションのこの主人公ってば……。ついでに、両方からアドバイス求められたりしてねえ。
ただ、そうやって相談に乗ったり自分の本当の気持ちや素顔をさらけ出せる相手、というのは自然と惹かれていくもので。以前から義兄が気になる相手だった平折はもとより、凛の方もどんどんと昴に惹かれていくのがよく分かるんですよね。
なによりこの主人公、今まで平折と仲良くなれないまま燻っていた男のくせに、クラスメイトの一部から嫌がらせを受けだしたり、と本格的に平折が困ったり辛い思いをしだすようになると、日和るような真似をしなくなるんですよね。取り繕うような、本音を隠すような心を押し殺した言葉を鵜呑みにせず、ここぞという時に勇気を出して踏み込むようになるのである。曖昧な言葉でごまかさずにストレートに、自分を頼れ、思ってることを言ってくれ、と憎からず思っている男性に真摯に情熱的に迫られて、あんなに格好良く顔を近づけられて、果たして平静で居られるだろうか。腰抜けてませんか、平折さん。

図らずも、知らずネトゲのキャラのロールプレイをお互いと似たキャラにしてしまう平折と凛。そうしてネトゲでもリアルでも無二の親友となっていく。そんな二人の仲を支える昴と不可思議な三角関係を徐々に築きながら。
学校での姿もプライベートで見せてくれる姿もどんどんと変わっていく平折、友達となった平折のために昴のために、どんどんと本当の自分の姿を見せていく凛。そしてそれは昴自身も。そうして、お互いに良い影響を与えながら絆をつながりを深めていく三人だけれど、凛にも平折にも昴との本当の関係を秘密にしているという隠し事があるんですよね。それは昴も同じことで、平折が義妹だということ。そして凛と隠れて会っている事をそれぞれに隠している。はたしてその隠し事が三人の関係にどんな影響を与えていくのか。
三角関係のはじまりと絆の深まりを描いたのがこの一巻だとすれば、本当に動き出すのは次の巻からになるという事かもしれない。ラブコメとして本格的にはじまるのは、だから次からなのかもと思えば、楽しみばかりであります。