【魔女学園最強のボクが、実は男だと思うまい】  坂石 遊作/トモゼロ 電撃文庫

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女装がバレたら丸焼き!? 魔女学園で繰り広げられるバトル&ラブコメディ

「ユート。――魔女学園に潜入しろ」
男だけがなれる騎士と女だけがなれる魔女。二つが対立するなか、騎士のユートは騎士団長である兄から、女装して魔女学園に潜入せよというミッションを与えられた。
兄の無茶ぶりを断ることができず、男子禁制の魔女学園に転入したユートは、ルームメイトで学級委員長のメイファ、大商会の令嬢フラウ、ユートに敵意むき出しのシリカたちと、魔女になるための授業をこなしていく。
そんなユートに告げられたのは、世界を変える魔法の存在と、その魔法を使えるかもしれない魔女を、周囲の女子たちのなかから突き止めろというものだった──。
魔法の使えないエリート騎士が魔女学園で無双する、女装潜入ファンタジー!





女装男子というと、男の娘という言葉が流行る前から君臨する【処女はお姉さまに恋してる】の主人公である「宮小路瑞穂」ちゃんが自分の中では不動の一位に輝き続けているので、どうしてもかのj…彼と比べてしまうので、なかなかハードル高く設定してしまうんですね。
その意味ではユートはせっかくの女装に対してのこだわりは決して高くないんですよね。女性に化けて潜入というミッションなんだけれど、女性になりきるために何かをしているということは特になく、あくまで素材だけで勝負しているのである。あまりにユートの天然素材たる容姿が女性的すぎるので、それで誰も疑いもしないのだけれど、女性としての立ち居振る舞いや女性服の着こなし、髪や肌の手入れの仕方など最低限の女性としての身嗜みについての知識や実践にも乏しいようですし、よくまあバレなかったなあ、と。そうでなくても、あの鍛え上げられた体つきを見られたらバレると思うんだけどなあw
描写からすると結構な細マッチョっぽいのだが。
まあユート自身が乗り気ではなく結構いきなり任務に放り込まれたので、バレても仕方なしという心持ちもあるので、女装としての完成度が低いのは仕方ないのかもしれないけれど。
でも、女装というネタはそれだけで面白くなる要素たっぷりなので、女性ばかりの学園に潜入するためのガジェットとしてだけなのはちょっと勿体ないかなあ、と思うんですよね。コメディとしてもラブコメとしても、女装の完成度が高いほどに神は細部に宿るじゃないけれど、そこからより威力をまして派生する面白さがあると思うだけに、尚更に。素材がいいだけに素材任せのパワープレイは勿体ない。

さて、この世界では魂と呼ばれる肉体強化術は男しか使えないために近接戦闘職として男だけが騎士となり、魔力を扱えるのが女性だけのために女性だけしか魔女になれず、両者とも国の戦力を担う存在でありながら激しく対立し、治安維持の現場でも縄張り争いが激化しているという現状。
まあ組織同士のセクショナリズムの対立に男と女の感情的ないがみあいが合わさったら、そりゃあ拗れますよねえ。ただ、あんまり陰湿さは感じないんですよね。学校のクラスで男子生徒と女子生徒の仲が悪いクラス、みたいなイメージである。現場ではバチバチと火花飛ばしあって手柄の奪い合いをしたり罵り合ったりと喧嘩三昧だけれど、逆に言うと喧嘩程度で済んでいる、とも言えますし。
お互いあいつら嫌いと公言し、悪口もガンガン言い合ってますけれど、組織として相手側を陥れるような企みをしたり、不必要に相手の存在を貶めたり、というたちの悪いことはやってないみたいなんですよね。
魔女を育成する学園でも、騎士に関してあの野郎どもみたいに敵意はみなぎらせているのですけれど、騎士の能力や在り方については正しい情報を教えて変に歪んだイメージを与えて印象操作や洗脳教育みたいなのはしてないようですし、公平ではあるんですよね。まあ先生があれだけ敵意バチバチ飛ばしてたら生徒たちだって、騎士ってやだなあ、とは思うでしょうから印象操作してなくても印象は最悪でしょうけれどw
とはいえ、ユートが学園に潜入することになったのはそういうつまらないいがみ合いが原因、と見せかけて実際は学園レベルに留まらない世界規模の要因が介在していたのである。
いやいや、これが事実としたら魔女学園ヤバいんじゃないですか? なんでそんな魔法が公然と存在しているの? 下手しなくても国家挙げても抹殺対象だと思うのだけれど、かなり古くから存在するみたいなので何か原因そのものを排除できない理由みたいなのがあるんだろうか。
その代わりに、その魔法を使うことになるかもしれない生徒の方を、どうにかするという方に現状走ってしまっているのですが。
でも、その判断をある意味ユートにまかせている、ということでもあるのでなんだかんだとあの兄の弟であるユートへの信頼は非常に高い、という事なんだろうか。

ユートの潜入任務は、まあバレるよね? と思ったら全然バレないでやんの。いや、偶然からルームメイトであるメイファにはバレてしまい、彼女の協力を仰ぐことになってしまうのだけれど。
ルームメイトくらいは全部事情を知った上で協力してくれる人でないと、さすがにやってけないだろうとは思うけれど、この娘よっぽど一人部屋寂しすぎたんだろうか。寂しがり屋すぎるでしょう、男でも構わないというかむしろ男で良かったという思考はw
ユートが信頼に値する人間である、とわかったからだろうけれど、男とわかったあとでも添い寝しちゃうとかどんだけ夜寂しかったんだろう。普段は委員長として気を張っていたからとはいえ、他のクラスメイトこの娘が尋常じゃない寂しがり屋さんだというのをもうちょっと察してあげて。これ、下手してユートこなかったらうさぎよろしく寂しくて死んじゃってたんじゃないだろうか。少なくともストレスでエラいことになってたんじゃないか?
過去のトラウマなどかなり抱え込んでいたみたいだし。ただ、トラウマに引きずられずに自分なりの信念を確立して努力を重ねて、皆に認められる実績と実力を身に着けていたのだから、本当に大した頑張り屋だったんだけれど。
ユートと協力し、自分の未来の姿だったかもしれない敵を打ち破り、過去の傷を克服したメイファ。これまで自分に課していた枷を解き放ったことで魔女としても抜群にレベルアップしたのだけれど、それ以上に色んな事に我慢していた堰の方も解き放っちゃった上に、ユートの秘密を自分だけが知っている、という特別感もあって、これだいぶダダ甘になるんじゃないだろうか。すでにその傾向は見えているし。
でも、お話としてはユートの調査対象は別の娘に移っちゃうんですよね。協力者であるメイファは彼が別の女の子とお近づきになるその手助けもしないといけないわけで、彼女としてはなかなか複雑だろうなあw
謎の敵組織の存在もラストに浮き彫りになりましたし、何より物語の根幹を成す部分のスケールが非常に大きいので、このまま順調に進めば進むほど話も盛り上がっていきそう。楽しみです。