【天才王子の赤字国家再生術 11 ~そうだ、売国しよう】  鳥羽 徹/ファルまろ GA文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER
「この帝位争奪戦を終わらせます」

兄皇子達の失点を好機と捉え、一気に勝負を仕掛ける帝国皇女ロウェルミナ。
しかし兄皇子の陣営には帝国士官学校時代の友人、グレンとストラングの姿があり、
彼らもまた起死回生に打って出ようと試みる。

かくして政略と戦略が入り乱れ、各陣営が削り合う中、それに呼応してレベティア教と
東レベティア教も動き出し、更にはウェインも舞台に介入すべく帝国へと踏み入ることで、
いよいよ大陸東部の混迷は頂点を迎える。

ただ一つの至高の座に就くのは、果たして誰になるのか。吹き荒れる戦乱の嵐。
大陸の歴史を左右する転換点となる第十一弾!



ウェイン殴っていいんですかやったー、とか言いそう。ロワなら絶対言いそう!
もう満面の笑みでぴょんぴょん跳ねながらウェイン攻撃してきそう。ロワの場合、ウェインと同じ謀略家なのに、こういう所陰湿さが全く感じられないカラッとした陽性なのが面白いキャラだなあ、と思いますしそんな所がまた好きな要因なんですよねえ。
いやほんと、なんでこんなに明るいんでしょうね、この娘。明るい笑顔の下に暗い感情が、とか微塵もありませんし。本気で楽しそうに人生突っ走ってますもんなあ。いざ、予定通りに行かずに策略やら失敗したりやらかしちゃった時でも、頭抱えて悲鳴あげながらもそれはそれで楽しそうですもんねえ。
ウェインと比べるとリカバリー能力に劣るロワですけれど、それでも思い通りに行かなくても怒ったり苦虫を噛み潰したような顔をしたりせず、慌てふためいても明るさを失わないのはさすがウェインのライバル、といった所なのでしょう。こういう臆面の無さがないと、幾ら頭の回転が早かったり謀略の冴えがすごくても、ウェインと対等のプレイヤーとは言えないんじゃないかな、と思ったり。
大陸でも特にやべえ連中はだいたいこの手の面の皮が厚い連中ですもんねえ。

さて、長く続いた帝位争奪戦もついに決着。ある意味これは、ウェインとニニムが帝国に留学していた時代からの友人たちの、モラトリアムの終わり、とでも言えるのかしら。
結局、ロワを筆頭にストラングもグレンもその行動の一番根本の部分にあるのは、ウェインと対等の友人でありたい、という願望にあるんですよねえ。それぞれ、ストラングは出身の自治領の発展のため。グレンは実家の主家に対する忠誠のため、と現実としての理由はあるけれど、自分を高めたいという意思の根源はウェインの存在が強く楔として打ち込まれているわけですからね。
ロワはある意味、その最たるものですし。
ただ意外だったのは、帝位争いを通じての彼ら三人のそんな奮闘を目の前にして、ニニムが同じ方向性の刺激を受けることになるとは思わなかったんですよね。あくまで、ウェインとニニムはセットだと思っていたから。ウェインからすると、二ニムは自分の心臓と明言するほどのパートナーであって、ある意味彼の行動の根源にあるのはナトラという国ではなくて、ニニム個人なんじゃないか、と思える時すらありますし。別にウェインは強敵を求めているような人物でもありませんしねえ。
しかし、ナトラ国内でフラム人の一部に不穏な動きが出てきた上に、大陸西でも一番やべえ女にニニムの素性が把握された節もあるところに、ニニム本人の心に今までと違う動きが出てきてしまった、というのはちょっと不安になってくる要素ですよね。

しかし、この帝位継承戦においてウェインは本来、完全に外野の人間だったはずなのに、最大のキープレイヤーとしてロワに第二皇子陣営、第三皇子陣営と三陣営がその動向を注目する重要人物になってましたよね。ウェインの動向が継承戦の行方を左右する、という感じで。
だからこそ、ストラングが最優先でウェインの動きを封じにきたんでしょうけれど。そうやって露骨に足止めされたら、ついつい天の邪鬼に自分から首突っ込むのはやっぱりウェインだなあ、と。
だいたい、軍を引き連れてきたわけじゃなく、ほぼ単身で東レベティア教の教皇との会談で帝国国内を訪れた、ってだけなのに、見事に三陣営の鼻っ面を引っ張り回しましたもんねえ。政治的な立ち回りだけで、よくもまああそこまでピンポイントで嫌がらせ出来ますわー。
でも、第一皇子引っ張り出したはいいですけれど、地味にウェインってダメージくらってましたよね。継承争いから降りて隠居状態の第一皇子ディメトリオの現状って、はからずもウェインがシリーズ開始当初に思い描いていた理想の隠遁生活そのものを送ってるんですよねえ。本人は穏やかな生活に幸せそうですし。これはウェインも苦笑いだろうなあ。権力から遠ざかった事もあって、なんかディメトリオってウェインと利得関係ない友達っぽくなってるのがまた皮肉っぽいというかなんというか。
もうウェインは、ディメトリオみたいな着地点は選べないんだろうなあ……いや、まだ諦めてないのかもしれないですが。

ともあれ、帝位もロワの勝利で終わり、ついに東大陸の動乱が終結。まだまだ帝国国内安定のためにロワも走り回らないといけないでしょうけれど、それでもこれから大陸の東に目を向ける余裕も出てくるでしょうし。これまで東大陸でのドタバタにはなかなかロワは首突っ込めなかったですけれど、これからは大陸の東だ西だ、で場面が固定されるのではなく、大陸全土を通じた大きな事件や動乱が起こるんだろうか。
本作はまったく先の展開が想像つかないのも、楽しみの一つですよねえ。