【璃寛皇国ひきこもり瑞兆妃伝 日々後宮を抜け出し、有能官吏やってます。】  しののめすぴこ/ toi8 カドカワBOOKS

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黒色が平和をもたらす『瑞兆(ずいちょう)』の証とされる中華風の異世界に迷い込み、璃寛皇国(りかんこうこく)の皇帝に拾われ後宮の妃になってしまった紗耶(さや)。
しかし退屈すぎる生活に限界を迎え、こっそり抜け出し男装して官吏として働き始め……気付けば大出世!
「黒髪ってバレても女ってバレても大問題だよね……」
滅多に姿を見せない『ひきこもり妃』とたった五年で尚書省次席まで登りつめた有能官吏。日々2つの顔を使い分け、次々やってくる国の危難を解決します!




暁雅陛下の紗耶への愛情が深いぃぃ。重いぃぃ、じゃないのはポイント高し。
いや、もしかしたら重いのかもしれないけれど、紗耶にその重さを気づかせないように背負わせないようにしているあたりは、すごく気を遣ってると思うんですよね。
紗耶が自由に振る舞えるように、それはもう健気なくらい気配りを張り巡らせてらっしゃる。
だから、仕事している紗耶の所に様子見に来て、ずっと居座っていてもちょっとは許してあげてください。ずっといてて邪魔だなあ、とか思っても優しくしてあげてくださいw
いやどれだけ見守ってるんだよ、とか言いたくなりますけれど、あれは陛下なりの癒やしタイムなんでしょうねえ。いそいそと好物のお菓子用意してきてマメに差し入れしていくのとか、すごく献身的だと思いますよ。わざわざ紗耶のために準備したのを言い出せないあたりとか、もうなんか可愛らしくすらなってくる。
紗耶のこと後宮に放り込んだ以上、名目上は奥さんである事は間違いないのにねえ。大事にしすぎて、どう手を出したらいいのかわからなくなってるの、ポイント高しですよ。まあ何やら複雑な事情があり、紗耶の事を皇妃に出来ないみたいな事おっしゃってましたから、安易に手を出せないというのもあるんでしょうけれど。
ただ、陛下の感情抜きにしても暁雅陛下が日輪の君であるのに対して、紗耶は月輪の君と呼ばれる存在らしいので、唯一無二のパートナーっぽいんだけどなあ。
五年もの間、他の妃には見向きもせずにひたすら紗耶の事見守ってる陛下、もういじましいですよ。彼の紗耶の大事にしかたはすごく優しいし彼女の意思や自由を尊重していて好きなんですよねえ。
そこに、紗耶を後宮に入れて閉じ込めてしまった、という負い目があったとしても。そのへん、紗耶は恨んでるどころか衣食住を確保してくれて感謝していると明言してますしねえ。
でも、それでやることなくて暇すぎて、後宮抜け出して官吏登用試験にこっそり参加するとか、どんだけアグレッシブなんだ、とは言いたくなります。暇ならもっとこう、趣味に明け暮れたり、とかじゃないのか? なんでバリバリ働こうとするんだw
最初からバレバレで、陛下が駆け回って紗耶が女だとバレないよう、後見人も用意して直属の上司にもちゃんと話を通して、身分保障もこっそり整えてあげて、とどんだけガッツリサポートしてるんだ、と言いたくなるくらいなんですけどね。陛下、けっこう尽くす系男子でしょう、これ。
塩の売買をめぐるゴタゴタで紗耶がかどわかされてしまったときも、まっさきに自分で助けに来ちゃいましたしねえ。フットワーク軽すぎでしょう、この陛下。元からお忍びで街に繰り出してる活発な暴れん坊将軍タイプみたいですけど。ちゃっかり、ここぞとばかりに周囲に夫婦アピールして、この女に手を出すんじゃねえぞ、と牽制しまくるちょっと大人げないところとか、やっぱり可愛いよなあ、この陛下。

とまあ、陛下が紗耶に夢中も夢中なのは、作中で嫌というほど見せつけられるので、後宮での他の妃たちの空回りっぷりは、どうにも呆れを感じてしまいます。彼女らは、後宮という閉ざされた世界しか知らず、そこから見える皇帝陛下という像しか知らないから仕方ないんでしょうけどね。そんな隔離されたところでイキられてもなあ、と紗耶がある意味相手にしていないのもよくわかります。
外に出て官吏として働いていて、陛下のこともよく知っているし、世間の実情なんかも自分の目で見て、さらに戸部として書類や数字として見て非常に高い視点から、それこそ皇帝陛下と同じ視点から世界や物事を捉えている彼女からすると、陛下の寵愛を得るために的外れな事をしていたり後宮だけのロジックで増長したりしている妃たちは、虚像の中でから回ってるように見えるんじゃないだろうか。まあ陛下も、あんまり相手したくなくなるよねえ、あれは。

しかし、紗耶の官吏としての能力は本気で事務方の神様レベルですよね、これ。登用自体は陛下の手回しがあったとはいえ、そこから5年かけて戸部のナンバー2に異例の若さで就任したのは彼女の実力以外の何物でもないわけで。
いや、戸部侍郎ってぶっちゃけ日本で言うところの総務省事務次官か財務省事務次官クラスですよね!? 戸部という役所は時代によってその職掌の範囲は異なってるみたいですけれど、もっとも権力ある時期では、内務省と財務省をあわせたみたいな権限があったみたいですし。
そうでなくても、省庁の事務方のNo.2は掛け値なしに凄いですよ。実際、その有能さは同じ官吏の間だけではなくて、街の方まで知れているみたいですし。自分一人だけで仕事こなしていくばかりじゃなく、ガンガン仕事割り振って部下たちを追い立てつつちゃんと仕事量調整したりやりやすいように根回ししてあげたり、と上司としてもメチャクチャ仕事できる振る舞いを見せているので、もうこれ官吏としても絶対に手放せない存在になってますよねえ。
おかげで、余計に皇妃にしにくくなってるような気もしますけれどw

美貌の麗人にして切れ者官吏としての側面と、引きこもりの地味な下級妃としての野暮ったい姿、そして月輪の君としての一縷という魔獣を従え日輪の君たる陛下の傍に侍る神秘的な姿、と様々な顔を見せてくれる紗耶という主人公ですけれど、虚飾を取っ払うと暁雅陛下とお互いズケズケと言い合う気のおけない気安い男女のパートナー感があって、なんとも微笑ましいお似合いの二人でありました。