【武装メイドに魔法は要らない 2】  忍野 佐輔/大熊 まい 富士見ファンタジア文庫

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「お終いになんてさせません。わたし、欲張りなんです」

炎槌騎士団を退けた実力を買われ、マリナとエリザは講和のため王国へやってくる皇帝護衛の任に就く。しかし刺客の罠に引き裂かれる二人。その時、主従が下す決断とは――!? 異色の武装メイドアクション、第二弾!



まるで女王陛下のような威風堂々とした辺境伯(極貧)である。普段、作業服来て鍬担いで農作業してる風には見えんなあ。
というわけで、異世界に魂を呼び出されゴーレムに定着され蘇った日本の民兵組織で名うてのソルジャーとして暴れまわった少女が、憧れの武装メイドとなりお嬢様の下で現代兵器をもって無双……出来ない! 異世界ヤバい! 騎士強すぎ!! な貴族令嬢とメイドの主従の死戦激闘を描く第二弾がついに登場。
いやこれの騎士って、マジでヤバいんですよ。作中で表現するに曰く「戦術核級の攻撃手段と戦車並の装甲、戦闘ヘリかそれ以上の機動力を持つ人間兵器」ですもんね。一巻の騎士四人との戦闘のあの絶望感は凄かった。
さすがにあんなレベルの化け物と毎回戦ってたら普通に死ぬので、本当に死ぬので今回は騎士との衝突はなし、と思ったらそうでもなかったですよ。騎士そのものではないですけれど、それに準じた怪物が出てきて、攻撃手段……攻撃手段がえげつなすぎる! モブが、モブが死体も残りません!
帝国さん、こんなんばっかりの王国相手にどうやって戦ってるの? と思ってしまうくらいなんですよね。なんだよあれ、人間サイズのガンダムかよ! ガンダムXかウイングガンダムのバスターライフルかよ! そんなの人間相手に使うとか馬鹿じゃないの!?
というような相手に、現代兵器程度じゃ全然足りないんですよね。むしろ宇宙世紀レベルの兵器を所望する! ゴーレムでもあるマリナは人間とは比較にならない膂力で普通の人間が携帯、使用出来ない規模の重火器・兵器まで単身でぶん回せるのですけれど、それでも全然足らないですもんね。
だからこそ戦術、作戦、工夫に小細工、悪辣極まる仕掛けに息のあった連携と、頭脳を振り絞らないといけないので、絵面のド派手さに知能戦が相まって非常に燃えると同時に手に汗握る戦闘シーンが出来上がってるんですよね、本作は。

今回は、図らずも運命の主従が引き離され、それぞれの場所で、それぞれの戦場で別れ別れになって戦うはめに。でも、距離が離れたとしても、連絡が取り合えなくなっても、一度結ばれた主従の絆は引き裂けない。
一巻でろくに統治も出来てない領主だったエリザと、見様見真似でメイドの格好をしただけのマリナ、半人前同士だった二人が衝突し反発し、お互いを理解し合い認め合い共感し唯一無二の主従となった積み重ねは、失われるどころかより強固になっていたのでした。
この二人別々の戦いは、二人の繋がりの強さをより強く意識させてくれる展開でもありました。
絶対に、彼女なら諦めない、と信じ抜いて自分の戦場を戦い抜く少女たちの激闘、死闘。

特にマリナの方は引きずり込まれた世界で、元の世界。内戦状態になり紛争国となった日本で少女兵にさせられ、民兵組織の中でも名うてのソルジャーとして戦い続けた仲村マリナとしての、罪と後悔を突きつけられる。
その世界に現れたのは、かつて自分が大切に思いながら救えなかった人たち。死なせてしまった人たち。もう一度会いたいと思い願う死人たち。それが、あの頃と変わらぬ笑顔と言葉でマリナを迎えながら、武器を手に殺しに来る地獄のような世界だったのである。
助けられなかった人たちを、今度は自らの手で殺していく地獄。マシーンのように反射的に自分を殺しに来るものたちを返り討ちにしながら、しかし心はズタズタに切り裂かれていくマリナは、決して心まで殺戮に染まった戦闘マシーンなんかじゃない、という事が伝わってくる展開なのです。
元々、民兵として戦いながらマリナは孤児の子供たちを保護して回ってたことが明らかになるんですよね。紛争国の日本では、孤児は兵士にされるかそれ以前に人間爆弾として消費されるような存在。それを保護して周り、余裕が出来たら信頼できるNGOにたくして普通の家庭に送り出していた、というのだから、マリナって相当過酷な環境で戦っていたにも関わらずこれだけの事を成し遂げていたというのは純粋にすごいと思うんですよね。
沢山の子供たちが武器を手に、笑顔で襲いかかってくる。でも、それはそれだけ沢山の子供たちをマリナが救おうとしていた、ということでもあるんですよね。それだけ沢山の子供たちを助けらなかった死なせてしまったかもしれないけれど、彼女はそれだけの子供たちを助けようとしていたのだ。そしてそれ以上の子供たちを実際に助けたのだろう。
襲ってくる孤児たちは、マリナの後悔の権化かもしれない。これだけの慕ってくれた子供たちを助けられなかったというのは痛恨だろう、哀しいことだろう。でも、これだけ多くの子供たちともう一度会いたいと思えるほどの絆を結んでいた、というのは救いでもあると思うんですよね。
そりゃ、理想主義で強欲なる辺境伯エリザと魂で結ばれちゃいますわ。本質的に同類だもの。エリザが望んだ理想を、マリナは実際その手で僅かなりとも成そうとしていた人なのだから。まさにエリザが喚ぶべくして喚んだ魂こそが、仲村マリナだったんだろうと思えてくる。
でも、マリナは救えなかった。今世でも、大切な妹を助けられなかった。仲村マリナは殺すことでしか前に進むことが出来ない。妹は、サチは自らの死をもってマリナを助けた、と言えばそうなのだろうけれど。
ラキスも、ニキアスも、そしてサチも納得して自分の死を受け入れた。エリザの父兄たちもそうだろう。でも、彼らの死は傷となって残された者たちに刻まれてしまっている。この物語は自分にとっての大切な人の死というものから目をそらさず、そこにこそテーマを絞って突き詰めているようにも見える。
でも、親しい人の死に囚われてその生き方を定めてしまっている多くの登場人物の中で、ひとり抗っているのがエリザベートに見えるんですよね。だからこそ、マリナは心からエリザに仕えている。そうして二人で一緒にいるからこそ、理想にしがみついていられるのだろう。
ペトリナには、誰も居なかった。肉親の死以外に負うものもなかった。だからこそ、血迷った。
ヒロトにとってもそうだろう。彼の場合は、負うものが大きすぎ重すぎた。だからこそ、彼は未来を定めてしまった。彼を捉えた幾多の死は、自らの死を無駄にする結末を許さない。
ヒロトの弱さ、人間らしさ、善性をマリナとの逃亡劇で良く見てしまったからこそ、ラストの展開は驚きとともに納得しかなかったのだろう。彼はもう、人類種の滅亡を避ける以外の選択肢を選べないのだ。それがどれほど、残酷な無常な選択だろうと。愚かでおぞましい選択だろうと。ほんと、可哀想にすらなってくる。彼の精神性が善良で素朴であるからこそなおさらに。狂っていない正気だからこそなおさらに。
思えば、エリザはまさに今回の勝利をもって、大事な人達の死を無駄にしたとも言えるんだよなあ。

エリザが継承した「万槍」の使用条件の違和感などもそうだけれど、えらい展開でラストを迎えているので、これで続きが出るかは不明、というのは酷ですよー!
実にドライブ感あって読み応えのあるアクションであり、人の死を真剣に見つめたドラマで面白さもブースト掛かっているだけに、ぜひ続きを堪能したいところです。
出ろー出ろー。