【デート・ア・ライブ フラグメント デート・ア・バレット 8】 東出 祐一郎/ NOCO 富士見ファンタジア文庫

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さあ――わたくしの戦争も終わらせましょう

「さて、それじゃあ……死にますか!」 大切な人を応援するため、自らを犠牲にする少女。
「それでは紗和さん。最後のデートを始めましょう」 好きな人と再会するため、走り続ける少女。
「世界が滅んでもいい。あなたが滅ぶなら構わない」 親しい人を独占するため、隣界を滅ぼそうとする少女。

ついに辿り着いた第一領域にて、緋衣響、時崎狂三、白の女王の殺し合いは終わりを迎える。
戦い続けた少女たちが下す選択とは――。「長い時間が掛かりましたけど。ちゃんと、叶いましたわ」

時崎狂三のもうひとつの戦争、ここに完結!

冒頭の響による臨界で出会った準精霊たちへのインタビューが、旅の終わりを感じさせてくれる。臨界を巡る旅の終わりだ。
同時に、それぞれに訪ねている臨界に残るか、それとも臨界を出るのか、というそれぞれの選択が、新しい旅立ちを予感させる。
心に響く、始まりだった。
緋衣響はどうして響って名前になったんでしょうね。
この娘のこと、最初は……というか、かなり後半までその正体は紗和さんなんじゃないかって、可能性を考え続けていたんですよ。いや、紗和さんが出てきてからもまだ疑ってましたね。なんなら、この巻で緋衣響という準精霊の成り立ちが語られるまでは、何らかの形で紗和さん要素が混じってるんじゃないか、と思ってたくらいで。
何しろ、主人公たる狂三からして、本人は本体じゃない分身体だし、その分身体からさらにシスタスという狂三でなくなってしまった狂三が出てくる始末。あの白の女王からして、狂三の反転体という風聞だった。狂三多すぎ問題である。狂三がこれだけ沢山いるんだから、紗和さんだって何人か分裂してても不思議じゃないだろう、と思うじゃない?
ところが、この響はそんな取ってつけたような、存在して良い理由、主要人物であるべき因果、なんてものを蹴っ飛ばして、自分が正真正銘なんにも関係ないところから現れた、どころか本当の無から、消えてしまった準精霊たちの残滓が寄り集まって出来た、塵も積もれば少女となるを体現した存在であることを示してみせた。
最初から狂三の親友たる資格があったわけじゃない、何もない所から発生した何者でもなかった者が、狂三の親友というポディションを……居なくなったら狂三が泣いちゃうだろう立ち位置を自分の力だけでもぎ取って、よじ登ってみせたということなのだろう。
大したもんだ、どころじゃない。喝采も喝采、大喝采のグランアレグリアだ。
そりゃ、紗和さんにだって目の敵にするし嫌うしあいつぶっ殺、とか思うよね。何しろ、狂三を独り占めするためだけに一つの世界をぶっ壊そうとまでする少女だ。狂三独占の最大の敵となったのが、もうひとりの自分ですらない、塵芥だったのだから。
そんな紗和さんが対決することになったのは、もう色んな意味でかつて自分の親友だった少女狂三とは違ってしまっていたのだろう。
彼女は恋をして、友達が出来た。
死んでしまっていた紗和はずっと過去に置き去りにされていた。狂三は時に囚われながらも、着々と進み続けていた。いや、本体の狂三は紆余曲折あった末にようやく進み出せた、という娘だったかもしれないけれど、このバレットの狂三は……最初に時の牢獄の中から抜け出して進み始めた狂三だと言えるのかもしれない。
士道に恋をして、恋に殉じる決意を硬めたときから、この狂三は一足先に前に進みだしたのかもしれない。
なるほど、紗和と対決する資格をもっとも有していたのは、この狂三であるべきだったのだろう。彼女こそが、ふさわしかったのだ。紗和との因縁に決着をつけるのは。
過去との決別、自分の犯した罪との相対。本編の本体たる狂三が物語の展開上、どうしても手を及ぼすことの出来なかった時崎狂三の精算を、紗和さんとの今度こその別れを、代わることの出来たのは恋をした狂三以外になかったのでしょう。
時崎狂三の長い長い、旅の終わりがここに確かにあったのでした。

そして、少女たちは旅立つ。
離れゆく臨界に残って世界を守っていく者たちに別れを告げて、狂三と響と外の世界に生きたいと願った多くの準精霊たちは、思い出を胸にいっぱい貯め込んで、旅に出る。
空っぽなんてどこにもない、エンプティーなんて埋め尽くされた、満ち満ちた新しい人生の旅路だ。
世界に産まれ落ちて、生きていく。大いに、好きなだけ思いっきり、泣くと良い。

シリーズ通して、色んなコスチュームを見せてくれた狂三だけれど、きっと最初から最後はこれだと決めていたのだろう。恋する狂三にもっとも相応しい、それは穢れなき純白のウェディング。
白無垢姿もサービスで。
ついに、狂三がついぞ口に出して言うことが出来なかった彼の名前を、士道の名前を呼ぶことが出来たのは感動でした。士道にとっても、この狂三はホントに特別だったからなあ。忘れないよ。
ハッピーエンド、想像していた以上に喜びと祝福に満ちたエンディングでした。スピンオフとしても、最高の一作でした。
完走、おつかれさまでした。