【オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど! 2】  コイル/雪子 電撃の新文芸

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同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活、その続き。

相沢咲月はドルオタで同僚の滝本さんにプロポーズされ、無事籍を入れる。
結婚式の写真も撮りすっかり新婚ムード。趣味も近くて、お互いに理解のあるふたりの打算で始めた偽装結婚は、徐々にかけがえのない本当の結婚へと変わっていって……。
超打算で結婚した咲月と、打算の顔して実は咲月がずっと好きだった滝本さんの偽装結婚――から本当の結婚になる、ふたりのオタクの話、第2弾。


一巻の段階で相沢さんと滝本くんの偽装結婚生活、シェアハウス婚な住み分けオタク生活は楽しくて楽しくて十分幸せそうだったのですけれど、ほんとの幸せはこっからでした。
もうタイトル、【オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ幸せなんだけど!】にした方が相応しいんじゃないか、というくらいの幸せ空間が形成されていく。
大きな旅館を営む実家の母と兄とうまくいっていない咲月は、毎年旅館の手伝いに実家に帰るのですけれど、もはや敵視してるんじゃないかという母と兄のプレッシャーに怯えながら、苦行を歯を食いしばって耐えるような里帰りだったんですね。
それが、今回は滝本さんと結婚報告がてら一緒に帰ることで、彼に母との間に入ってもらった上に色々とフォローしてくれたり守ってくれたり、と頼りになるなんてものじゃなかったんですね。
おかげで、今までほとんど交流のなかった兄のお嫁さんや子供たちとも仲良くなれて、母や兄とはまだ壁があるものの、何かと心に余裕をもって里帰りをやり過ごすことに成功する。
このときの彼の頼もしさは半端なく、長年のトラウマからも包まれるように守って和らげてもらったことで、もう咲月の心はキュンキュンと乙女回路を稼働させることになるのある。
いやもう、あれは惚れるわ。カッコいいなんてものじゃなかったもの。自分の絶対的な味方になってくれて、断絶していた母ともうまいことコミュニケーションとってくれて。ちゃっかり、義母と連絡先交換して交流し続けている、というのも凄いと言うかなんというか。コミュ力おばけすぎる。
そうして男性としての魅力に気づいてみれば、この滝本さんという人は完全にスパダリ、スーパーダーリンだったんですよね。完璧超人かよ! しかも、オタクとして理解があるどころじゃない同類!
あ、この人のこと好きだ、と気づいた途端にためらわずに偽装結婚じゃなくてちゃんとお付き合いしませんか、と攻める咲月も十分コミュ力おばけなんですけどね。
むしろ本命である咲月に対しては慎重も慎重、偽装結婚状態の現状維持でも十分幸せで下手に踏み込んでこれを壊したくない、と臆病になっていた滝本くんよりも大胆なんだよなあ。
いや、滝本くんってほんと完璧超人なんだけれど、好きな人に対しては純情で臆病で自信がなくて、というあたりがむしろ可愛らしさすらあって、そういう弱い部分も含めて完璧超人だっての!
咲月の方から扉を開いてくれたことで、もうしんぼうたまらなくなって抑え込んでいた好き好きオーラを全開にしてしまう滝本くんが、なんかもう可愛いんですよね。それでもおっかなびっくりで、一つ一つ段階を踏んでしまうのがまた可愛いというかなんというのか。お互いを名前で呼び合うまでも紆余曲折ありましたし。でも、その紆余曲折がまた楽しくて幸せで、というあたりが完全にラブラブカップルなんだよなあ。
二人して、お互いのやること成すことがもう全部好きすぎて、楽しすぎて。幸せオーラが漂ってくるどころかゲリラ豪雨のようにジャブジャブ降り注いでくるような塩梅である。
ふたりとも、一人で生きていく事に何の不安も不満もなかった孤独を苦にしないタイプだったと思うんですよね。それでも、どうしても一緒に居たい人が出来てしまった。帰る家にはいつだってあの人がいるのが当たり前になっていた。
出張が重なって、晩御飯は一緒に食べたけれどお互い違うホテルに戻ることになったとき、唐突に湧き上がってきた寂しい寂しい、という耐えきれない感情に頭の中を埋め尽くされていく咲月と滝本くんの姿に、なんか感慨深いものを感じてしまいました。好きという感情以上に、この時のお互いが居てくれないと耐えられない、という感情こそが二人を本物の夫婦にしてくれたんじゃないでしょうか。
そして尽くす系男子として、スパダリみたいな旦那様として、いたれりつくせり気を配って何でも先回りして好きな彼女のために手を尽くしていた滝本くんが、そうしないと咲月さんに嫌われるんじゃないか、不満に思うんじゃないか、という臆病さ気の小ささ、不安や怯えから開放されて、本当の意味で奥さんのことを信じ愛することが出来て、全部自分がやるんじゃなくて二人でやっていこう、二人で頑張っていこう、出来ないことも弱い所も全部見せて、それでも一緒に居てくれる、受け入れてくれる、そんな自分をこそ丸ごと抱きしめてくれる。一緒に歩いていける相手として、ようやく心を全部さらけだせたことで、相沢咲月と滝本隆太、いや滝本隆太と滝本咲月という彼らだけの夫婦の形にたどり着く、その一歩を歩み出せたことで物語の締めとなる。美しいと言ってく良いくらいの工程でありました。
これだけ公私に渡って幸せというものを目一杯溢れさせているカップルも、なかなかないだろうなあ。その幸福感のおすそ分けを沢山いただけました、お腹いっぱいだー。これからも末永くお幸せに〜。