【リアデイルの大地にて】  Ceez/てんまそ エンターブレイン

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目覚めたのは200年後の世界――そこで彼女が為すべきことは?

事故によって生命維持装置なしには生きていくことができない身体となってしまった少女"各務桂菜"はVRMMORPG『リアデイル』の中でだけ自由になれた。そんなある日、彼女は生命維持装置の停止によって命を落としてしまう。しかし、ふと目を覚ますとそこは自らがプレイしていた『リアデイル』の世界……の更に200年後の世界!? 彼女はハイエルフ"ケーナ"として、200年の間に何が起こったのかを調べつつ、この世界に生きる人々やかつて自らが生み出したNPCと交流を深めていくのだが――。
書籍だけの特別短編『職業参観の顛末』を収録!




リアデイル、懐かしいなあ。「小説家になろう」のサイトで作品を読み始めた際にブックマークした、本当に最初期の作品です。
10年以上前にスタートした作品ですから、もう同じジャンルの中でも古典と言ってもいいんじゃないでしょうか。なので、今も続くゲームの中と同じ世界に生まれ変わってしまう、というカテゴリーの作品において、アーキタイプに近い作品群の一つでもあるわけです。だから、ゲームと同じ世界に転生してしまう物語としては、もう常識だったり古いと言っていいくらいのネタや設定なんかが頻繁に運用されているのも当然といえば当然でしょう。
なので、今読んだらどう感じるかな、と思う所もあったのですが、これがまた思いの外読みやすい!
いやー、熟れているというか馴染んでいるというべきか。以前に読んだと言ってももう随分と前ですけれど、結構内容も覚えてるんですよね。だからといって退屈だったり飽いてきてしまうこともなく、スルスルと読めつつも上滑りせずに思わずじっくりと没頭してしまいました。おもしろいなー。
ケーナが目を覚ましたリアデイルの世界は、彼女たちがプレイヤーとして遊んでいた時代から200年も時が過ぎ、色々と変わっていることもあれば、エルフやドワーフといった長寿の種族も存在していることから、ちょっと前のこととして認識している層も居て、見知らぬ世界と時代に置いてけぼり、とまではいかないちょっと世間知らずの異邦人、という感じで世界を歩きはじめます。
もっとも、ケーナとしては現実からゲーム世界に突然放り出されたのですから、彼女自身は置いてけぼりの感覚だったのかもしれませんが。それでも、現実世界では医療器具に拘束され寝たきり状態で、自分の足で歩いた経験も乏しかった身。自分の体一つで世界を歩けるその感覚は、最先端技術を駆使したゲーム時代よりもやはり芳醇で、それが嬉しくもあり、現実では死んでしまったと思しき事実に衝撃を受け、訪れた村で出会った人たちに良くして貰えた事で大いに楽しみ、200年という時間の経過、そしてゲームの行く末を知ることで孤独の身となったことを知って寂しさに身を震わせ、とケーナは様々な感情を混在させながらこの新しい世界の旅をはじめるのです。
色々と感情もまとまらなかったんでしょうね。ゲーム時代に作ったNPCの自分の子供たち(養子ですが)が今も健在で、現実となった世界で子供たちもまた生きた人間……エルフとドワーフですが、として母親であるケーナと再会することになるのですが、ケーナってば最初けっこう子供相手に対応がぞんざいなんですよね。200年ぶりに慕っていた母親との再会なんですから、相手ももういい年した大人であったとしてももう少し優しくしてあげればよかったのに。
と、まあケーナ当人も落ち着きを取り戻した後は自分の対応があんまりよろしくないものだったと自覚して、ちゃんと謝った上で改めて彼らの母親としてちゃんと向き合うと決めるのですが。
というわけで、面白いことにこの主人公のケーナさん、美少女ハイエルフであるのですが同時に三人の子持ち(それぞれ国の重鎮枠)という母親キャラでもあるんですね。いや、ケーナ本人は母親キャラのつもりは全然ないものと思われますけれど、周りから見たら美少女エルフでちょっと世間知らずの天然だけど凄腕の冒険者、と思ったら国の偉いさんを子供に持つという実はご年配!? それも人妻!?(人妻じゃありません)というギャップの驚愕を味わうはめになるので、まあそのへんが何とも面白かったり。
それ以外にも、ケーナ当人もまた伝説の魔女として、昔話にも語られる有名人だったりするなど、ゲーム時代の武勇伝が今もなお残っていたりするので、まだまだケーナの正体というか本性に迫る展開は待機中といったところでしょうか。
まだなかなか個性的な子供たち(といっても娘なんか結婚してて旦那いたり、とホントにイイ大人たちなのですが)との再会が済んだ程度で、このリアデイルという世界についてもまだケーナは何も知りませんし、かつてのゲームプレイヤーたちがどうなったのか。そもそも、ゲームと同じに見えるこの世界とはいったいなんなのか。様々な謎や秘密、そして冒険の数々とまだ見ぬ仲間たちとの出会いはこれからなので、まずはオープニングイベントが終わったくらいの感覚でいいんではないでしょうか。
既に既刊もだいぶ出ているので、さっさと追いかけていくことにしましょう。
ケーナの冒険は、まだはじまったばかりだ!