【悪の華道を行きましょう】  真冬日/やましろ 梅太 一迅社ノベルス

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コミカライズで話題沸騰&人気大爆発の爽快スッキリラブコメディ、原作小説ついに書籍化!!

王太子に婚約破棄された末、ハゲデブオヤジと結婚することになってしまったセレスティーヌ。
しかし、彼女は式の最中気づいてしまう。
ここは似非貴族風の学園乙女ゲームの世界で、自分はヒロインに散々嫌がらせをした挙句、中年宰相の元へ無理やり嫁がされる悪役令嬢であること。
そして、目の前のガマガエルそっくりなハゲデブ宰相の醜悪な容姿が……悪くない、むしろ……大好きなことに――!
枯れ専悪役令嬢セレスティーヌの麗しき覇道を描いた爽快スッキリラブコメディ!!
待って! 待って! こんなガマガエルは居ませんことよ?!
ガマガエルにそっくりというレベルではないんですが? 人類? 人間なの? 樽型のコケシじゃないの!? 魁!!クロマティ高校のメカ沢くんが一番近似値なんですが!?

まず以て見た目での掴み最強である。女性が主人公の物語で相手が中年オヤジという展開は決して珍しいとまでは言わないものなんでしょうけれど、エロゲとかでなく少女漫画系統のお話なら何だかんだイケオジだったりするんですよね。
しかしこれはそれ以前に人間? と疑問符がつくレベルの怪異なので、いやこれ枯れ専の適応範囲に入るんでしょうか? どっか枯れてる?
そりゃ、頭が干上がっているっぽいはありますけれど。
もはや枯れ専でもジジ専でもないような気がしますが、前世で年上属性持ちだったセレスティーヌとしては、この宰相がどストライクだったのです。
宰相閣下も、その見た目からとても女性にはモテなさそう、と思いましたがいや実際モテはしないのですけれど、その権力と財力を以てカネ目当ての女性には困らなかったようで、女性慣れはしてるんですよね。ずっと女の人とは縁のない純情系のオヤジなのだと勘違いしていました。
むしろ、悪徳を以て国を支配する悪の権化だったのである。生来の性根もあったのだろうけれど、人に愛される事のなかった彼は、愛を知らず人を信じず金と権力だけを奉じて生きてきた、そしてそんな生き方に一抹の寂しさを感じていた侘しい男だったのである。
そんな彼が愛を知ってしまった。女の方も、自分の欲に忠実に生きてきて、他人なんて自分に都合の良い存在でしかなかったはずなのに、前世を思い出し、そして恋を知ってしまった。
恋は、愛は、時として人を内面から輝かせる。そうして得た光は、心を洗い、外にまで漏れ出して外見すらも見違えさせる。そうして、セレスティーヌは恋をする以前とは比較にならないほどの魔性の美貌を手に入れたのでした。宰相は……ハゲを剃った程度で別にイケオジに生まれ変わるとかありませんでした。いいんだ、それで。セレスの監修で清潔感は倍増ししたようなのでそれで十分なんじゃないだろうか。
しかし、彼らは愛を知って幸福になり、コンプレックスや他人を妬み嫉むネガティブな感情から解き放たれた、と言っても決して善人になったわけではありません。彼らは悪徳宰相であり傾国の美女。幸せな家庭を築きながらも、敵対するものは容赦なく叩き潰し、彼らが支配するこの国を蝕む者は残酷に引き裂いていく。彼ら夫婦は、変わらず悪の華なのだ。
しかし、この国唯一無二の悪として、他の邪悪は存在自体を許さない。悪を以て悪を叩く、そんな美しい花道をこの夫婦は傲岸不遜に歩いていくのである。
そんな一本筋の通った彼らの悪の華道は、相対する人々を照らす鏡のようにも思えてくる。その心に光があれば、光が返ってくる。その心根に醜い闇がはびこっているのなら、相応のおぞましい闇が返ってくる。
心の醜さを、卑しさを持っているほどこの夫婦に反発を覚えて噛みつこうとして、逆にむごたらしい末路を辿っているようにも見えるんですね。
一方で、セレスの美しさに、この凸凹夫婦の幸せオーラにネガティブな感情ばかりではなく、どこか羨むような憧れるような、光を見た人たちは吸い寄せられるように惹かれていくのである。
セレスに敵対したり感情的に攻撃してきた人たちも、皆が有象無象の区別なく叩き潰されるのではなく、逆に救われ親しくなるケースも散見されるんですよね。彼らの運命が別れたのは、やはりその人の持つ心根に要因があるように思えます。
果たして、意図してセレスはそんな人達を判別して手を差し伸べているのかは、ちょっとわかりませんけれど。

しかし、宰相の息子、オヤジが寿命でくたばったあとの義母であるセレスの後添えを密かに狙っているとか、結構気持ち悪いぞw
宰相閣下との間に生まれた息子も息子で、まだ乳飲み子の段階で母に近づく全ての男に殺意振りまいてるの、既にやべえマザコンなんですがw この子はこの子で赤ん坊の段階で既に気持ち悪いぞw
こうなってみると、一周回ってすべてが気持ち悪い宰相閣下が、セレスの仰る通りに可愛く見えてくる不思議。傍目、完全に毒婦に骨抜きにされて言いなりになってるダメオヤジなんですけどねえ。
とはいえ、セレスティーヌは本当に宰相に一途でメロメロで他の男は眼中にないだけに、なんとも凸凹なラブラブカップルっぷりをひたすら見せつけられる、うんこれは何を見せられているんでしょうね? という作中周囲の何とも言えない空気感に共感を抱かざるを得ない怪作でありました。
でもまあ、当人達は本当に幸せ以外のなにものでもないのですから、良きですよ、良き。