【16年間魔法が使えず落ちこぼれだった俺が、科学者だった前世を思い出して異世界無双】  ねぶくろ/花ヶ田 ファミ通文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス

第2回ファミ通文庫大賞優秀賞受賞作!

生まれた時から魔法が使えず落ちこぼれと言われてきた貴族の少年、ロニー。彼は十六歳の誕生日に偶然、科学者だった前世の記憶を思い出す。そして好奇心から魔法の謎を科学の力で解明したいと思い立った彼は、弟ヨハンの力を借りて研究を開始した。そんなある日、魔法を人間に与えたという「精霊」を祀った祠が屋敷の近くにあることを知り、祠へと赴いたロニーはそこで自らを精霊と名乗る蛇のような生き物・セイリュウと出会う。さらにセイリュウは「君にも魔法が使えるようになる方法があるぜ」といってきて――!?



これ、弟のヨハンくんがイイ子すぎるでしょう。
魔法が使えず落ちこぼれ扱いの兄。両親は実の子とは思えない冷たい態度で、使用人たちの多くもロニーの事を居ないものとして扱ったり、主筋とは思えないほどぞんざいな扱いだったりする中で、ヨハンは無邪気に兄ロニーを慕ってくるのである。
ロニーが十六歳であるのに対してヨハンはまだ十二歳。この年令で周りに影響されずに、ちゃんとした自分の考えを持っていて兄を蔑ろにしようとしないその態度は、精神的な強さすら感じるんですよね。
この弟がいなかったら、自分はこの環境に耐えられなかっただろう、とロニーが述懐するほどですしね。自分が非常に魔法の才能豊かであるという自覚もあるのに、周りと同じように兄を見下さないって、なかなか出来ないですよ。
はたして、ヨハンが兄を純粋に慕うだけの何らかの出来事があったのでしょうか。あった方が自然とも思うのですけれど、彼の生来の気質だったとしてもそれはそれで彼らしい。
まあこんな弟ですから、ロニーが当主の座はヨハンが継げばいいんじゃないかな、と思っているのもまあわかるんですよね。本来なら、もっと才能豊かな弟にもっと嫉妬してもおかしくはないのかもしれませんけれど、それだけロニーの心は弟に救われていたんでしょうね。
とは言え、これまでの経緯もあって、ロニーには積極的にヨハンを押しのけて家を継ぎたいという思いは元々薄かったわけである。
事故で頭を打って前世の記憶を取り戻してからも、家の事情にはとんと興味なく周りを見返してやるなどという考えも浮かばず、ひたすら魔法の仕組みの解明に没頭してしまえたのも、ヨハンに任せるという気持ちがあったからじゃないでしょうか。
ヨハンはヨハンで、大好きな兄が見直され皆から称賛されることを望んでいるようなのですが。このあたりの、後継問題のゴタゴタを真剣に考えていないのはヨハンもまだ子供なんだなあ、と思える所なんですよね。まだ12歳ですからね、いい意味でも悪い意味でも無邪気なのでしょう。
感覚的主観的な観点からしか行われてこなかった魔法の行使。その励起段階から、論理的客観的に科学的アプローチで魔法の仕組みを紐解いていこうとするロニー。実際に魔法が使えるヨハンに手伝ってもらいながら、様々なアプローチを試すことで今までにない魔法の作用を見つけ始める。
ある意味、この時期がロニーとヨハンにとって一番楽しい時期だったのかもしれない。実験によって幾つもの発見をし、未知とすら思われていなかった魔法の可能性を切り拓いていく。

しかし調査の一環で訪れた精霊の祠で、本物の精霊セイリュウと出会ったことで、ロニーは人生における二度目の転機を迎えてしまう。
セイリュウの助言によって、今まで使えなかった魔法を使えるようになってしまったロニー。しかし、その力はロニーとそれを取り巻く人々に大きな可能性とともに人生の岐路となる選択を突きつけることになる。

これ、一巻としては非常に中途半端なところで終わってしまっているのがちょっと不満といえば不満ですか。ものすごい途中でぶった切られてて、肝心な所まで届いていませんしね。
ヒロインとしては使用人のカーラと、ダミアンがそれになるんだろうか。フィオレット嬢はそのままヨハンの許嫁なので、ヨハンとうまく行ってほしいなあ、と思うのだけれど。