【望まぬ不死の冒険者 1】 丘野優/ じゃいあん オーバーラップノベルス

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最弱(スケルトン)から進化でめざす最強冒険者!

最高の神銀級冒険者を目指し早十年。
おちこぼれ銅級冒険者のレントは、ソロで潜った《水月の迷宮》で《龍》と遭遇し、その圧倒的な力の前に為す術なく喰われた。

――そして、レントは“目覚めた"。

なぜか最弱モンスター「スケルトン」の姿で……!?
レントは討伐を回避するため、魔物の『存在進化』――魔物を倒して経験を積み、上位の魔物へ進化することを目指す。
存在進化して「グール」になれば、人間だと誤魔化せるかもしれない。
その最中、レントはついに人間の駆け出し冒険者リナ・ルパージュと出会う。
魔物からリナを助けたレントは、存在進化で得た新しい力の強さを知り……!?
強大な魔物と戦い、多くの謎に出会い、そして強くなる。
死してもなお遙かなる神銀級を目指して、不死者レントの『冒険』がいま、始まりを告げる――!


むむむ? 落ちこぼれとは?
冒頭から主人公のレントがダンジョンアタックしていて、普段通っていたダンジョンで未踏破領域を発見してしまって、そこで命を落としてしまう、という描写から始まるので、冒険者レント・ファイナがどんな人物かという評価については彼自身の語りから推察するしかなかったのですが。
彼の自己評価は明らかな力量不足にも関わらず無様に冒険者業にしがみついている場末の三流冒険者、という風情なんですよね。周りからも呆れられて、半ば見放されてるような事を言っているので(もうパーティーを組んでくれる人もいなくなった、みたいな)、親しい人もいない孤独な身の上なんだろうなあ、と思っちゃったんですよね。
そういう身の上だったら、不死人となって人間の世界と縁が途切れてしまっても差し障りのない境遇なのか、なんて事も思いつつ。
普通、こういうアンデット化って人であった頃の意識が戻ってみても、実は長い年月が経ってるケースが多いじゃないですか。てっきり、もうレントが生きていた時代から何百年も経って浦島太郎状態になるのかな、と想像していたのですが……。
あれ!? タイムラグまったく無いの!?
龍に喰われて気がついたらスケルトンと化していたレントですけれど、マジで意識が途切れてから「目覚める」までほとんど時間が経っていなかったみたいなんですよね。何とか町に出ても誤魔化せるくらいの存在進化、スケルトンから辛うじて人間に見える屍鬼という状態まで進化出来てから町に戻ってきた際に、レントが消息不明になったという日からの時間経過を換算すると、どうもレントが意識を失っていた時間って一日もないんじゃ、という結論になるんですよね。
そんな僅かな時間でスケルトンになってしまっていたのか。
そもそも、美味しくパクリと巨大な龍に喰われた、にも関わらず綺麗に白骨化して放置されていた、という事がおかしいと言えばおかしいんですよね。喰われたら咀嚼されて、骨もバキバキでそんな綺麗な状態で残らないじゃないですか。
丁寧にお箸で食べられた焼き魚じゃあるまいし。筋肉や内臓、脳髄や髪の毛といった部分まで綺麗サッパリなくなっていたわけですしねえ。
そもそも、喰われたという所からなにか違うのか。アンデット化したにも関わらず、人間の意識が丸々損なわれずに残っていた、というのも非常にありえざる現象なわけですしね。モンスターに喰われたというより、何らかの儀式みたいなものだったんだろうか、あの龍に喰われるという行為は。
存在進化のペースも、どうも異様に速い気がするし。

話は戻りますが、ともかくレントが意識を失っていた時間、消息不明になっていた期間は思いの外短く、何十年何百年も経っていて知り合いは誰もいなくなっていた、なんてことは一切なく、レントの交友関係は断絶無くそのまま続いていたわけだ。
そうしてわかってきたことは……いや、レントって全然孤立とかしてないですよね!?
それどころか、銅級下位という初心者は脱出したものの木っ端冒険者には変わらないという位階にも関わらず、異様に顔が広く知り合いが多い。
腕っぷしとは関係ないところで、同じ冒険者からもギルド関係者からも、何なら街の市民たちからも非常に信頼され親しまれて慕われている事が見て取れるのである。
……いや、これっていわゆる「街の顔役」ってやつじゃないの?
どうもレント本人はどうでもいい雑用をこなしている程度の意識だったみたいだけれど、やってることはトラブルシューターであり監督役でありバランサーたる調整役であり、相談役であり潤滑油であり、となんかもう街の運営そのものに欠かせない人物っぽいのですが。
レントって、これ見てる限り人と関わってこそその能力をいかんなく発揮するタイプじゃないんですか。なんでソロ冒険者なんかやってるんだ!? 一番向いてないんじゃないの!?
ダンジョンアタックの現場でも、支援や指揮役として抜群の手練手管を示してくれそうだし、現場から離れた後方でも、これ兵站役として遺憾なく手腕発揮しそうですし、何なら組織人として尋常ならざる適正を持ってたっぽいんだよなあ。
冒険者ギルドが、レントが引退した際には自分ところに引っ張る気満々だった、というのもこれは凄く納得できるわー。同業者からの信頼も非常に厚いことからも、ゆくゆくはギルドマスター候補という将来もあったのかもしれない。
長年の腐れ縁たる銀級冒険者にして魔導研究者であるロレーヌとは、周囲からは付き合っているを通り越して、いつ結婚するんだろうと思われてたみたいで、レントにはそんな男女関係的な意識はまったくなかったみたいだけど、もし何事もなく冒険者引退ルートを辿って身辺整理した際に彼女との関係を改めて考えた際に、まあとんとんと結婚に発展してもおかしくはない関係にもまあ見えるんですよねえ。
……こうして考えると、もし今回の出来事がなくて自身の夢を諦めて現実に生きるルートをレントが辿ったとしても、彼はその実力と実績でちゃんと幸せを掴んだんじゃないか、と思えるんですよね。少なくとも将来が明確に描ける程度には、彼にはその筋道がちゃんと立っていた。
でも、そうはならなかった。彼は、正道ではなく邪道ではあるが、最高の冒険者たる神銀(ミスリル)級冒険者への道を歩み始めてしまった。
周囲も、そんな彼の無謀な夢をずっと応援していた、してしまっていたんですよねえ。その結果がこれ、というのは果たして幸だったのか不幸だったのか。
しかし、リナという新米冒険者の助けもあって、正体を隠しながらも街に戻ってこれたレント。ロレーヌだけには現状を打ち明けて匿って貰ったものの、他の人達には仮面を被って正体を隠してなんとかしらばっくれようとしてますけれど……これ、めっさバレまくってないですかね!?
いや、この男、自分がどれだけ顔が広いか、他人からどう思われているか自覚が全然ないもんだから、目立たないうらぶれた場末の冒険者だという自覚と周囲からの認識が完全に食い違ってるんですよね。仮面被ってようと、みんなレントだってわかるよそれ! ってか、街中の人だいたいはレントのこと見知ってるっぽいだけに、なんかそのうちレントだけが隠しきってる、と思ってる恥ずかしい状況になりそうなんだが。
ギルドの受付のお姉さんなんかは対応が完全に事務的だから、バレたのかよくわからんのだけれど……いや、バレるよね。ってか、改めて別人として冒険者登録しにいったのに、ファミリーネームだけ変えてレントの名前は変えない、って隠してるつもりなんだろうか。おまけに、ロレーヌの所に厄介になってるとか、事情は言えないが察してくれと言ってる風にしか見えないw
相手からすると隠す気ないけれどなんか事情があるんだろうなあ、知らないフリしていてあげましょう。とお気遣いされてしまう状況にしか見えないんですけどw

しかし、アンデット化しながら人間の世界と断絶せずに、街に戻ってきて人間のフリして冒険者業続けようという展開は結構珍しいかも。導入としてはなかなかおもしろい転がりっぷりだったので、そのまま次巻を読んでいきたいと思います。