【嫌われ者の公爵令嬢。 】 池中織奈/淵゛ GAノベル

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幼い頃に、とある高貴な女性に「悪役令嬢」のレッテルを貼られて、貴族社会で孤立してしまったオティーリエ。

苦しい立場で耐え続けながら、王族や貴族の子女が入学する学園に入ることに。
年々酷くなる周囲からの対応に耐えながら、オティーリエは学生生活を続ける。なぜなら――
学園内で婚約者が見つからなければ、オティーリエは貴族の地位を棄てて平民になる約束を両親と取り付けていた。

私の名前はオティーリエ・シェフィンコ。

シェフィンコ公爵の一人娘にして――、自他認める嫌われ者の公爵令嬢である。
王太子妃からよく思われていないため、周りに嫌われまくっている私が貴族ばかりの学園に通う。


うわぁ、これはキツいなあ。幼児の頃から謂れのない「悪役令嬢」というレッテルを貼られて排斥されてきたオティーリエ。この娘自身には何の責も理由もないんですよね。そんな嫌われるような事は何もしていないのに、貴族社会からは忌避され敬遠され親しい人も出来ないまま地獄のような環境に置かれ続けていたのがこの娘である。
こうなってしまったのも、貴族社会に大きな影響を与え続けている王太子妃から敵視されてしまったから。その王太子妃、オリーティエ以外には本当に優しく温厚な人で聖女のように扱われている人なんですね。公共福祉への功績も多くあり、品行方正温厚篤実、性格的にも非常に柔らかな人で信奉者も多い。必然的に社会への影響は大きく、そんな王太子妃が唯一異様に嫌っているオリーティエは、どうしたって色眼鏡で見られるようになってしまうのである。
心から王太子妃の言う事を信じてしまう人も居れば、なんか変だけれど国中に慕われ愛されている聖女の言うことには従っておく方がいいだろうと空気を読むものが大半で、わざわざ国母となろうという人に逆らってまで、一人の公爵令嬢と親しくなろうなんて人は一人もいなかったのである。

こんなん絶対性格歪むだろう、と思うような境遇なのですがオリーティエが偉かったのはここからなんですよね。
オリーティエが嫌われだした幼児の頃は、それこそ言われるような我儘で高慢で両親に過保護に愛されすぎたせいで、自分は世界一偉くて望んだ事はなんだって叶って当然なんだ、と周りを見下したような嫌な子だったオリーティエ。そのままスクスクと育てば、きっと王太子妃ルイーゼが語るような典型的な悪役令嬢に成り果てただろう。
オリーティエの両親である公爵夫妻は、国中から嫌われてしまった娘をそれでもずっと味方をしてくれて愛してくれている、オリーティエにとっても心の支えとなっている人たちなのだけれど、親としては完全に教育に失敗してるんですよね。この二人は子供を甘やかすばかりで、何一つ教え諭すようなことをしなかった。オリーティエの幼い我儘も全部聞いてあげるばかりで、叱ったり言い聞かせたりするような事は一切しなかった。オリーティエがどうして自分が嫌われているのかわからずに居たときも、少なくとも彼女自身のどこが悪かったのか、肯定するばかりで指摘もしてくれなかった。
オリーティエは慕っているけれど、まあ親としてはダメダメである。
でもオリーティエは何だかよくわからないうちに突き放され嫌悪され避けられて、幼心にも苦しみずっと傷ついていたのである。自分は悪くないのに、と頑なに自分を親の言うがまま肯定し続けたら、きっと歪んでしまったのでしょうけれど、この娘は傷つき苦しんで、こんなに嫌われるのは自分にもなにか理由があるんじゃないか、と考えるようになったのである。
ほんとはね、まだ5歳だの6歳だのという幼い子供に、自己否定させるなんて痛ましい意外のなにものでもないと思うのだけれど。
でも、痛ましくはあってもオリーティエ自身は立派でした。自分の至らない点を自覚しようとして、ちゃんと周りの他人の意見を聞こうとしたのですから。
親に聞いても何も言ってくれないから、自分に仕えている使用人たちに聞いて回るのである。まだ小さな幼子が。自分の何が悪いのか言ってほしい、直すから。ちゃんと直して良い子になるから嫌いにならないで、と。
当時その傍若無人さから、使用人たちからも嫌われていたオリーティエだけれど、その健気で必死で誠実な姿に使用人たちはみんな心打たれ、というかこんな小さな子に泣きながらこんな事言われて縋られて、打ちのめされない大人はいないでしょう。
国中から嫌われる悪役令嬢になってしまったオリーティエだけれど、これを機会に使用人たちはみんな心から自分たちの主人であるこの娘の味方となって、寄り添ってくれるようになるのである。
オリーティエもみんなの率直な意見をちゃんと聞き入れ、風評とは異なる立派な淑女となっていくのでした。
彼女が立派なのは、誰かに言われて我が身を振り返るのではなく、本当に自分だけで自覚して、自分の意思で謝ってまわって、自分の声で想いを届けて回った事であるのでしょう。ここは本当に尊敬できるんですよね。

しかし、オリーティエがどれほど心を改め優しく誠実な貴族令嬢となろうとも、貴族社会からはハブられ続け、なにか問題が起きればあれは悪役令嬢の関与があったのだ、とやってもいない悪行を語られ、嫌われ続ける日々。さすがにもう、貴族社会では生きていけないだろうと、成人したら平民に身を落として貴族から離れた世界で生きていこうと、決めているオリーティエは頻繁に街に出入りするようになり、そこで知人友人を増やしていく。
そんな折に、ついに貴族の子女が通う学校にオリーティエも通うことになり、この物語が本格的にはじまるのである。

とにかく、ルイーゼの言うことを頭から信じて自分で考えようとしない、王太子妃の信奉者たちがホントにうざったい。オリーティエは自分から関わろうとしないのに、向こうから出張ってきて嫌味やら罵声やらを浴びせてくるのですから、そりゃもううんざりしてくる。オリーティエもそういう態度には慣れてしまっているとはいえ、辛かったりしんどかったりするだろうに。
しかし、オリーティエの我慢強く誠実は態度は、徐々に王太子妃の影響の低い下級貴族や平民出の学生達の間で好感を勝ち取っていくんですね。さらに、外国からの留学生ということで、王太子妃の影響の少ないイフムートという青年が、異様な環境の中でも毅然とし続けているオリーティエに興味を抱いて近づいてきて、初めて貴族社会の中で彼女は友達を得るのである。
学園での生活はもう最初から諦めしかなかったオリーティエだけれど、こうして徐々にだけれど楽しいと思うことや親しくできる人が増えてきて、ちょっとずつ何かが変わってきた中で、とうとうその娘が現れる。

ナーテ・ウェシーシャ。平民育ちの伯爵令嬢で、ルイーゼしか知らないとある物語の主人公。幾人かの男性たちにとって、運命となる少女。
でも、ルイーゼの影響下にある貴族社会で過ごした事がなかったからこそ、ある意味真っ当な感性を持ったその娘ナーテは、訳のわからない「運命」の少女というレッテルを貼ってくる出会ったこともない王太子妃や、彼女に影響されてナーテ本人を見ようともせず、それでいてしつこく絡んでくる第二王子たち、そしてそんなナーテを異物として腫れ物扱いし、中には排斥しようと仕掛けてくる貴族令嬢たち、そんな異様な環境に置かれてしまった自分の身に怯え……そんな自分を気遣い心配して匿い助けてくれたオリーティエに、懐いてしまうのである。

これは、王太子妃ルイーゼが夢見るほどに思い描いていた、理想の展開を見事なくらいに盛大に打ち壊す、決定的なルートの逸脱! それをまだ、ルイーゼは知らないのだけれど、オリーティエがこれまでずっと被ってきた理不尽への、打開に向けた強烈な一歩ともなっていて、これから果たしてどう話が転がっていくのか、さあ盛り上がってきましたよ!?