【悪役令嬢と悪役令息が、出逢って恋に落ちたなら ~名無しの精霊と契約して追い出された令嬢は、今日も令息と競い合っているようです】 榛名丼/さらちよみ GAノベル

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「ユーリ様って、すごく悪役っぽいですわよね」
「僕にシンパシーでも感じているのか? 迷惑だからやめてくれ」
無能と蔑まれる悪役令嬢と天才と敬遠される悪役令息の、不器用だけど温かい恋物語。

名門貴族の出身でありながら、“名無し"と呼ばれる最弱精霊と契約してしまった落ちこぼれ令嬢ブリジットは、その日第三王子ジョセフから婚約破棄を言い渡された。
彼の言いつけでそれまで高慢な令嬢を演じていたブリジットに同情する人物は、誰もおらず……そんなとき、同じ魔法学院に通う公爵令息ユーリが彼女に声をかける。
「第三王子の婚約者は、手のつけられない馬鹿娘だと聞いていたが」
何者をも寄せつけない実力と氷のように冷たい性格から氷の刃と恐れられるユーリだが、彼だけは赤い妖精と蔑まれるブリジットに真っ向から向き合う。やがてその巡り合わせは、落ちていくしかなかったブリジットの未来を変えていくきっかけになり――。
「……まったく、無駄に心配させられた」
「……心配、してくださったんですの?」
そんな中、彼女が契約した最弱精霊にも覚醒の兆しが見え始め……?
――これは無能と蔑まれる悪役令嬢と、天才と敬遠される悪役令息が惹かれ合い、やがて恋に落ちていく物語。


うわぁ、これはうわぁ……ですよ。ジョセフ王子、この人絶対にサイコパスでしょう。
ブリジットの事を好きな男に染められやすい女、と安易に思うなかれ。
いや確かに、ジョセフ王子の好みだからって馬鹿で高慢な女を十年近く身体に染み付いてしまうほど演じ続ける、って馬鹿じゃないの、と言いたくなるけれど。
ブリジットの境遇を知ってしまうと唯一のヨスガであったジョセフ王子にすがってしまうのもわかるんですよね。それを恋と信じていたら、なおさらに。
しかも、あの王子どうも恣意的にブリジットが自分に依存するように誘導していた節もありますし。
名高い精霊使いの血統でありながら、微精霊しか喚び出せずに無能の烙印を押され、両親から見放されてしまったブリジット。そんな居場所も何もかも失ってしまった彼女に、婚約者にしてあげると餌を垂らして近づいてきたのがジョセフ王子。
王子の存在はブリジットにとって救いであり白馬の王子様そのものだったんですよね。幼心に傷ついた少女の心に付け込むように、ブリジットの心を支配していく王子。恋しているから、救われたから、と必死に王子の歓心を買おうと彼の言うがままに、似合わぬキャラクターを作っていくブリジットを、王子は丹念に丹念に甚振っていくのである。
逆らう事など思い浮かばないくらい依存させて、そんな彼女の心根を痛めつけていく、在り方そのものを踏みにじっていく。ブリジットに傷を刻みつけていく事をまるで喜ぶかのように執拗に。
あれ、婚約破棄ですら後々になってみると、単にもっとブリジットを傷つけるための演出だったんじゃないか、と思えてくる。リサに対するあのぞんざいな扱いといい、あれリサって思いっきりただの当て馬ですよね。むしろ、ジョセフ王子の眼中にはブリジットしかいないんじゃないだろうか。
相手を傷つけることで喜びを得る、というのはもうサイコパスとしか言いようがないじゃないですか。

単に頭の軽いバカ王子、ならそんなに心配する必要も感じないのですが、この王子からはひしひしとヤバい病んだ空気が漂ってくるだけに、ちょっと油断していいような生中な相手じゃなさそうなんだよなあ。
そんな彼に利用されたリサは、もう憐れとしかいいようがないのだけれど、何しろ中身が軽い底も浅いこっちは本物のおバカだからなあ。あんまり同情も湧きません。

しかし幼少期からあれだけネチネチと傷つけられてきたのなら、ブリジットももっと心の整形が歪んでしまいそうなものだけれど、生来の善良さ優しさが非常に強固だったんですよね。
あれだけ傷つきながら、幼児の頃ですら自分よりも他人を想って行動してしまえるそれは、いっそ強さですらあるんですよね。
どれだけ傷ついて血を流し続けても、心の形だけは変わることがなかった。そんな彼女を支え続けたのが、彼女が暮らす離れに務める使用人たちはわけですけれど。両親から与えられなかった愛情を、親代わりに、姉兄のように彼らが惜しみなく注いでくれたお陰で、ブリジットはその本質を損なわずに済んだのでしょう。お互いを支え合って、彼らは生きてきたわけだ。
そんなブリジットにとって、王子との婚約は自分を守るための鎧であると同時に、本来の自分を閉じ込める拘束具でもあったのだけれど、婚約破棄はいわば彼女にとっての自由の獲得でもあったんですよね。落ち込むブリジットよりも、むしろ彼女が傷つけられるのを間近で見続けてきたシエンナをはじめとした従者たちの方が手放しで喜んでいたのが印象的でした。
王子の好みでまとっていた派手な衣装もけばけばしい化粧も拭い去り、イメチェンをはかるブリジット……というわけには簡単にはいかず。王子への未練ではないのでしょうけれど、長年続けていた事は心身に染み付いてしまっていて、なかなか変える勇気が出ない、というのもまあわかります。
そういうときこそ新しい男ですよ、というわけでもないんでしょうけれどw
出会った孤高の天才ユーリは、その辛辣で遠慮呵責のない毒舌や冷たい態度で周囲を遠ざけていたものの、ある意味ダメージ耐性のあるブリジットはそんなユーリの棘に、逃げ出さずに真正面から相対しているうちに、決して彼の言動に悪意や攻撃性があるわけじゃない事がわかってくるんですね。
そうして、本来の自分をさらけ出してありのままでぶつかることは、ブリジットにとってもこれまで閉じ込めてきた自分を解放するような意味合いもあって、お互い不器用ながら段々と歩み寄っていく、惹かれていく姿は、なんとも初々しかったです。
……ブリジット、やっぱり若干ちょろい傾向があるのは間違いないと思うけれど。
ユーリもズケズケとした物言いをするわりに、ブリジットに対しては遠回しな言動が多くて、こいつ結構日和ってやしないだろうかw ただそういう不器用さが、実に可愛らしくもあるんですよね。
従者のナンパな兄ちゃんがニヤニヤと見守っている気持ちも、まあわからなくはありません。
高価なプレゼントを送ったり、とわりと勇気出して踏み込んでるのに、あんな物言いしてたらわかりませんよねw

まあ可愛らしいカップルです、見守るのに実にニヤニヤできるカップルで、ちょっとここらへん二人に侍るクリフォードとシエンナの従者コンビに共感してしまいます。なんか、この二人にもカップリングの波が押し寄せてきてる感じですけれど、この二人なんか好きなのでこのままちょくちょくスポット当ててほしいなあ。

さて、王子が再び動き出しましたけれど、このあたりユーリはそんじょそこらのひ弱な相方役じゃなく、悪役令息なんて呼ばれるほどの存在強度の持ち主。サイコパスはほんとヤバいだけにここはしっかり、ブリジットを守ってほしいものです。