【エリスの聖杯 4】  常磐くじら/ 夕薙 GAノベル

Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
ルチア・オブライエンのソルディタ共和国訪問に付き添うことになった、コニーとランドルフの2人(+1幽霊)。

最初は面倒そうだったスカーレットだが、訪問先を知ると途端に興味を示し始める。彼女曰く、そこは『コーネリア・ファリスの星冠が眠る地』だと、母アリエノールに聞かされていた場所だと言うのだが――!?

常磐くじら完全書き下ろしで贈る、最新エピソード!

完全書き下ろしの新作だーー!!

いやあ、3巻完結してからこのシリーズって続きあるのかなあ。或いは常磐先生って何か別の新シリーズ立ち上げてるのかなあ、と探してみても、エリスの聖杯の更新はちょうど書籍版が終わったところらへんから音沙汰ないみたいだし、新作もお見かけせず、これはしばらく新しい作品を読むのは難しいかな、とあきらめムードだったのですが、まさかまさかの書き下ろしエリスの聖杯新編である。

やたー。

電子書籍のみなんですねえ。でもそうまでして出してくれた事が嬉しい限り。
さて、本編の方はというと、ある意味コニーとスカーレットの物語としては綺麗に終わってはいるんですよね。スカーレットを死に至らしめた長年に渡って国家を蝕んでいた暁の鶏の陰謀は打破され、スカーレットと彼女に関わった人々を縛り付けていた呪詛が解放されたことで。
ある意味、コンスタンスとスカーレットは目的のために手を組んだ相棒という立場からも解き放たれて、ただの運命共同体にしてただの無二の親友、という関係に落ち着いたとも言える。
だからか、この巻のニコーとスカーレットは一緒に旅行に来た友達同士、といった気楽な様子で本編の時よりも肩肘張らない関係に見えたんですよね。
3巻までで打ち解けて、スカーレットも素の姿でコニーに絡むし、コニーの方も全然スカーレットへの遠慮がなくなったし。
ほんとは、コニーと婚約者のランドルフによる一足早い新婚旅行、のはずだったんですけどね。ランドルフとイチャイチャするよりも、ルチアを交えて女三人姦しく旅行でテンション上がって遊び回っているようにしか見えませんでした。いや、新婚旅行というのも建前でランドルフの出張でもあったんですが。おかげで、ランドルフの旦那存在感が薄い、薄い、と思ってたらいつものツッコミ満載の登場人物紹介の方でもきっちりそんな風にツッコまれてたし!

とはいえ、彼らが訪れたソルディエタ共和国というのは何の縁もゆかりもない土地ではなく、スカーレットの生母であるアリエノールの生まれた土地であり、かのコーネリア・ファリスの原点の地でもあったのである。
かつて幼いスカーレットに、世界を手に入れたければコーネリアの星冠を探しなさい、と言い残したアリエノール。
そんな記憶に導かれて、コニーとともにこの地を訪れたスカーレットに待っていたのは、コーネリアの星冠にまつわる歴史のミステリー。そして現在進行系で起ころうとしている謀略による騒乱だった。
いちやく、決闘裁判での弁論にてバッタバッタと対決相手をなぎ倒して、裁判荒らしの異名を勝ち取るコニー(スカーレット憑依済)が島の状況を引っ掻き回したことで、闇の奥で密かに進行していた陰謀が、盛大な浸水を起こして水面上に浮上して、渦中のど真ん中にいたコニーは案の定盛大に巻き込まれ、二人はルチアたちに助けられつつ陰謀の正体を掴むために、この島に眠るコーネリアの秘密にまつわる歴史をたどることに。
それは、必然的にかつてこの島で生きていた母アリエノールの足跡を追うことに繋がり、アリエノールの母代わりだった女性とも巡り合うことになる。
それは、亡き母のアリエノールの里帰りでもあり、スカーレットにとっての訪れたことのない故郷への帰郷であり、ルーツを辿る物語にもなっていったんですね。

本当なら、それはスカーレットの死によって途切れたはずの、歴史の因果だったのだけれど、コーネリアの時代からあったコニーの先祖との関わりは、死してなおスカーレットをこの世に留めおき、二人の絆はスカーレットに帰ることのできるホームを与えることにも繋がったのだと思うと感慨深い。
不思議と、スカーレットがもう死んでいるという事実を忘れてしまいそうになるんですよね。いや、スカーレット本人も幽霊であると自覚しながらも全然死んでるつもりないだろう、こいつ。
まだまだ自力で運命切り拓いてやる、という気概に溢れすぎてコニーの背中ゲシゲシ蹴っ飛ばしてそうですし。
ただまあ、コニーと一緒の人生を謳歌しているのは間違いなさそう。そして、いつか長い長い時間が流れてコニーと別れることになったとしても、スカーレットには帰って眠る場所が出来たのではないだろうか。まあ当人はそんな先のことなんざなんにも考えるつもりもないだろうけれど。
でも、彼女にとって生も死もその境界なんざもう関係ないのかも知れない。今はただ、コニーと一緒に。それを象徴するのが、仮面舞踏会での死者と生者が交わるひとときでの、コニーとのダンスだったんじゃないだろうか。
……コニーとスカーレットの間がくっつきすぎてて、ランドルフくん間に割って入れるんだろうか。割って入るのは無理だろうなあ。最低限、コニーを挟んでスカーレットの反対側に居座るのがせいぜいか。あんまり仕事にかまけすぎてると、ほんとにいつまで経っても結婚できないですよ?
果たしてブラック職場に殴り込んでくるのはスカーレット憑依済みコンスタンスなのか、コンスタンス本人なのか。

しかし、これって番外編なんだろうか。それとも新シリーズの開幕なんだろうか。本国における鶏さんの陰謀は打破できたものの、暁の鶏という組織そのものは今も蠢動していて、諸国の裏側で根を張っているのが今回の一件でもよく分かったので、決してきっちりカタがついたというわけでもないのですし、幾つか伏線みたいなものもありましたから、シリーズまだまだ続けられそうではあるんだよなあ。
というか、続いてくれた方が嬉しいんですけど!? まだまだ、コニーとスカーレットのコンビは見ていたいですしね。飽きないですよ、この凸凹コンビは。