【勇者になれなかった三馬鹿トリオは、今日も男飯を拵える。】  くろぬか/TAPI岡 Mノベルス

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ステーキ! 唐揚げ! 川魚の塩焼き!
特別な料理は要らない。これは、“男飯"なのだから。

小学校からの幼馴染であるアラサー男の北山、東、西田は、『勇者召喚』で異世界に召喚されるが、鑑定の結果、三人は勇者ではない判明し、城から放り出されてしまう。
慣れないサバイバル生活を余儀なくされる三人だったが……

これが意外と面白い! お金を稼ぐ為、食べる為、そして生きる為に、三馬鹿は今日も狩りをする。

むさ苦しい男三人、異世界でサバイバル生活。
サバイバルというよりもう野生化と言った方が近いんじゃないだろうか。そうでなくても、炭焼職人とかマタギ感がありますよね。生活基盤が森の中、山の中になっていて必要な消耗品や物資がなくなったら街に降りてきて、獲物を売りさばいて代わりに必要物資買い込んでまた山に帰っていく、みたいな。
元々、三人ともただのサラリーマンとかでアウトドアの経験もろくになかったみたいなので、よくぞまあ生き残れたものだとそう思う。城を追い出された際に姫様がこっそりと最低限……というにはかなりのお金と物資を渡してくれたからこそ、何とかなったんだろうけれど。
特にマジックバック。見た目以上に中身が入り、中で時間が停止しているのか保存環境が極めてよいバック、って身の回りのものから食料、売り物など全部持ち歩かないといけない身の上だと、これあるかないかは生死の境目だったんじゃないだろうか。

普通の異世界で放逐されてしまった系、身一つで放り出されてしまった系のお話は、まず街の中でどうやって生活基盤を整えるか、というのが重要になってくるのだけれど、この男連中はとっとと大自然の中へと突撃していき、そのまま馴染んで帰ってこなかったのです。
アウトドアの知識も経験もない中で、手探りで獲物を取られて、食べられるものを確保して、ってこっそりと常人よりもパワーとか体力あったにしても、まあ普通死にますし、なんにもできないですよねえ。いや、多少はアウトドアの経験とか猟師の資格持ってたくらいのあれこれはあったほうがよかったんじゃないだろうか。
獲物の解体とか毛皮を剥ぐとか、【罠ガール】って漫画とか見ていると素人が見様見真似どころじゃなく適当にやって出来るものとは思えんもんなあ。あれ、凄まじい重労働だし毛皮とか引っ剥がしたら終わりじゃなくて、処理とか色々大変なんですねえ。
【罠ガール】あれ、めっちゃ面白い上に色々と勉強になるのでオススメですよ。

でもまあ、素人だからこそ怖がりもせずに魔物の肉とか平気で食べられたというのもあるのかもしれません。変に知識があったりすると、寄生虫とか病気とか怖くて中々躊躇っちゃうだろうし。
槍で肉ぶっ刺して、ぐるぐる回しながら焼けたところからこそぎ落として食べるあたりが、非常に野性味ある食べ方で、勢いあった気がします。
さすがにこれは、サバイバル飯の局地であって男飯とはまた別のジャンルなような気がしますけれど。でも、ある程度余裕できてからは調味料のたぐいを駆使して実にいい意味で雑な調理で、現地調達の食料をガツガツとひたすら喰っていく男三人組なのでした。
こいつら、獲物を捕らえて喰う、というルーチンだけで非常に満足しておられる。喰ってりゃ幸せなのかー。
途中、魔物の肉を喰っても大丈夫なのか、という実証実験のために明らかに特異な男三人組以外の検証も必要ということで、三人組には意図は隠したまま奴隷のネコ娘が彼らに同行することになるのだけれど、とりあえず子供の扱い方がわからないながらも親戚の大人しい小さい女の子をおっかなびっくり大切に可愛がる感じで、右往左往しながらあれこれ沢山食べて大きくなれよー、とやってる親戚のおじさん状態で、ちょっと微笑ましかったのでありました。
でも、魔物肉は瘴気に冒されていて食べると魔人と化してしまう、みたいな伝承があってこの世界では食料として扱われていなかった、という話なんだけれど、よほどひもじい状況となったら捕まえて食べるケースはなくはなかっただろうし、そういう場合の話は残っていないのだろうか。
今の所、三人組と猫娘のミナミちゃん、状態異常は出ておらず魔物肉食べても大丈夫なんじゃね? という話になってきているけれど、本当なんだろうか。なんか、最初の頃と比べるとこの四人、性格ちょっと荒っぽくなってきてるんですよね。男三人、もうちょっとおとなしかったはずが今はなんか野性味が出てきて粗野っぽさが目立つようになってきた気がするし、おとなしかったミナミも主人である三人組相手ならずっと一緒にいるから慣れてきた、というのならともかく、初めて一緒に探索することになったギルド職員のアイリさんに結構ズケズケとした物言いしていて、この娘こんなキャラクターだったかな、と不思議に思った場面あったんですよね。三人組も結構喧嘩っ早くなってる気がするし。これは単に、大自然でずっとサバイバル生活していた結果、野生化して自然由来の荒々しさが備わってきた環境の問題なんでしょうかねえ。

しかし、本人たちが野生化する一方で、調理環境は便利な魔道具とか揃えてむしろ文明化されてってるんですよね。かなり凝った料理も作るようになってきたし、ってそれらの料理ってもう男飯じゃないんじゃないだろうか。男飯って、料理として絶品というものじゃないんだけれど、その雑さと勢いが提供されるシチュエーションと相まって旨く感じる、みたいなジャンルの料理だと認識していたのだけれど、後半行くとただの洗練された料理になってってるような感じがして、男飯という醍醐味はだいぶ薄れちゃったんじゃないだろうか。ってかこれなら、ちゃんとした料理場で料理した方がいいんじゃないだろうか。サバイバル飯、という感じでもだんだんなくなってるし。

あと、この連中、ずっと森の籠もってるけれど、身だしなみは……大丈夫じゃなさそうだなあ。なんかゲームのバイオハザード並に便利なハーブのお陰でニオイ消しがどうの、という話になっているけれど、洗濯とか風呂とか全然してなさそうだし、街に降りてきた時だいぶこう、えらい格好になってそう。これ、女の子のミナミは大丈夫なんだろうか。
それと、三人組、リーダーで料理担当の北山と身体ごっつくて気は優しい東、細身で素早い西田、となってるんだけれど、話の中ではもうだいたい三人組とかひっくるめて扱われていて、実はあんまり区別ついていないんですよね。個別のキャラクターとしてちょっとキャラの立ちが弱いかなあ、と思う所あり。このままもう男三人組、という一括りで押し通してしまってもいいのかもしれないけれど。