何ヶ月だ。結局クール中にクオリティを確保出来ないということで完結できずに延期していた最後の2話がついに公開。
待った、待たされた甲斐がありました。動的な激しいシーンは実のところ前回のモルフォ撃破で終わっていたというべきなのでしょうけれど、86―エイティシックス―という物語の集大成はこの回なんですよね。
行き着いてもうどこにも行けなくなったシンに、レーナ少佐が追いついてくるシーン。
二人の、再会にして初対面のシーン。このために86の物語はあったと言っていいくらい。
周りのみんなが先に先にと死んでいき、死出の道すらともに生き残ったライデンたちすらもシンだけを残して消えていき、先に逝くはずだった自分たちの代わりに、自分たちの足跡をずっと追いかけてくれるはずだった希望……ヴラディレーナ・ミリーゼ少佐もまた結局自分を残して逝ってしまった。シンはそう思っていたんですよね。
シンが明確にメンタルに不調を、ある意味自分の命に投げやりになりだしたのって、わかりにくいんですけれど自分たちがかつて生きていた、レーナ少佐が残っていたサンマグノリア共和国がレギオンの大攻勢によって滅亡したというニュースを聞いてからだったんですよね。少佐の生存が絶望的になった、となった時から、シンにとっての生きる意味が失われてから、ずっと彼は絶望の淵に立たされ続けていたのです。
その絶望が、もうどうしようもなくシンの心も身体も冒しきって動けなくなったそのときに、彼女が走ってくる。
アニメだと、モルフォを撃破したあとの自爆に巻き込まれて大破沈黙したシンが乗ったレギンレイヴ、座り込んで動かなくなった首の無い人に見えるんですよね。さながら、シンのパーソナルマークのように。あれは、凄いアニメならではの演出だった。
そんな首なし騎士の前に佇む一筋の赤く染めた髪をなびかせる白い少女。
お互いの声しか知らない者同士。レーナの声は最初、機械の不調によってシンには届かず、シンの声もまた破損した機外スピーカーのせいでノイズが混じってちゃんと聞こえない。
だから、話し始めた時はお互いに相手が誰か気づかない。でも、途中でレーナが配下のキュクロプスと同調したお陰で、レーナの声がシンに届くのである。届いた瞬間に気づくのって、もうシンってば、シンってば。そんでもって思わず少佐って呟いたあとに自分の側からの同調切っちゃうの、この男の子の繊細というかナイーブな面がもろに出ちゃって、もうシンってばシンってば。
でも、そこからあれほどまでに深い淀みのような絶望が、拭い払われていくのである。レーナの言葉は、シンのこれまでの人生を、生き様をぜんぶ肯定してくれて、許してくれて、讃えてくれて。シンのせいで死ぬのではなく、シンのおかげで生き抜くことが出来た。そして今尚、ちゃんと自分を追いかけてきてくれていたと知ることが出来た。
失われていた生きるための目的が、生きたいと願う意思が、彼のなかに明確に芽生えていくのである。
こんなにも明瞭に、人が絶望から救われるシーンはなかなかないと思う。もうここはなんか、ボロボロに泣けてしまって泣けてしまって。
これは、救いの物語だったんだなあ。

もう一話あるんですよね。ほんと、なんでこのポンコツ少佐は気づかないかなあw そんな二人の、それはもう一度の再会であり、もう一度の初対面。正座して見守りたい。


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