【望まぬ不死の冒険者 3】 丘野優/ じゃいあん オーバーラップノベルス

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不死者、奇妙な依頼を受ける
最弱不死者(スケルトン)からめざす最強冒険者、第3弾!

タラスクの沼で遭遇した人物から、指名依頼を受けたレント。
なんでもその人物は、古い家系で、ギルドでも気を遣わねばならない「ラトゥール家」だという。
ラトゥール家を訪ねたレントだったが、その屋敷には魔道具の仕掛けがあり、庭園から屋敷までが迷路となっていた。
試されている――そう感じたレント。
果たして無事に屋敷にたどり着き、依頼を受けることができるのか……!?


飛行艇のラジコン、ラジコンでいいんですよね、これ。機体を通じて視界も得られるみたいだから、ドローン的な使い方も出来るみたいだけれど。ともあれ、このラジコンをプレゼントでくれるという景品の中に見つけて、欲しくてたまらなくなるレントが、なんかもう子供心丸出しでなんか可愛かった。
自分にとって必要なものは吸血鬼の血液の方、というのを頭では理解しているものの、あれほしい、めっちゃ欲しい、とウズウズなってしまっている姿がもうなんかねえ。
それで貰えたら貰えたでめっちゃ喜んでいる姿が微笑ましくて。いや、君ってそんな可愛い系なキャラでしたっけ。
夢中になって遊んでいるし。玩具じゃないんだぞ、それ。いや、玩具にもなるけれど。再現不可能じゃないかという貴重な魔道具なのに、少年の心が抑えられないレントくん。
でも、独り占めせずに孤児院では子供らと一緒に、ラジコン飛ばさせてあげてるあたり、ほんとイイ人なんだよなあ。

孤児院からの依頼を達成した縁もあって、孤児院の子供達の中のお姉さん役であったアリゼが将来冒険者になりたいという希望から、レントに冒険者としての心得や知恵、技術などを学ぶことに。いわば、弟子ですな。ということで密かに初めての弟子にウキウキしていたら、いつの間にかロレーヌに魔術師の弟子としてアリゼを奪われそうになってて、あれ?あれ?俺の弟子になるんじゃなかったの? 冒険者の弟子になるんだよね? と内心焦りまくりワタワタしているレントが……だから、可愛いんですけど!
なんですか、今回!? レントの可愛げという魅力強調回なんですか? 愛嬌◎とかそういうスキルも付いちゃったんですか? 元々真面目で夢に向かって一心不乱なレントですけれど、意外と遊び心があるところはこれまでも見せてたんですけれど、こういう愛嬌というか可愛らしい側面を見せられてしまうと、なんかたまりませんなあ。こういう真面目系主人公って面白味もなくてキャラとしての魅力が乏しくなりがちなんだけれど、彼が街のみんなからも慕われているのって、その貢献度や誠実さだけではなくて、実は愛され系という側面もあったのやもしらん。

さて、街の裏の支配者みたいな一族ともツテが出来、その縁もあって吸血鬼の血液という進化用アイテムをゲットして(ついでにラジコンもゲット)、屍鬼から下級吸血鬼へと種族進化することが出来たレント。あれ?まだ下級なの? と意外に思ってしまったけれど、本来なら屍鬼だって喋る事も知性もないただのアンデットモンスターだったのが、普通の人間としての思考を維持できていたんだから、下級吸血鬼も似たようなものなのか。本来の下級吸血鬼ってもっと下等なモンスターなのかもしれない。
しかし、吸血鬼になったのだから身体の方は人間並に戻れたとしても、日中は出歩くことはできなくなるんじゃ、と危惧したのだけれど別に関係はなさそう。普通に外出歩いてますしね。

普通の人間にはない力を手に入れて、ちょっとは増長とは言わなくても気が大きくなったりしても不思議ではないのだけれど、レイトという人はそのあたり謙虚というか。タラスクの毒の沼地で普通の人がまともに動けないような環境でも自由に動けることを、利点とは思ってもそれを他者より優れた力だとは思わずに客観的に謙虚に捉えているあたり、彼の慎重さとかこれまで冒険者として積み上げてきた実績がどれだけ地に足がついていたものだったか、というのが何となく伝わってくるんですよね。
こういう土台があるからこそ、今飛躍的に力が伸びているにもかかわらず、その力に振り回されていないんだろうな。

それに、彼がむやみに力を振るおうと思わない環境であるというのも大きいんでしょうね。なんだかんだ、周りの人間達が良い人なんだわ。レントがこれまで街の秩序を構築してきて、風土みたいなものが温和なものとして固着してきているから、住人にも穏やかな人が増えているというのもあるのかもしれないけれど。
孤児院の院長だって、今回レントが薬の素材を採取してきただけじゃ助からなかったわけですからね。その前に、院長を無料で診察し薬についてもただ同然で調合しようという治癒術志や薬剤師の人達がいなければ、何も始まらなかったわけですから。
ミスリル級の冒険者になりたい、という譲れぬ夢のためにひた走るわりに、ついつい困っている人を見ると手助けしたり、未熟な若者を見れば世話してあげたり、と寄り道ばかりしてるレントですけれど、その善意が報われる環境があり、彼の善意にちゃんと応えてくれる人達がいる、というのは気持ちがよいものです。
こういう人達に囲まれて、未来になりたいものを思い描くことの出来たアリゼは、良い師匠たちにも恵まれて、きっと良い冒険者、良い魔術師になってまた多くの人を助けていくんだろうな、と善意のスパイラルが出来上がっていく様子が見られた気分で、なんとも嬉しいものでした。
うん、そういう意味でもすっきり気持ちが晴れるよい物語ですねえ。