【魔導書学園の禁書少女 少年、共に禁忌を紡ごうか】 綾里 けいし/みきさい 角川スニーカー文庫

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禁書の主に魅入られし、最底辺魔術師の少年。禁書を巡る学園ファンタジー!
この世界の魔術師は皆、己の中に“本”と“本棚”を持ち、そこに記された≪物語≫を魔術に変えて行使する。
そんな彼らの通う学園、通称『無限図書館』に歴代最低得点で入学した少年レン。
彼の持つ本に何も書かれていない――世界で唯一“白紙”の本を持つ、ロクな魔術が使えない落ちこぼれだった。
――にも拘わらず、彼は歴代最高得点の生徒をある方法で圧倒する。
「やるじゃないか、少年! 相手の物語を改変し、使用するとはね」
その戦いを見ていたアンネと名乗る不思議な少女に目を付けられることになり、
「君、私の伴侶になりたまえよ」
しかし、彼女と行動を共にすることとなったレンは知る。
彼女の持つ本が、世界を破滅に導く“禁書”であることを――。
異端の二人が世界を変える、禁書を巡る学園ファンタジー!


禁書少女って自分で名乗るんだ! 自分で自分の事を少女と名乗って憚らない女性は、色んな意味で強いと思うぞ。
いやそうか、メンタル強いからこそ態度も偉そうなのか。偉そうというとちょっと違うかもしれないけれど。別に自分の事を偉いと思ってたり、他人を下に見ているというわけじゃなく、むしろ自分の事は人でなしと卑下してるくらいですしね。他人への気遣いも欠かさないし、レンへの接し方は慈愛と優しさに満ちている。でも、物腰や言動が余裕めいていて不遜で尊大で主人公のことを少年と呼びながら翻弄してくる様は、なんかこう偉そうという他ないんですよねえ。
てか、綾里さんの作品のヒロインって、なんでか大概偉そうなんですけどね!
その分、先の拷問姫のエリザベートみたいにデレると凄まじく凶悪なのですが。

単に魔術という技術を扱う世界ではなく、己の中に物語を持ち、それを本として引き出し魔術として使う世界観。本という体裁を保っているために、本として魔術を引き継がせたり場合によっては奪う事もできる、という設定は面白いなあ。
そして学園モノではあるけれど、それよりも何よりも魔術師という元来倫理を踏み外した存在が集う場所であるために、殺人上等というのは相当に怖い場所だぞ。
おかげで、実力を持つ魔術師ほど自分の力を隠している、ってそれって試験によって判別された学園でのクラス分けって全然意味ないじゃん! そんな中で歴代最高得点で入学してもてはやされているアマリリサって……そうかー、ガチのポンコツ枠だったのかー。むしろ、最下位クラスの小鳩の面々こそが誰も彼もが怪しく見えてきてしまう。
話の本筋が、主人公のレンのすべてを奪った禁書の持ち主を探せ、ですもんね。その上で、その禁書の持ち主はどうやらレンの直ぐ側に居る、という話になってきて、途端にワイワイと落ちこぼれ同士だからこそ仲の良い小鳩クラスの面々が、癖があり能力も落ちこぼれだけれどどこか尖っているからこそ、誰も彼もが怪しく見えてくる。ちょいとしたミステリ要素ですなあ。
そんな中で何もかもが開けっ広げすぎるアマリリサは、逆に安心できてなんか可愛くなってきましたぞ。
怪しいと言えば一番怪しいのが、肝心の禁書を山と有しているアンネであり、なぜ禁書庫の主になったかなど来歴もまるで明かすことなく謎めいた存在で普通に考えたらこいつが犯人だろう、と思いたくもなるのだけれど、尊大な物腰と裏腹にむしろ誠実で真摯であって、この狂った魔術師の世界の中では倫理的ですらある。むしろ、禁書の主だからこそ余計に正しくあろうとしているのか。
本来なら、どんな相手でもその禁書を用いて一蹴できる力を持ってるんですよね。今回の犯人だって、ただ勝つだけなら簡単だった。でも、禁書の力が強過ぎるが故に、その力を震えば相手を確殺してしまう。殺人が当たり前のように許容されているこの学園の中で、彼女は決して殺そうとしない。自分の中の禁書を嫌悪し、その使用に溺れることがない。そして何より、その力で絶対に殺さないと誓っている。そんな彼女を信じずして、一体何を信じるのか、主人公なら。
でも、主人公のレンの自分自身すらも剥奪された状態って、何気に所有していた禁書を引っ剥がされた症状にも似ている気がするんだよなあ。果たして、レンとアンネはこの学園で出会ったのが初対面だったのか。レンの記憶がない、というのは何気に大きな迷彩になってるよなあ。
しかし、普通なら主人公とメインヒロインがその能力を、力を重ね合わせて新たな能力を生み出す、となったら大概協力攻撃とか融合攻撃みたいな感じに、よりパワーアップするものだろうに、彼らの場合はその能力を重ねたからこそ、非殺傷レベルまで弱体化する、という逆転現象になっているのは発想としてなるほどと思わせられるものがあって、面白かったなあ。
それに、弱体化はしてもだからこそアンネの自由度がこれ、爆発的に増えることになるんですよね。一冊じゃない、無数の禁書を有していても、どれも強力すぎてマトモに使えないというのがまんま多種多様の手管を有することになるわけですから。当初はシンプルにレンの対人無双能力を見込んだボディガードだったはずが、なかなかおもしろい伴侶同士の共同作業になりそうだ。