【16年間魔法が使えず落ちこぼれだった俺が、科学者だった前世を思い出して異世界無双 2】  ねぶくろ/花ヶ田 ファミ通文庫

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ロニーを狙う敵は、自分自身……!?

ダミアンが屋敷を発ってから数日、ロニーはいままでとは打って変わって自堕落な日々を過ごしていた。魔法を使えるようになったのはいいものの、このままでは力を制御できず誰かを傷つけてしまうかもしれない。そんな恐怖から研究に身が入らなくなっていたのだ。そこでロニーは相談と報告を兼ねてセイリュウに会いに行くことに。しかしその道中、突如現れた暗殺者たちに襲撃されてしまう! 重傷を負いながらも命からがら逃げ出し屋敷へと戻るロニー。だがそこで彼を待っていたのは、ニヤニヤと不気味に笑う"自分と同じ顔の男"で――!?


これはキツいなあ。前巻での父親の様子から、ロニーの謀殺を目論んでいるというのは予想できたのですけれど。
どうもロニーが魔法の才能を開花させる前に依頼を発してしまった、という風情だったので、そんなのこっちの都合が変わったのだから、キャンセル料でも何でも払って中止すればいいのに、とも思ってたんですけどね。なにか、止められない理由でもあるんだろうとは考えていたんですけれど。せいぜい、依頼した暗殺者かギルドがヤバいところで、途中で中止は出来ないとかかなあ、と思っていたら、そうかー、背後に父親よりも上位の意思決定者が居たのか。そりゃ、こっちの都合で止められないわなあ。
それでも、父親が自分の意志で息子であるロニーを殺害し、代わりに弟のヨシュアを嫡男としようとしたのは事実。それも、ただ殺し屋に狙わせて殺す、というだけではなくて、失敗した時の予防を兼ねてロニーの社会的立場も失墜させた上で処分しようとしていた、というのは殺意と悪意が高すぎて、泣けてきちゃうんですよね。
それはもう憎い仇にするような仕打ちじゃないですか。幾ら無能力だったとはいえ、荒れもせず大人しく過ごしてきた息子に、家族にするような仕打ちじゃないですよ。
これはロニーもショック受けて当然だわ。最初、状況証拠が揃っているにも関わらず、思考がどうしても犯人が誰かを無視するように見ないようにして足掻く様子が、何とも哀れで。普段、明晰な頭脳の持ち主であり頭の回転も早く、鋭く結論へと至る知性の持ち主であるからこそ、この時の頭の回転の鈍さはどうしても信じたくないというロニーの懇願のあらわれでもあるようで、可哀想だったんですよね。

それに、どんなにすごい魔法が使えるようになったとしても、殺し合いなんて経験したことのない貴族のお坊ちゃんなんですから、突然刺されてパニックになってしまうのもわかるんですよね。タイトルだと無双なんて書いてあるけれど、いうほど無双できる余地はないんだよなあ。どれほど強力な武器を持っていたとしても、今のところ彼はそれを振り回すことしか出来ないのでしょうし。

にしても、こんな形で領地を出ることになるとは思いもよりませんでした。両親との仲こそ微妙だったものの、使用人には仲の良い人もいましたし、何よりヨシュアは誰よりも兄であるロニーを慕ってきてくれる可愛い弟だったわけですしね。ロニー自身、家はヨシュアに継いでもらいたいと考えていただけに、ダミアンの招きもあったわけですから穏便な形で家を出んだろうな、と思っていたのに。
受けた仕打ちを考えるとロニー、人格歪みそうだけれど、結果として見るとなんでか残されたヨシュアの方がなんか歪んでいきそうで怖いなあ。
仕方なかったとはいえ、結局ロニーはヨシュアに何も告げずに家を出てしまったわけですから。いや、どう考えても伝言も残せるような状況ではなかったのですが。そう考えると、何が起こったか知らないとはいえヨシュアの兄への期待度が高すぎたとも言えるのか。
まあ伝言も何も残せる状況ではなく、メンタルも追い詰められていて余裕がなかった、という理由があったとはいえ、自分がこのまま去るのがヨシュアのためだと独り合点で言い訳して、ヨシュアに対してのケアを何も残さず考えずに出奔してきたのも確かなので、もうちょっと弟がまだ小さい子供だというのを考えてあげてほしくはあったなあ。
でも、自分も今までの人生投げ捨てて、父親に殺されかかり、家族と絶縁して家を出るなんて状況で、そんな落ち着いて物事考えられない、というのもまあ理解できるだけに、責めるに責められんですわ。
ただ、ダミアンの所に転がり込んだあと、存分に研究に打ち込んで解き放たれた自由を謳歌している様子を見ると、うむぅ、と思ってしまう所もあるんですよね。まあ、追手があるか気を使わねばならない部分はあったとはいえ。現状では、ダミアンに代わって家庭教師したりもしてるわけですしねえ。

しかし、今回の暗殺者たちの使っていた魔法を見ると、これまでロニー達が常識として捉えていた魔法の概念は、思いの外自由度高いのかもしれない。今までは水魔法の延長線上として、ロニーの記憶にある基本的な物理に基づいた研究を行っていたけれど、暗殺者たちの使っていた魔法を見たことで、研究も発想の飛躍が果たせそうなんですよね。この世界の魔法の仕組みについて、はたしてどんな風に解き明かしていくのか。面白いアプローチを期待したいところです。