【時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん 4】  燦々SUN/ももこ 角川スニーカー文庫

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ロシアンJKとの青春ラブコメ第4弾、ちょっぴり過激な夏休み編!

終業式の後、晴れて名前で呼び合う間柄となった政近とアーリャさん。
気恥ずかしさから互いに煮え切らない態度で悶々とした時間を過ごす中、遂に待ちに待った統也主催による生徒会合宿がはじまった!
豪華絢爛な別荘宅とプライベートビーチ、夏祭りに花火と輝ける青春を謳歌する生徒会メンバー達。
リゾート地でのロマンチックなシチュエーションと非日常感に高揚したアーリャさんは挑発的な笑みを浮かべていて――。
「それで? 政近君は、どこにキスしてくれるのかしら?」
悶絶しそうになるほど刺激的な駆け引きを仕掛けてきて!?
ロシアンJKとの青春ラブコメ、ちょっぴり過激な夏休み編!


政近が子供の頃にぶっ壊れるまでのお話がダイジェスト的に冒頭に描かれていましたけれど、同時に有希の幼少の頃の様子も描かれてるんですよね。
小児喘息を患い、身体を動かすこともままならない状態で、尚且つ感情を高ぶらせると発作が起こる事から、喜怒哀楽も極力抑えて生きていかないといけない。学校にも通えず、内気で繊細で、ずっと兄に守って貰っていて。
その兄が、自分がやらなくてはと背負いすぎて、そんな一心不乱さを母から疎まれて、ついには壊れてしまった、と。
有希としては、少なからず自分の弱さが余計に兄に負担を負わせてしまった、と思わずにはいられない境遇でしょう、これは。
理不尽で醜悪で独り善がりな祖父の期待を兄に代わって引き受けて、今立派に後継を勤め上げようとしているの、有希自身のバイタリティに根ざしているのかと思っていたけれど、これこうしてみると兄に余計な負担をもう負わせないために、自分が頑張って引き受けている、という側面も強いんじゃなかろうか。
あの妹モードの明るさですら、果たしてどこまで本当なのか、ちょっと疑わしく思えてくる。お嬢様モードは間違いなく外面だと思うし、兄や綾乃に見せる素顔は真実素顔で気のおけない関係も嘘ではないと思うけれど、それでも幼かった頃と全然違う生意気でパワフルで天真爛漫で兄を振り回すくらい元気で、という姿に兄にもう自分は何も心配いらない大丈夫だという安心を根付かせたい、仮面としての振る舞いが一切ないとは言えないんじゃないだろうか、とこの兄妹の歴史を見せられてしまうとどうしても思ってしまう。
有希の抱えている闇は、もしかしたら相当に深いんじゃないだろうか。
これ、政近が家を出されたのをきっかけにして、もし兄妹が疎遠になったりなんかしてたら、かなりえらいことになってたんじゃ、と想像してしまう。
プライベートでは兄にべったり、と言って過言ではないほどの仲の良さも、お互いに抱いているだろう罪悪感とか自己嫌悪とかそれにまさる深い愛情を考えると、ちょっとした依存に近い関係なのかもしれない。アーニャと関わるようになるまで、結局政近の倦怠は改善されなかったわけですしね。
中学で生徒会長やったときも結果として政近をまたネガティブな方へと向かわせてしまったわけですし。

妹としては、兄とアーニャの進展していく関係について何か思う所はあるんだろうか。今のところ応援しているような、立ちはだかる壁になろうとしているような、曖昧なスタンスしか伝わってこないんですよね。本人も明確なスタンスは決めていないのかもしれないけれど、有希がもし爆弾を抱えているとなったら、兄を獲られてしまうというのは起爆スイッチになりかねない所があって微妙に怖いんだよなあ。
綾乃の存在も決して無視できないし。意思表示をしないという件に関しては有希以上の幼なじみな彼女だけれど、もし彼女が何らかの意思表示を示した場合、有希は絶対的に綾乃の味方になるでしょうしね。

とはいえ、今のところ政近の自己否定に関しては改善が見られないので、アーニャとの関係の進展もある意味行き詰まりだしている所があるのですが。今回の合宿含めて仲を進めるイベントは順調に積み重なっているはずなのだけれど、政近の心境が改善しない限りはどれほど好意が膨れ上がっていっても、自分なんかがと卑下や否定が気持ちを押し留めて前に進ませないんですよね。
アーニャのロシア語での独白は、もうあれ露出趣味だろうというくらい政近への好意があからさまで、そんな彼女の独白を聞いておきながら、それでテンションあがりまくりながら、それでもなおアーニャが自分なんかを、と思ってしまう時点でもうどうにもならないんですよね。
それこそ、アーニャがコソコソと好意を吐き出して満足するのをやめて、彼女の方から本音で突撃してくるくらいしないと。或いは、何らかの形で政近の方が自信を取り戻すか。自分をまっとうな人間だと思えるようになるか。
まあそのきっかけを、他人に頼るのはいささかどうかとも思えるのだけれど。下手をすると、当て馬紛いになっちゃいますしね。
さて、政近の幼い頃の想い出の人との再会が、それらの何らかのきっかけになるのでしょうか。
まさかそれが、マリヤさんの方だとはなかなか予想外でしたが。
どれほど打ち解けて気のおけない関係だろうと、姉妹兄妹の間には複雑で微妙で繊細な綱引きは存在するもの。有希と政近の間にだって色々ある。なら、アーニャとマリヤの間にだって、そういう繊細な距離感というのはあって然るべきだろう。
いずれにしても、アーニャはもっと危機感というものを持っていい頃なんじゃないだろうか。相手が理解できないと思い込んでる言葉で、露出趣味を満たして悦に浸っている場合じゃないんじゃないですか?w